表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺し屋な執事とヤンデレなお嬢様  作者: 竹ノ利
専属執事始めました編
13/15

再開と再会



おっひざー(誤字ではない)


 






 静寂に包まれた。

 部屋には美しい女性の姿に目線が注目する。

 これはもう、魔性と呼ぶべきかもしれない程であり注目した目線は、彼女から離すという選択肢を忘れさせられていた。


「十年ぶりですか…」


 静寂を先に破ったのは、彼女の方だった。


「はい、本来ならあと一年早く来られたのですが…(マティアス許すまじ)」


 何故か距離を感じる。

 昔はもっと砕けた話し方だったような気がする。


 多分俺も、彼女も気付いているんだろう。

 だが、言葉には表さない。

 表してしまえば、それはもう戻らないものだと思ってしまったから。


 だから、この距離は物理的なものであることを、刹那に願った。


「やっぱり美幸様の幼馴染って二宮くんの事だったのですね」

「やっぱりって?」


 言葉の綾、そんなものがフィリップスから感じ取られた。「やっぱり」とは、何の意味が含まれているのか。


「はいなのです。昨日美幸様が「ミラノ」いえ!何でもないのです!!」


 美幸お嬢様がすごい笑顔でいらっしゃる。

 とても喜ばしいことなのだが、目が笑なっていない。

 フィリップスにそれ以上喋るなと、笑顔で脅しているようだ。


 隣のさっきまで生き生きとしていたフィリップスば、冷凍庫で凍らされてる魚みたいになっていた。

 そこまで怖いのか!?


「二宮さん、先程の一年早くこられたというのはどういう意味なんですか?」


(やばい、矛先がこっちに向いた)


「いや、あのですね。師匠が連絡を忘れていたと言いますか…まぁ、そんなところですね」


 ごめんマティアス、あんたの犠牲は無駄にはしない。

 というか、元々はアンタが悪いんだからね。


「成程、ではマティアスが全て悪いと?」

「いや、そこまでは…」

「では言い方を変えます。一年間も私の事を忘れて仕事をしていた二宮さん、何か弁明はありますか?」


「いえ、無いです。私が悪かったです」


 予想が確信へと変わった。


(あ、俺この人に逆らえないわ)


 流石月見里の一人娘と言うべきか、マフィアの一人娘と言うべきか、人心掌握に長けている。

 というか、支配者の貫禄すらこの年ででている。


 あの無邪気さは、もう見る影もない。


 やはり俺が変わったように、彼女も変わったんだ。それが、突きつけられているみたいで嬉しい反面悲しかった。


「まぁここにいるのですし、今はもう過ぎたことです。今はいいでしょう」


 え!?そこは許すところじゃないの!?

 しかも今はって言ったぞこの人、いつか追い打ちをかけるように使うに違いないな。


「あ、ありがとうございます?」


 なぜ疑問系になった俺!


「ふふ、昔みたいにしてくれてもいいんですよ」


 多分俺が思っていたことを当てられた。いや、もしかしたら彼女も同じことを考えていたのかもしれない。


「今は立場・・がありますので」


 戻りたくても、接したくても、今はもう…


「ミラノは偶に美幸おねぇーちゃんと呼びますけどね」


 フリーズしているフィリップスに美幸お嬢様が追い打ちをかけた。

 凍っていたフィリップスは、自分から発する熱で解凍したのかと思わせるほど、顔が真っ赤に染まっていた。


 恥ずかしかったんだな〜と他人事の用に振るう。


(にしても、天真爛漫ではなく大和撫子か)


 分からないでもないが、大和撫子と言うよりも小悪魔、いや魔お──


「二宮さん?」

「は、はい!?」

「それから先は……ね?」


 何でこの人に俺の考えてることわかるんだよ!?

 こえーよ、いやマジで。

 読心術極めすぎだろ!?


「は、はて、、何のことやら」

「二宮さん」

「……ごめんなさい」


 尻に引かれる、とはこういう事なんだろうな。いや、隷属?とか下僕?みたいなものか。


 何より、彼女には絶対に勝てない。

 そう悟った時でもあった。



 小言を交わす。

 微笑んだり、怒られたり、呆れられたり。

 そんなひと時が心地いい。


 でも、だからこそ、より際立つ。


 彼女の仮面が。

 付けることを強要された訳ではなく、しかし自ら付けた訳でも無い中途半端な仮面が。


 とても気持ちが悪いと思った。


「それではミラノ、少し頼みたいことがあるのですが」

「はいなのです!」


 美幸お嬢様はフィリップスに頼み事をした。

 内容は学園で忘れ物をしたらしく、取りに行ってほしいというものだった。

 支配者と言えど人の子、完璧ではないと少しだけ肩の荷が降りた。



「では行ってくるのです!」


 フィリップスは元気よく扉を開き、部屋を出ていった。

 敢えて俺を同行させなかったのは、二人きりになる為なんだろう。

 積もる話…がある訳では無いが、一応幼馴染との再会になる。


 伝えたいことの一つや二つあるだろう。



「それで二人にした理ゆ──ん?」


 話し終わる前に、美幸お嬢様は早足でこちらに向かってきた。

 顔を伏せ、地面と足だけを見ているように。


「美幸お嬢様?」


 段々と距離が縮まり、最終的には距離は無くなった。

 美幸お嬢様は俺の胸に体を預けるように、頭を寄り添わせた。

 それに俺は流されるように、何もせずに待ち受けた。









「───銀くん」


 放たれた愛称。

 俺はずっと待ち続けていた瞬間に巡り会う。

 放たれた音色は金色のように美しく、寄り添う体は陽だまりのように暖かい。


 幸せな時間。

 滅多に味わえない感覚を俺は抱きしめるように包んだ。



 世の中には立場というものがある。

 人を選ぶ、階級を決める、そんなものがある。


 だが、今は。

 誰もいない二人だけなら……


「ただいま、美幸」


 そっと胸に寄り添う頭に手を置く。


「おかえり、銀くん」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