最終話 エピローグ
──母さん、お元気ですか。あの不思議な一日からもうすぐ10年になります。あやめは先日高校生になりました。そして俺は……。
夕暮れ時ってのはどうしてこうも眠くなるんだろうか。ウトウトしてる俺にデコピンが繰り出される。
「佐藤先生、寝てましたよね」
「寝てな「寝てましたよね」
「……なぁ副部長、最近の女子高生ってのはこんなに狂暴なのか?」
「こんなの序の口じゃないですか? それより次回のコンテストの締め切りっていつでしたっけ」
「えーっと、六月第二週だったかな……って申し込み今週までじゃん!」
「ちょっとー弥生センセー顧問なんだからしっかりしてよー」
デコピンを繰り出す狂暴部長は仁王立ちで俺を睨み、副部長ともう一人の部員が不審の目で俺を見る。
「だ、大丈夫だから。どうどう……。ところでいま体験入部期間だけど、我が美術部は呼び込みとかしなくていいのか? 全然新入生来てないぞ」
「うちは来るものはおらず去るものは殺す部活ですので」
部長がくいっと眼鏡を上げる。殺人沙汰は困るなぁ……。
と、そのとき、コンコンッという小気味いいノックの音の後、ガラガラとドアが開く。
「失礼します! 体験入部に来ました!」
その生徒は俺の方を見ると恥ずかしそうにはにかむ。先輩たちは緊張しながらも暖かな笑顔で迎える。生徒は、少し上ずった声で、でもハキハキと自己紹介をした。
「一年六組の岬亜弥芽って言います。よろしくお願いします!」
──竜宮少女 完──




