『おいでよ!姉虎ランド♡』 ――閉園
現在、暗黒領域からは自分達の”神”とでもいうべき存在である空亡に向けて捧げられるように、強大な瘴気・破滅の力とでもいうべきものが立ち上っていた。
暗黒領域からの供給を断ち切らぬ限り、赤城てんぷがどれほど死力を尽くして食い止めようとも、空亡は無尽蔵に強大化していくのみ――。
それを理屈ではなく本能で理解しているかのように、この世界に出現した”転倒世界”の者達が暗黒領域を崩すために次々と繰り出していく――!!
第一領域:無限快楽地獄・『おいでよ!姉虎ランド♡』
現在この場所では、青色のショートカットに甲羅を背負ったムチ☆プリお姉さんの姿をした”姉虎”が、この領域に踏み込んできた侵入者に向けて、両肩からハイドロキャノン砲を発射しようとしていた。
「ドンムーッ!!」
威嚇の声を上げる姉虎。
だが、その目論見が成功する事はなかった。
「……上等だコラッ!!アタイに向かって、何向けてんだこの淫売ヤローッ!!」
猛烈系ふくよか女子の、米豪俵 ドス子による強烈な張り手を受けて、甲羅を背負った姉虎が盛大に吹き飛ぶ。
周囲の他の姉虎達が、ドス子に対して猛然と襲い掛かってくるが、彼女はそれらすらも傍若無人かつ豪快に薙ぎ払っていく――!!
「――ドスコーイッ!!」
その様子を後ろから半ば呆れたように見つめながら、草薙財閥の令嬢:彩華が愛用のレイピアを構えて、自身の仲間達へと呼びかける。
「まったく、相変わらず気品からはほど遠い方ですわね。……ですが、私達も負けていられませんわ!――行きますわよ、鈴音さん、文佳さん!!」
「あいよ~!!りょ~かい!」
「……うぃ、まかせとけ~………」
レイピア、ランス、BL雑誌をそれぞれ手にした三人の美女が、戦場を賭ける戦乙女を彷彿とさせる鮮烈な姿で、敵を一掃していく――!!
「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!今の私は家を追い出された無職でも、アイドルのおっかけをしている求職者でもねぇ!……世界を救うために立ち上がった聖戦士様だァァァァァッ!!」
好きなアイドルグループのおっかけ活動に夢中になるあまり家事を手伝いもしないどころか、両親から金をだまし取ったあげくに家を追い出された25歳の元・家事手伝いの女性:黄崎 花×が、自身の推しメンカラーの光を放つサイリウムを姉虎達に振り回す。
「まったく、花×の奴……本当に考えなしなんだから!」
「アラアラ。……でも、どことなく嬉しそうじゃないですの。イルさん?」
「~~~ッ!!うっさい!須磨子、うっさい!!」
白いポニーテールを揺らした少女の姿をしたモバイルバッテリーの化身:イルが、顔を真っ赤にしながら、黒髪和服の清楚な印象の美少女の姿をしたスマホの化身:須磨子に照れ隠しの罵倒をぶつける。
そう言っている間にも、イルのポニーテールが花×の手にしていたサイリウムに巻き付き、失われた電力を補充していく――!!
「私の分の電力も残しておいてくださいましね……?」と言いながら、須磨子が自身に搭載されたナビゲーションアプリの機能を用いて、この領域の支配者である”ペニショク=シュ”のもとへと導いていく――!!
