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殺し屋な執事とヤンデレなお嬢様  作者: 竹ノ利
殺し屋始めました編
1/15

始まりは突然に

 



 腹が減った。




 身なりのいい男からスった金が底を尽きた。

 俺は手馴れた手つきで、店からバレないように食品をスる。


 何度も繰り返す内に罪悪感何てものは消えた。

 どれだけ綺麗事を並べても、人の欲には勝てない。

 ここはゴミ溜めみたいな場所だが、俺に人生が何たるかを教えてくれた。


 誰しもが欲には勝てない。

 ここは穢れているし、見た目も悪い。


 だが、ここよりも人が人らしく生きてる場所はあるのか?



















 答えは否である。



 ◇◇◇





 多分五歳になった。

 多分というのは正確ではないから。


 生まれながらにして孤児、言葉使いもスリの技も殺しの仕方も、生きてくために必要なものはスラムに居れば勝手に身につく。

 それ相応の生き方をすればだが…。


 遊んでる暇なんてない。

 己が欲に溺れる日々。

 寝てる大人ゴミ、無邪気に笑う子供ゴミ、身なりのいい青年ゴミ、全部が鴨だ。


 さぞ幸せそうな面をしている。自分の周りに危険なんてないとでも思っているような、そんな傲慢にも似たつまらない面だ。


 今日は運がいい、あの身なりのいい男からカモらせて貰おう。

 対象はスーツを着たオールバックの男。見たところ二十代半ばで懐の所に少し違和感がある。


 銃だ。


 それも普通か、身なりのいい男が何の武装もなしにこんなゴミ溜めに来るわけがないか。


 だが、逆に言えば取られたくないものを持ってる可能性が高い。もし無かったとしても、ここでは銃はいい値で売れる。弾が無くなっても使いようによれば牽制にもなる。


 決めた、アイツを狙おう。



 いくら警戒しているとしても、こんなガキがスりにくるなんて思いもしないだろう。だいたい大人はガキを舐めてる、こっちとしても有難い。


 すれ違いざまに男の懐に手を伸ばす。

 何度も繰り返した手つき、何千、何万と小さい手で繰り返した技。


 この技を身につけるにはガキにはまだ早すぎた。





「──は?」


 手が止まった。

 手首に暖かい感触がある、今思えば自分以外の体温を感じたのはいつぶりなのか分からないほどだった。



(違う!!今そんなことを考えている場合じゃない!!)


 止められた、武器持ちに。

 子供といえどここはスラム、殺しても死体が一つ増えた程度にしかここの連中は思わない。


 全身が悪寒が伝わった。

 一秒が永遠に近いような変な感覚。たまに聞く走馬灯?とかいうやつなんだろう。死ぬ瞬間に昔のことを思い出すという。だが、思い出すことなど何も無い。


 むしろ、やっとと思っている自分がいる。


(やっと死ねる)


 ずっと心のどこがでこんな生活に嫌気がさしていたのかもしれない。心のどこかで笑って酒を飲んでいる大人達に嫉妬していたのかもしれない。心のどこかで帰る家のある子供を妬んでいたのかもしれない。心のどこかで身なりのいい青年を見返してやりたいと思っていたのかもしれない。遊んでいる子供をみて自分も友達が欲しいと思っていたのかもしれない。


 ずっと考えていた。自分が生きている理由。

 心のどこかで誰かが救ってくれる───




 ───そんな淡い希望を持ちながら。



 ああ、自分が気持ち悪い。この瞬間になって我が身が可愛くなるなんて。何て傲慢で嫉妬深いのか。女々しくて吐き気がするほど気持ち悪い。

 自分がそんな醜い存在だと今更気付くのも嫌になる。


 でも、これで──やっと。



 スーツを着た男は零れるように一言呟いた。













「見つけた」


 刹那、俺の首への強い衝撃を最後に最期を迎えられた。




 ◇◇◇



「あれ?俺生きてる?」


 目を覚ました時に初めに思った感想はその一言に尽きた。



(俺は確かにあのスーツ男に殺されたはずだ)


 首を手で触る。

 斬られたような後はなく、実に普段どうりの首だった。


(ここが死後の世界ってやつなのか?)


 それにしては大層なベットだ。神様ってのは働かないくせに贅沢だけはするものなのだと皮肉を呟く。


 ギギギギと気が擦れるような音が響いた。


 目の前には今まで見たことのないような少女がいた。

 それもその筈が、住む世界が違う。その一言に尽きる。服装、髪の毛、そしてあの瞳。

 こっち側のことを何も知らない様な、無垢な瞳。


 眩しいとさえ思った。だが、俺は瞬時に思ってしまった。


(──こいつを攫えば…)


 これ以上のことは無粋な事だ。

 思いついたと同時に俺はベットを出た。


 一歩、また一歩と素足が床に当たりペチペチと音を立てる。









(───死んでまで俺はこんなことをする意味があるのか)



 生きるために物を盗んだ、生きるために人を殺した、生きるために人を壊した。

 だが、死んだ今はそんなことをする必要があるのか?



 足が止まる。

 いや、心が止まる。


 ──目的を見失っていたのか?


(違う)



 ──誰かを見返したかったのか?


(違う)



 ──彼女を壊したかったのかい?


(違う)












 ──人を殺したかったんだろ?


(………)




 壊れている。

 五歳にして人を殺すことに味を占めていたのだ。


 人の命を奪う瞬間、確かにあの時自分が生きていると、こいつよりも優れていると実感した。


 あの感覚は、なんとも表現出来ない快感があった。



 ならば足を止める必要なんてない筈だ。

 動かせ、進め、己が欲望に従え。


 金なんて二の次でいい、まずは目の前にいるコイツを──



「やっとおきたの?おなまえなんていうの?おともだちになってよ」



 動かそうとした足が固まった。

 目の前の女の子は、今から殺そうとした相手は話しかけてきたのだ。


 そしてその言葉を聞いた瞬間に、初めての目を覚ましたような爽快感が訪れた。


 見えていた灰色の世界は、初めての色が出た。女の子から色が溢れる。それはとても魅力的で、それはとても神々しい。


「お…おれ…は」


 上手く言葉が出ない。

 でも何故かは分かっている。女の子の質問に対して俺は何も答えられない。


 名前なんて持ってない。君と友達になる資格なんてない。


 だって俺はあっち側スラムの人間だから。



「起きたか」

「!?」


 同様を隠せなかった。

 目の前には、俺を殺したスーツの男がたっていたからだ。



 ここに何でこいつがいる?


 俺はこいつに殺されて、それで──



「初めに言っておくがお前を殺したのは俺だ」


 静かにその言葉を受け取る。


「お前を殺したのは俺だ、だからお前の所有権は俺にある」


 何が言いたいのか話が見えてこない。


「これからのお前の人生は俺のモノだ」


 ああ、そういうことか。


「お前にはその命を使ってやってもらうことがある」




「お前には俺の後継者として殺し屋ヒットマンになってもらう」




 まるで状況が読めないのだが、俺はこれからどうなるんだろう。

ただただヤンデレものを書いてみたくて始めました。何も計画してませんが、後悔はしてない。

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