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永遠に語り継がれるなろう作品達の物語

 現在、山賊的なろうユーザー集団::"Bandit(バンデッド Rebellionリベリオン"は、十大暗黒領域の残党達に襲撃を受けていた。


 なろうユーザー達の窮地に現れた”転倒世界”勢力によって、その大部分は撃破されたモノの、依然として膨大な数の十大暗黒領域の者達が残っている。


 これまでは能力を失ったとはいえ、知識や技術を駆使し何とか生き残ってきたなろうユーザー達だったが、このままいけば為す術もなく廃滅の尖兵達に蹂躙されるだけ……そのはずであった。





『ギ……ギシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!』





 巨大な炎竜が絶叫……いや、それを超えた断末魔の声を上げる。


 刹那、竜の体躯が見事なまでに寸断されていた。


「グ、グオォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」


 自身の眼前で引き起こされた光景に動揺しつつも、アークデーモンが矛を持ってその相手に挑みかかる。


「――ハァッ!!」


 だが、それすらも一人の青年が流麗に振るった双剣の軌跡によって、容易く斬り伏せられる結果となっていた。


 易々と”地獄の双璧”と称される最強の世界から来た侵略者達を撃退する凄腕の双剣使いの青年。


 そして、それは大人気高校生なろう作家の”ナイト”ではなかった。


 それどころか、彼はその双剣使いが戦う姿を背後から見ながら、ひたすらに絶句していた。


「……ッ!!」


 ナイトの前で獅子奮迅の働きぶりを見せていたのは、彼が”小説家になろう”のサイト内に投降していた自作品の主人公である青年:”としあき”であった。


 としあきは流麗な剣技で軌跡を描きながら、次々と暗黒領域の者達を斬り伏せていく――。


 ナイトがなろうユーザーとして彼の能力を使用していたときなどとは比較にならないほど、としあきの剣技は卓越した動きであった。


 これほどの絶技を表現出来ない自身の筆力のなさを、ナイトは不甲斐なく思う。


 だが、それ以上にナイトの胸に去来したのは別の想いであった。





(そうだ……俺の”としあき”は、こんなにも強かったんだ――!!)





 例え、自分に実力がなかったとしても、作品を生み出そうとしたときの想いは紛れもない本物だった。


 そう応えるかのように眼前のとしあきは、なろうユーザー達に迫ろうとした敵を次々と薙ぎ払っていく――!!


「……としあき!そのまま、キメてくれッ!!」


 ナイトの呼び声に、としあきが余裕の笑みを浮かべながら応える。


「言われるまでもない!!作者アンタこそこんだけ特上のネタがあるんだから、俺の武勇伝をバッチリ後世に書き記してくれよな!」


 そう言いながら、としあきが戦場を駆け抜けていく――。





 見れば、としあきだけでなく至るところでなろうユーザーのスマホから光が上に向かって立ち昇っており、そこから次々とキメ顔をした男子高校生や冴えないオッサン、聖女や女エルフなどが姿を現していた。


 この場に顕現を果たしたのは、なろうユーザー達によって執筆されてきた作品の登場人物達であった。


 彼ら彼女らが活躍する作品は、『ワーキングホリデー(第八領域)』の支配者であるコスモ・ミュールによって不当にも削除されたが、”転倒世界”の者達の出現によってコスモの完全なる支配に綻びが生じ、そこからコスモの支配を崩す逆襲劇を開始したのだ。


 コスモの支配を脱したなろう作品の登場人物達は、自身の創造主ともいえる作者の危機に駆けつけるかのように、”暗黒領域”や”転倒世界”の者達が次々と姿を現したことによって力場が崩れた地上へと現界を果たしていた。


「普段なら規制やら何やらにビクついているべきところなんだろうが……こんだけ世界が終りかけている今なら、そんなモノを気にする必要もねぇわな!」


 そんな事を口にしながら、なろうユーザー達に迫ろうとした姉虎達の相手をしていたのは、ノクターン作品の主人公である青年だった。


 絶体絶命の危機にも関わらず、彼は上等と言わんばかりに舌なめずりまで行い始める。


「……おまけに、ムチ♡プリねーちゃん達の相手をするだけで世界を救えるってんなら、これは合法っつーか、唯一立ち向かえる俺達という存在が法律そのものって言っても過言じゃあない……まさに至言、金言、オフパコ許可証ってヤツだぜ!!」


 彼が用いる能力は”催淫”能力。


 催淫は対象である女性に激しい淫気を催させるという効果であるため、理性や知性を持った女性が対象であれば、突発的に自身の身体に起きた変化に戸惑う女性を相手に姦計を張り巡らせ、巧みに関係を迫る事も出来たかもしれない。


 だが、理性や知性もなくただ貪欲に男性の精を貪る”姉虎”に対して使用したところで、野獣同然の彼女達が他者の視線や風説など気にするはずもなく、むしろ性に対する貪欲さが増すことによって自分達の精を更に吸い上げられる結果にしかならない……という完全な逆効果となっていた。


