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殺し屋な執事とヤンデレなお嬢様  作者: 竹ノ利
専属執事始めました編
10/15

御門学園と入校許可証

 







 車が止まり、マティアスから降りろと命じられる。


「なぁ、マティアス」

「どうした?」


「これって高校か?」

「おう、高校だ」


 銀が疑問に思うのも無理はない。高校というよりも、大きさは大学と同じくらいの敷地面積を誇っていたかだ。

 校門はマティアスが知るような校門ではなく、屋敷などに使われているような大掛かりな門となっていた。


「あ、これお前の分な」


 マティアスは車のトランクから、シルバーのアタッシュケースを取り出したの。


「なんだ?武器か?」

「ちげぇよ、お前の服だ。あれからろくに燕尾服なんてらきてねぇだろ。オーダーメイドで作ったから餞別だと思って持ってけ」


「分かった」



 アタッシュケースと元々持ってきていたスーツケースを受け取る。


「じゃあ行ってくる」

「おう、行ってこい」


 マティアスに見送られ豪華な校門へと歩き出す。ここに来るまで十年近くかかった。

 四つ葉のクローバーのネックレスを服越しに触り、気分を鎮める。


(やっと貴方にあえる)


 気分を鎮めるが、やはり堪えられない嬉々がある。あなたの隣にやっと立つことができる。

 銀にとってそれはもう一つの目標でもあった。







 ◇◇◇




 マティアスは銀の背中を見送り、車に乗って校門前を後にした。

 幼い頃から見てきた二宮銀。絶望で充満した瞳が、今となってはただの一般人と同じ瞳を装っている。

 辛いこと、悲しいこと、殺し屋をしていれば何度でも経験してきただろう。

 マティアスの経験上、殺し屋という職業は『捨てられるか』という選択をいつかは迫られる。

 銀のここ十年の仕事を見た時、マティアスはあまりの偉業の数々に度肝を抜かれた。


 五歳の時に1800mの長距離射撃に成功。

 七歳の時に麻薬組織の解体に貢献。

 十歳の時にマフィアの単独撃破。


 などなど、歳を誤魔化しているかと思うような成績ばかり。

 現時点では銀はどれだけ凄い殺し屋になっているかなど、測ることすらできない。

 しかし、マティアスはその事について寧ろ喜んでいた。


 当初の目的である自分と同等以上の殺し屋を作ることに、成功したからだ。

 だからだろう、マティアスが引退を決意したのは。


 初めはスりの上手いガキがいる。

 ウチのファミリーの実力者がスられたことにすら気付かなかった。


 ただ、それだけ。興味が湧いた。

 それからそのガキを探し出し、引き取った。


 才能は今まで見てきた誰よりもある。そしてこのガキは俺を超えられる。そう確信して教えてきた。


 何度も共に飯を食い、何度も共に研鑽し、俺とあいつはファミリーになれた。

 息子の背中を見届け、逞しくなった背中を賞賛する。


 しかし、マティアス。それは何かやらかす男。


「あ、入校許可証渡すの忘れた」


 やはり彼はしまらない男。




 ◇◇◇




「すいません、執事として編入することになった二宮銀と申します」


 銀は校門から少し離れた、警備室みたいな場所を訪ねた。

 そこには警備服を着て杖をついている老人が待っていた。


「ふむ、では入校許可証の提示を」


(入校許可証?)


 マティアスからそんなこと一言も聞いていない。またあいつ…。

 まぁ、無くてもこの爺さんなら何とかなるだろ。


「すいません、実は忘れてしまって(マティアスが)」


 自分のせいではないと主張するが、言ってもわからないと思うので心の中で悪態を呟く。


「ホッホッホ、ではお引き取り願おうか」


 ニコニコとしていた爺さんが、急に真顔になった。

 これだけで何となく銀は察した。


(この爺さん、ただの爺さんって訳じゃねぇな)


 醸し出される雰囲気は、ただの老人が出していい雰囲気を凌駕していた。


 しかし、それで引き下がる訳にはいかない。

 空港からここまで車で数時間かかった。道筋は覚えたが、歩いて街に出るには徒歩で三時間は超える。

 更にいえば今は黄昏時。あと一時間もし無いうちに日が沈む。


 あらゆる場合を想定しても、全寮制のここしか泊まる場所がない。

 手持ちはアタッシュケースに入ってある燕尾服に、スーツケースに入ってある私服数着と非常食。

 一夜野宿できない訳では無いが、アメリカからの来日に車での移動。移動だけだが、疲れもある。


 何よりあの方に会いたい。


「そこを何となくなりませんか?」


 あくまで高校だ。編入生にそこまで求めないだろう。


「駄目ですね」


 しかし爺さんはそれを許さない。

 だが、銀もここで引き下がるわけにはいかない。


「そこまで厳重にする必要があるんですか?」

「ありますよ。ここに通う生徒は世界の御曹司や有名人の子供といった特別な生徒が集められているのです。それが我が校【御門学園】なのです。そんな超一流校に何処の馬の骨ともわからない人を入れるわけには行きません」


 確かに子供の頃から美幸お嬢様が、ここに通うことは決定していたような言い方だった。凄い学校なのだろうと予想はしていたが、超一流を集めた学校だとは思っていなかった。

 縁のある高校、それくらいにしか思っていなかった。


「何処の馬の骨か分かれば入ってもいいのですか?」

「ええ、できるなら…ですが」


「それでは月見里 美幸という生徒を呼んでください」


 瞬間、爺さんは杖を振りかぶり銀を殴りつけた。


 だが警戒していなかった訳では無い。銀はずっと警戒していた。

 重心のぶれない歩き方、漏れ出すプレッシャーを覆うように隠す面構え。


 裏の人間か表の人間かは分からないが、出来ることは間違いない。


 だからこそ、瞬時に反応できた。


 振り下ろされる杖をアタッシュケースで受け止める。

 しかし、爺さんはそれでは止まらない。

 止められた杖を一旦離し、拳をつくり体制を低くし放とうとするが。

 アタッシュケースを銀との間に落とされ、一瞬だけ爺さんの視界から銀が消える。


「邪魔だ!」


 もう片方の手でアタッシュケースを払い、拳を放つ……が。


 放った先には誰もおらず、拳は空を切った。


「止まれ」


 気付いた時には銀は爺さんの杖を握っており、杖の先を爺さんの首元に置いていた。

 懐かしの技法、マティアスが最初消えたように錯覚した歩法だ。


「ふむ、本物のようですね」


 奇襲が失敗に終わった爺さんは、少し嬉しそうな顔でそう呟いた。


「試したのか」

「なんせ貴方は有名人ですからね。鬼才【黒霧】。入校許可証がないのは頂けませんが、本人なのは間違いないでしょう。迎えがすぐそこに来ています、あとはその人に従ってください」


 杖を首元から離し、丁重に返し落ちているアタッシュケースを拾い上げる。


 自動で校門が開き、銀は【御門学園】へ足を踏み入れる。


「最後に──」


 爺さんはさっきとは打って変わった顔をすると、一言だけこちらにも聞こえる声でしっかりと言葉を与えた。


「──【御門学園】へようこそ」










巻き返した…だと!?


日曜日はみんな暇なんですね(*´艸`)


高評価、ブックマーク、感想!

宜しくお願いします(`_´)ゞ

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