第九話「本当にあった 怖いお顔」
明くる日の昼休み。
ボクは3年4組の教室の前に立っていた。
いやー!学年の違う廊下ってなんでこんなに緊張するんだろうね!
ほんとに、すれ違う人たち皆がボクのことを見ているような錯覚に陥るね!
物珍しくて本当に見ている説。……有力説ですね!
などと至らない考えを頭の中で巡らせるが、
足の震えは一向に止まらなかった。
本当に怖い。略して、ホンコワ。
自分でもなんでこんな怖いことをしようとしているのかを、
何度も自問自答した。
それでも、このままじゃヤンキーちゃんが酷い目に遭うと考えると、
何もしないという選択肢を選べなかった。
「失礼しまぁぁぁっす!!」
クソでか大声を上げながら教室へ入る。
威嚇の意味もあったし、自身を鼓舞する意味合いもあった。
あったよ。あったよね?意味無くないよね?
一瞬、「あ!誰かわからなかったらどうしよう!」と思ったが、
その教室を見渡した瞬間に分かった。
太田氏の髪を引っ張っていた、あの親父顔兄貴がいらしたのである。
相変わらず、我々一般市民を無条件に畏怖させるご尊顔をなされている。
要するに顔こえー。
「首代先輩ですか?」
「あ?誰だオメー?」
「砂尾さんの件でご相談にきました。 西戸崎と申します」
「砂尾ぉ? あ? お前まさかこの間……」
首代がボクのことを見て、この間のことを思いだしたようだ。
それでも動じずに、ボクはボクを通す。
間髪入れずにボクは要求を首代に言った。
「リンチの件、中止にしてもr」
「この間、俺が髪を引っ張った奴か!!」
「そっちじゃねぇよ」
ボクを太田氏と間違えやがって! この野郎!醤油瓶!!
勢い余って敬語使い忘れたやろ!!
「で? なに、キモオタくんは砂尾を助けたーい。とかいってんの?」
「その通りです。 さすがは首代先輩、御聡明ですね」
「あぁ!?」
皮肉を言ったことで首代は頭に来たようだった。
ボクの足は震えたままだけど構わない。
話し合いで解決するなんて、微塵も期待しちゃいなかったんだから。
「てめぇ。 俺に向かって、おソーメンとは……良い度胸じゃねぇか」
「えぇ……(困惑)」
御聡明をおソーメンと聞き間違えたのか……。
こういうアホさ加減はヤンキーっぽくて嫌いじゃないよ。
スキじゃないけど。
「今夜8時過ぎ、港にある泉南イ○ンの第8倉庫に来い。 そこで話しを聞いてやるよ」
「分かりました」
今夜8時。
ボクはそこで恐らく、生まれてはじめてのケンカをするだろう。
ほぼ100%勝てない負け戦。
それでもボクに行かない選択肢はない。
あー。下手なラノベ見たいなご都合主義のチートが覚醒しないかなー。