この領域の支配者である邪神・”ペニショク=シュ”は激しく混乱していた。
姉虎達を蹴散らし、自身のもとまで辿り着くことが出来たのは、女性で構成された戦士達の集団。
それも当然であり、男ならば姉虎達の餌食となって絶命するまで性的搾取をされるだけであり、ここまで来ることが出来るのは自然、強き女性のみとなっているからだ。
あとは、それほどの力を持った強き女性達を相手に、自身の”淫蕩”の力を持って触手で犯し、快楽で蕩かせ、気位をへし折り屈服させながら、凌辱の末に孕ませる――それが”ペニショク=シュ”の愉しみであった。
――だが、現在淫蕩の邪神は彼女達を前にしているにも関わらず、微塵も触手を機能させることが出来ていなかった。
「――ッ、どっせいッ!!!!」
”ペニショク=シュ”に盛大に張り手をかましているのは、言わずもがな――米豪俵 ドス子であった。
この領域支配者である邪神は、皆を率いながら先陣切ってこの場に現れた彼女の姿を目にした瞬間、自身の触手に宿っていた昂揚が急速に冷えていくのを感じていた。
腹の肉を盛大に揺らしながら、重量級でコチラに向かってくるだらしない身体つき。
『ガハハッ!』と、大口を開けて豪快に響く耳障りな笑い声。
そして、こちらや姉虎達に向ける嫉妬と憎悪で更に歪んだ醜い顔つき。
これまで数多の美少女戦士達を餌食にしてきた”ペニショク=シュ”にとって、ドス子という存在を女性として認識する事は不可能だった。
彼女の周囲を見渡せば、出涸らしがいるものの、それ以外はドス子とは違い見目麗しく繁殖に適した個体が揃っている。
そちらに向けて、邪神の触手が伸ばされる――!!
……ことはなかった。
「……こんなに良い女が目の前にいるっていうのに、どこに余所見してんだ、テメェッ!?」
ドス子によって、盛大に触手がブチブチ……ッ!!と音を立てて、引きちぎられていく。
『~~~~~~~~~~ッ!?』
声にならない叫びを上げる”ペニショク=シュ”。
先端に眼球がついた触手をドス子の方へ向ければ、今度はそちらの根元が彼女にむんず、と握りつぶすほどの力で掴まれていた。
「アタイの事を、いやらしい目で見てんじゃねーぞ!……この、ドスケベ野郎ッ!!!!」
『~~~~~~~~~~ッ、キシャァァァァァァァァァァァァァァァ!?』
今度こそ盛大に唸り声を上げる”ペニショク=シュ”。
そうしている間にも「そんだけ卑猥なモンぶら下げまくっているクセに、全部しなびたりしてんじゃねーぞ、コラァッ!!」などと支離滅裂かつ無茶苦茶な事を口にするドス子によって、次々と触手が引きちぎられ、自身の肉体を超ド級の張り手の衝撃が襲い続ける――!!
それを皮切りに、彼女の仲間達によるレイピア、ランス、BL雑誌、サイリウム……といった様々な武器による斬撃が邪神の肉体を切り刻んでいく。
これまで”ペニショク=シュ”にとって女性とは、どれだけ勇ましかろうと自分によって嬲られ、孕まされ、飽きれば捨てられるしかない哀れながらも愛すべき消耗品の玩具に過ぎなかった。
だが、ドス子によって『女性は怖いモノ』という認識を自身の根底に刻まれた”ペニショク=シュ”は、彼女の仲間である美女達を前にしても触手を奮い立たせることが出来ず、なすすべもなくその身を蹂躙されることになっていたのである。
――自分は、これほどの目に遭わなければならない事を他者にしていたのか。
――女とは、これほどまでに凄まじい脅威だったのか……?
ならば何故、今まで自分に挑んでおきながら無様に喘ぐ事しか出来なかったいくつもの彼女達は、その事を教えてくれなかったのか。
そして、異界の邪神である自分にこれだけの感情を感じさせる側面を今に至るまで隠し通してきたというのなら、”女”という存在は――。
『……ビョルるル、るッフ――!!』
言語にならない邪神の絶叫が、『おいでよ!姉虎ランド♡』の森林に深く響き渡る――。
『本作は「すげどう杯企画」参加作品です。
企画の概要については下記URLをご覧ください。
(https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1299352/blogkey/2255003/(あっちいけ活動報告))』
※本作の執筆にあたって、『古城ろっく』さんの名義を使用させて頂く許可を、古城ろっくさん本人から頂きました。
慎んで、深く御礼申し上げます。
 