 ゆえにこれまで”催淫”作品に覚醒めたノクターンユーザーは催眠や隷属能力と違い、ノクターン作品でありながら全年齢版のなろう作品よりも姉虎達と交戦してはならない存在として厳命されてきたのだ。


 しかし現在なろうユーザー達の前にいる彼は、自身の”催淫”を最大限で姉虎達に使用し、完全に見境なくなった姉虎達をマフィアやおっかけ、警察官や狂信者といった他の暗黒領域の者達に襲撃させていく――。


「クソッ……や、やめやがれッ!!俺達の相手はなろうユーザーとかいう糞共だろうが!!……って、このッ!!」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?メチャクチャ、気持ち良い~~~ッ♡」


 次々と姉虎の脅威を前に搾り取られていく暗黒領域の男性陣。


 むろんその全てを制御できた訳ではない。


 中には、能力によって激しく興奮した状態のまま催淫主人公に襲い掛かる姉虎達もいたが、それらを彼はノクターン主人公特有の絶倫じみた精力で難なく返り討ちにしていく――!!


「す、凄い……これが、これこそが!”若さ”ってヤツか……!!」


 自分達の眼前で自分が生み出した主人公が行う痴態をまざまざと見せつけられながら、作者である中年男性が興奮を通り越した感嘆の極致ともいえる呟きを漏らしていた。


 周囲が騒然とする中、他のノクターン作品の登場人物も姉虎を陥落させていき、ムーンライトノベルから出現した者達もウルティマリアの少年兵や奴隷兵と禁じられた一夜限りのラブロマンスに耽っていく……。





 それを皮切りに、戦国時代にタイムスリップした女子高生が、織田家のもとで培ってきた処世術をもとに、「明らかに普段から悪事してそうな彼らの方を検挙したら、凄い手柄になりますよ!」と『イビルオオツ』の警察・探偵連合軍をそそのかして『アングラケイオス』のマフィア達に同士討ちを仕掛けさせたり、パーティから追放されたいけど、周囲から頼りにされているのでなかなか抜け出せなかったオッサン冒険者の主人公が、開放感からか自由を謳歌するかのように盛大に魔族達を薙ぎ払っていく――!!


「――ヌフゥッン!!」


『ウ、ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!』









 次々となろうユーザーを通じて現れる作品の登場人物達を前に、暗黒領域の軍勢は盛大に混乱に包まれていた。


 なんせ出てくるのがその作品の主人公だけでなく、その味方や彼らを支援する者達……そして、彼らと敵対しているような者達まで暗黒領域を討ち果たそうと、際限なく姿を現しているのだ。


 彼らの中には主人公達を激しく憎む者達が大勢いた。


 それこそ、強大な力と邪悪な企みを持って、世界そのものを滅ぼそうと企む者達もいた。





 ――だが、誰一人として暗黒領域の軍勢に与しようとする者達はいなかった。





 彼らは自身の怨敵である主人公達にすら目を向けずに、暗黒の軍勢へと吠える――!!


「例えどんな結果が決まっていようが、これは俺とアイツとの決闘だ!!――何も知らねぇ他所の奴が、勝手にしゃしゃり出てくんじゃねぇッ!!」


「ヨホホホッ!……”世界廃滅”の栄誉は私だけのモノ……おこぼれどころかそれを掠め取ろうとは、まさに卑しい!その愚行、断じて許し難し!!……ゆえに、自分達だけは助かると考えているような貴方がたは、真の滅びの体現者であるこの私が手ずから滅ぼして差し上げましょうぞ……!!」


 彼らとは違い、誰かの手を借りてでも憎むべき相手がいる者、どんな手を使ってでも自身を取り巻く世界の全てを憎む者達もいた。


 それでも、彼らはこの暗黒という終末に”否”を突きつける。





 ――どれだけ醜態を晒し、敗北するような結果が決まっていたとしても。


 これは自分の選択と行動の末に、辿り着こうとした自分だけの物語である。


 ”誰か”とやらに委ねて簡単に納得できるような結末ならば、我々は最初から誰一人としてここまで苦悩するはずがなかった――!!





 突如自分達の前に姿を現した”十大暗黒領域”による世界の終わり。


 自分達とは全く無関係な者達によって引き起こされる突然の廃滅(打ち切り)などという結末に、納得できる者などいるはずがなかった。


 ゆえに、彼らはこの戦いの果てに自分達に何も残らないのが分かっていても、この決定だけは覆さない。





 剣林弾雨けんりんだんうを彷彿とさせる猛攻が、暗黒の軍勢を打ち砕いていく――!!

『本作は「すげどう杯企画」参加作品です。

企画の概要については下記URLをご覧ください。

(https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1299352/blogkey/2255003/(あっちいけ活動報告))』


※本作の執筆にあたって、『古城ろっく』さんの名義を使用させて頂く許可を、古城ろっくさん本人から頂きました。


慎んで、深く御礼申し上げます。

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