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追いすがる悲嘆

 新たなる暗黒領域の出現――。


 しかも、今回出現したのはまたも二つ・・の暗黒領域であった。


 なろうユーザー達が固唾を呑んで見守る中、それらが徐々に全容を現す――!!









 第三領域:混沌無法地帯・『イビルオオツ』


 領域支配者:ストーカー殺人鬼・束縛因(そくばくいん) 飛鳥(あすか)


 廃滅属性:追跡



 男性を狙った未解決凶悪事件が横行したことによって、治安維持機構の信頼が完全に失墜し無法地帯と化した世界。


 この領域の支配者は、目にもとまらぬ暗殺術を独学で身に着けたストーカー殺人鬼の少女・束縛因(そくばくいん) 飛鳥(あすか)


 彼女こそが、前述した事件の大半を引き起こした真犯人である。


 この世界の警察組織や探偵家業の者達は、彼女の完全犯罪ともいえる犯行によって権威や信頼を失墜しており、最早全員失職同然となっている。


 そのため彼らは、連続ストーカー殺人を引き起こした飛鳥の尖兵として彼女に仕えるのと引き換えに、飛鳥が引き起こした事件の証拠や手がかりを褒美として受け取る事が出来る契約を結んでおり、飛鳥から押収した証拠をもとに彼女を検挙しようと日々躍起になって奔走している。


 ……しかし、飛鳥から物的証拠を賜るという事は、『それだけ優秀かつ飛鳥に気に入られた』という意味であり、彼女から褒美を受け取れたとしても、その直後に彼女の寵愛の対象……もとい餌食となって人知れず歴史の闇に消される事となる。


『次に私を捕まえようとしてくれるのは……だぁれ?』





 第四領域:悲嘆自縛荒野・『セプテムミノス』


 領域支配者:嘆きのメドゥーサ・"テラス"


 廃滅属性:悲哀


 生命の躍動が完全に消失したとしか思えない荒野と、そこを埋め尽くすかのようにギッシリと石像が立ち並ぶ景色が広がる不気味な世界。


 この領域の支配者は、蛇で構成された髪の毛を伸ばした生首の怪物、嘆きのメドゥーサ・"テラス"である。


 テラスは自身に見合った首飾りを探しているのだが、見つめたモノは鏡であろうと宝石であろうと、反射されることなく”魔眼”によって石化されるため、欲するモノが手に入らない事を嘆きながら、一人荒野を彷徨っている。


 テラスはその寂しさから、自身の髪から零れ落ちた蛇たちを石化した人間達の中に入れて操作させて仮初のコミュニケーションを営んでおり、有事の際にはこの石像達が尖兵として彼女を害そうとする者を迎撃する。


 この暗黒領域はテラスと蛇以外の生き物は皆無といっても良い停止した世界だが、それだけに、他の暗黒領域と違い領土拡大のために別の世界に侵攻したりすることはないため、十大暗黒領域の中において、関わらなければ比較的無害とされている。


『私の素敵な首飾り……どこを探せば、見つかるの……?』









「クッ……何だと?まさか、『セプテムミノス』のメドゥーサまでこの地に出現するだなんて……!!」


 この世界に顕現を果たした暗黒領域を前に、メガネコブトリが驚愕と苦悶が入り混じった表情を浮かべる。


 それも無理からぬことであり、第四領域:『セプテムミノス』は自身の領域に踏み込まれることがなければ、比較的無害とされていた世界だからだ。


 だが、現在の『セプテムミノス』はこれまで出現した世界の中でも、もっとも見る者を不安にさせる不穏な空気に満ちているのは、誰の目から見ても明らかであった。


 案の定、自身の固有領域の中心に座する巨大な生首だけの姿に蛇で出来た髪を持つメドゥーサと呼ばれる怪物:テラスが、自身の保有する因子に相応しい悲嘆の表情を浮かべながら、感情のままに叫びを上げる――!!





『Ahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh――!!』





「……ッ!!」


 かなり離れているにも関わらず、こちらまで震わせるような魔力が秘められたテラスの悲嘆の声を浴び、なろうユーザー達は身動きも取れぬままその場でうずくまることになった。


 攻撃でも何でもない、単なる意思表示だけでこれだけの威力。


 だが、まだこれだけで済んでよかったといえるかもしれない。


 テラスが真に恐ろしいのは、魔王:古城ろっくの因子を内部に保有することによって極限レベルにまで強大化された”魔眼”の威力である――!!


