ミラノ・フィリップスという少女
老人からの言葉を背に、校門を潜った。
中に広がるのは、本当に日本なのか怪しいほど豪華で壮大な校舎が広がっていた。
「あなたが二宮 銀さんですか?」
校舎を見上げていると、隣から声をかけられた。
どうもこの人がさっき爺さんが言ってた、迎えの人なんだろう。
やっと腰を下ろせると思い、隣に視線をやる。
「はい、そ………うです…よ?」
振り返りながら返答をしており、迎えの人の容姿を見てこの子が本当に迎えの人なのか疑問を抱いた。
「そうですか、アタシはミラノ・フィリップスといいます。ここで月見里 美幸様の専属メイドとして籍を置いてる身なのです!」
「…専属メイドとは何ですか?」
「はいなのです、専属メイドはこの学校に通う特別コースの生徒に二人まで付けることが出来る役職なのです。男の人は専属執事、女の人は専属メイドというふうになるのです!」
なるほどな、全寮制なのでということもあるのだろう。
となればこの子は俺と同じ立場の、所謂同僚に位置するのか?
こんな子供が?
「フィリップスさん、失礼ですがお幾つですか?」
「今年で十歳になるのです。なので敬語は必要ないのです」
背の小さいだけだと少しだけ期待していたが、どうもそういう訳じゃないみたいだ。
「そうか、じゃあフィリップス。まずは俺が泊まる寮へ案内してくれないか?」
「はいなのです!」
メイド服をきたフィリップスは銀の前を歩き、大きな校舎とは少し離れた、屋敷のような場所へ歩む向きを変えた。
「この学園のことについて色々と教えてくれ」
「はいなのです、っと言っても二宮くんはどこまで知ってるのですか?」
明らかに年下の子に教えを乞う銀。だが、そんなプライドはここ数年で、否物心ついた頃から捨てている。
「そうだな、ここの学校がお嬢様学校ってくらいしか知らないな。…あと警備員が只者じゃない」
「え!?翁警備長となにかあったのですか!?」
「え?まー、いきなり襲われたっていうか、返り討ちにしたっていうか…」
「え!!!??翁警備長が負けるなんて……二宮くん何者なのですか?」
「いや、ただの執事だよ」
「ただの執事が現代の侍と謳われた翁警備長に勝つのは、さすがに無理があると思うのです…」
あれ、その翁って人そんなに凄かったの?
あんまり分からなかったけど、マフィアの幹部クラスになったらあれくらいゴロゴロいると思うんだけど。
まぁ、本気じゃなかったのかもしれないから何とも言えないけど。
「まぁ、その話は置いといて。学園の規則とかルールを教えてくれない?」
「は、はいなのです!!詳しいことは学生帳に載ってるのでそれに目を通すのが一番なのです。だから今日必要な規則だけ説明するのです」
とう言うと、フィリップスは満足気な顔をして説明を始めた。
「まず、この学園には三つの寮があるのです。一つは美幸様が使う女子寮、二つ目は男性が使う男子寮。それで最後に使用人寮なのです」
「へぇー、てっきり執事やメイドがいるからそいつらが朝起きて朝食を作るのかと思ってたよ」
「いえ、朝食と夕食は男子寮と女子寮は出ますが使用人寮は各々で済ますこととなってるです」
身分の違いを叩きつけられているみたいだな。
絶対的な身分の違いはあるが。
「随分と格の違いがでてるな」
「それは仕方ないのです。男子寮と女子寮は二十二時が門限で、0時に消灯です。逆に使用人寮は門限も消灯もありません。部屋にバスルームもありますが、大浴場は六時〜二十二時までなのです」
「大体覚えた、部屋は一人部屋か?」
「はいなのです!使用人寮は二階と三階がメイドフロア、四階と五階は執事フロアなのです。メイドフロアには執事の進入は禁止になってるので、破った場合は何らかの罰が与えられるのです。用がある時はメイドが執事フロアに行くのでそうして下さいなのです」
理不尽だ。
いや、別に行きたいわけじゃないけどね。
「じゃあ女子寮には執事は入れないのか?」
「いいえなのです、でも消灯までには出ないといけないのです。…着いたのです!」
少し離れた場所にある二つの寮とは比べ物にならないが、それでも十分に立派な寮がそびえ立っていた。
「二宮くんは五階の502号室と聞いてるのです。荷物はもう運んでると業者の人が言ってたのです」
(荷物届くの早くね?)
早いに越したことはないが、早すぎると少し不審になる。
しかしテレスならそれくらいやってのけるか。
「分かった」
「ふふ、大丈夫なのです。中身を見てませんから」
フィリップスは俺のことを知っているのか?
ふと疑問に思ったが、翁警備長を退けたことにあれ程慌てていたのだ、知っていたらあの対応はないと可能性から削除する。
「アタシも年頃の男の子の私物を見るほど、今はデリカシーのない子じゃないのです」
今は…が。絶対前にやらかした事があるな。
「それはフィリップスはいい子だな〜」
「えへへ、なのです」
(可愛いなぁ、なんだよこの小動物は)
咄嗟にフィリップスの頭に手をやる。こんな子は、昔の美幸お嬢様以来だな。
「わわわっ!」
頭を撫でられたのを、顔を真っ赤にしてフィリップスは驚いていた。
「あ、悪い。無意識で」
「無意識で人の頭を撫でるのは、それはそれで危ないのです」
「…悪い」
犬などの小動物とフィリップスが重なり、咄嗟に撫でたことを謝る。
妹ができたみたいだ。
「ではアタシは外で待っているので、着替えたら出てきてくださいなのです」
「ん、了解」
フィリップスから貰った鍵を使ってドアを開け、部屋の中に入る。
部屋の中には、スーツケースやアタッシュケースにボストンバッグと様々なものがあり、全て銀の私物でもある。
中身を確認し、あっちで使っていた武器が全てあるかをチェックする。
銃からトラップまで色々入ってあるが、やはり全てが送られていたわけではなく、常に装備している一式と変えの銃弾と何個かの手榴弾といったぐあいだ。
燕尾服を着る最中に、装備を隠すように装着する。
着替え終わると、部屋のベットの裏や机の裏などの場所にハンドガンを隠す。
中に入っていた武器を部屋のあちこちに配置し、受け取った荷物の中には何も無い状態にした。
「お待たせ」
「遅いのです、アタシが空き部屋の前にいる変なやつみたいな目で見られてしまったのです」
「それなら中に入ればよかったのに」
「な、な!年頃の男の子の部屋に入るなんて……何をされるのか分からないのです!!」
「何もしねぇよ」
漫才?が終わり、次の予定に移行するフィリップス。
「それでは次は、美幸様の部屋にいくのです!」
「分かった」
(やっと……やっとだ)
1日二回投稿初めてやりました!
暇すぎましたわ、というより巻き返したのが凄い嬉しかったので衝動書きしました。
次回あたり美幸お嬢様でます。
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