 テラスの”魔眼”にはメドゥーサという怪物の伝承通りに石化する能力があるのだが、彼女の場合は鏡などを用いてもその視線を反射する事が出来ずに、見つめられただけで石化してしまうというまさに禁忌としか言えない領域にまで到達していた。


 そういう意味ではあまり好ましくない事ではあるが、彼女が悲嘆の声を漏らしながらも、自分達が暮らすこの現実世界の光景に目を向けていないのは、まだ救いがあると言えた。


 だが、彼女の狂乱はただの悲鳴だけでは済まなかった。


 テラスの心を乱す異物を取り除かんと、彼女から分かたれた蛇達が彼女の周囲に転がっている石像の中に入り込み、それらを操作しながら、こちらの世界へと進行を開始する――!!









 第三領域:『イビルオオツ』の支配者である少女、束縛因(そくばくいん) 飛鳥(あすか)


 連続ストーカー殺人鬼である彼女は、混乱に包まれている『セプテムミノス』のテラスや石像達をつまらなさそうに一瞥しただけだったが、すぐにメガネコブトリ達なろうユーザーが暮らす現実世界の方に目を向けると、爛々と瞳を輝かせながら悦に入った笑みを浮かべる。


「あぁ、たまらないですわ……!!あちらの世界には、一体どのような素敵な殿方がいるのでしょう!……フフフッ」


 そんな彼女を侮蔑した表情で周囲の男達が睨みつける。


 彼らは飛鳥が引き起こす凶悪な殺人事件を解決する事が出来なかったせいで、威信や権威を奈落の底まで叩き落とされたこの『イビルオオツ』という世界における警察官や探偵をしていた者達であった。


 彼らは飛鳥の私兵として仕える見返りとして、彼女が引き起こした凄惨な凶悪事件の証拠や手がかりを恩賞として貰う事が出来る、という契約を結んでおり、飛鳥から入手した証拠をもとに彼女を検挙したり過去の迷宮入り事件を解決することによって、名声を得ようと画策していた。


 彼らは自身の雇い主である飛鳥の指示を待たずに、手柄を上げようと”捜査”という名目で、地球侵略へと繰り出していく――!!





「『イビルオオツ』の警察・探偵連合軍、『セプテムミノス』から石像部隊!……ともに、ほぼ同時にこちらになだれ込んでくるモノと思われます――!!」


 スコッパー読み専オペレーターが緊迫した声で、現状をなろうユーザー達へと知らせる――!


 先程までのマフィアや姉虎達とは比べ物にならないくらいの、まさに”軍勢”がこの地に到達すれば、自分達は為す術もなく、ただひたすらに惨たらしく蹂躙されるのみ……。


 そんな絶望的な状況下が場を覆う中、颯爽と名乗りを上げる者達がいた。


「ここは、僕に任せておくれよー」


「探偵、と聞いちゃ黙っていられないね!」


 それは大柄ながらも、朴訥とした表情をした30代半ばの男性と、偵察任務をこなしたばかりの推理系男装少女だった。


 自ら特攻を志願するかの如き無謀な名乗りであったはずだが、二人の表情には些かの曇りも感じられず、むしろ自信にさえ満ちていた。


 現に彼らの顔を見た瞬間、他のメンバー達は相変わらず絶望に支配された表情をしていたが、リーダーであるメガネコブトリだけは勝算あり、と判断したらしく、彼らの出撃を許可した。


「頼んだぞ、二人とも!」


「あぁ、任せておくれよ!ボクにかかれば、こんな事件なんて瞬時に解決さ☆」


「僕はおむすびが好きなんだなー」


 他のなろうユーザーはこれから来る襲撃を前に恐怖し、志願した者達を心配、あるいは不審げに見送るだけだったが、二人は颯爽と戦場へと駆けだしていく――!!

『本作は「すげどう杯企画」参加作品です。

企画の概要については下記URLをご覧ください。

(https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1299352/blogkey/2255003/(あっちいけ活動報告))』


※本作の執筆にあたって、『古城ろっく』さんの名義を使用させて頂く許可を、古城ろっくさん本人から頂きました。


慎んで、深く御礼申し上げます。

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