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不死鳥生活、はじめました(仮)  作者: 蒼ととら
〔1〕不死鳥の巣(仮)
9/16

8.穴

棘兎の残りの肉でも食べようかな。

お皿お皿ー。




........無い。



お皿の代わりになりそうな物も無い。

えー。なんで無いんだよー。

あ、不死鳥ってば野性的な鳥類だから必要なかったのか。

歴代不死鳥たちは、地面に食べ物をおいて食べていたようだ。

元人間、元日本人の俺としてはお皿は必須だ。地面なんかに置いたら、土やゴミ、菌なんかが付いて汚いってイメージだし、食べたらお腹痛くなりそうだ。ステータス的にも種族敵にも問題ないだろうが、主に気分的に。

となると、いったん此処から外に出て、葉っぱか何かお皿の代わりになるものを探すか。


神官3人がやってきた入口に視線を向ける。

こっちから外に出るとすると、神殿となっている本拠地?に出ることになる。そうすると多分、いや、確実に神官の誰かに見つかる。誰かに見つかると声を上げるだろ。それを聞きつけた神官が出てきて、さらに声を上げるだろう。そして、あれよあれよという間に神官達に囲まれ、動物園のおさわりコーナーが誕生し、俺は触られ過ぎてぐったりするひよこ状態になるだろう。

再び変な寒気に襲われて、ぶるっと震える。

魔法で寄せ付けないようにすればいいだけの話だろうが、俺より大きい沢山の人間がどっと押し寄せ迫ってくる様が容易く想像できる。物理的恐怖は避けれても、視覚的恐怖に他ならない。


ダメだ。こっちから出るのはやめよう。


そうなると、あとは母不死鳥の様に天井の穴から出るしかない。

でも、左右にある翼はペンギンのそれのような形で飛べない。

此処から出るのは無理だ。


という事はない。

此処は異世界。しかも不死鳥チートで魔法の使い方は記憶として持っている。

使い方の感覚の記憶だけだから、うまくいくかちょっと不安だけど。


お腹もすいてるし、さくっと試そう。

魔力を使うのは初めてだけど、記憶のおかげでなんとなくわかる。


どうやってやるかと言われると、感覚的過ぎて俺にもよくわからない。

言葉で表すなら、自分の中のもやーんとした何かを取り出す。多分これが魔力だろう。

俺自身を風で包んで浮かせるイメージをしてみる。

そのイメージを、もやーんとした物に入れるとその通りの現象が起こるみたいだ。

すぐに俺自身がふわりと、床から俺の身長の2倍ほどの高さに浮かび上がる。

おー。出来た!すげぇ。

俺飛んでる。さすが魔法。面白いな。

下から強風で風に押し上げられる飛び方じゃないから、息苦しないし、”風を纏う”イメージは正解だな。


--// 手伝う、手伝うー //

--// はいはい。任せて //

--// 任せて! //


え?うわーーー

「ピ?ピイーーー」


はしゃぐ子供のような声が沢山周りからが聞こえたと思ったら、突然、四方八方から押される感じがして空中でうまく取れていたバランスが崩れた。


--ぽてっ


い、痛い。

当然そのまま地面に落ちた。

もっふもふな幼羽と、あまり高く飛んでいなかったこと。そのおかげでたいしたことはない。ちょっと痛いだけ。


さっきの声と現象は。

この洞窟に住んでいる精霊達だ。

そのうちの風の精霊達が、俺がやっていることを手伝おうとした結果、四方八方から精霊達の風魔法でおしくらまんじゅうになり、俺が落ちた。

精霊たちに悪気はない。すごく純粋な存在だから、本当に俺の手伝いをしようとしただけ。



通常、自分の魔力の回復は生きている間、常に行われる。許容を超えた魔力は体の外にあふれ出す。そして、不死鳥の魔力は大量で美味しいらしい。

精霊達は、不死鳥から漏れ出す魔力を求めて、どこからともなくやってきて、不死鳥の巣を中心に沢山集まって住みついている。

精霊が沢山いる土地は豊かになる。その恩恵で、この辺りの森や町は栄えているようだ。

個体としての認識は、各属性の精霊王にしかなく、普通の精霊はすべてが同じ意志らしい。

だから、情報伝達が早い。そして、純粋であるが故感謝を忘れない。美味しい魔力(ごはん)をくれる不死鳥の力になろうと、先回って色々やる。不死鳥が魔法を使おうとするなら、助力しようとする。


というのが、先代達の情報だ。

この美味しい魔力(ごはん)への感謝の代表的な物が、不死鳥の巣。

・床が綺麗に平ら

・常に綺麗な湧き水を讃える洞窟湖(飲水・塗布で回復効果有)

・雨が降っても、洞窟内に降り込まない

・洞窟内を快適な湿度と温度に保つ

・新鮮な空気が入るように、常に空気がゆっくり循環

・不死鳥が許可したもの以外入れない全属性の結界

これら全部、精霊が行った先回りだ。

他にも、精霊が気に入った場所には、精霊が住みやすくなるように”精霊石”が発生する。精霊はその中にいれば快適に過ごせる。その精霊石、この洞窟の床数センチ下一面に、いろんな属性でカラフルに広がっているらしい。光の精霊達は、役に立とうと、湖の底にこの精霊石を形成して、日中は光を貯め込み、夜になるとその光を淡く放出して洞窟内を幻想的に照らす。

精霊石って、名前からして町なんかだと高額で取引されてそうな気がする。


兎に角、お手伝いしてくれるのはいいが、飛ぶのをお手伝いされるとバランスが難しい。


『手伝ってくれるのは嬉しいけど、飛ぶ手伝いはしなくていいよ』


周辺の精霊に伝わるように念話で伝える。


--// はーい //

--// わかったー //

--// ざんねんー //


姿は見えないけど、手伝いできる機会がなくなってしょんぼりしている空気があっちこっちから発せられている。

精霊は純粋で心が伝わる。俺がちょっとイラッとしたのが伝わってしまったかもしれない。


『手伝ってほしいときは、ぜひお願いするよ』


--// もちろん! //

--// 任せてー //

--// わかった //


今度は嬉しげで温かい空気になる。

精霊って不思議で面白いな。


気を取り直して、もう一度、風魔法で飛び上がる。

今度は精霊のお手伝いは無く、問題無く飛べた。しばらく待っても精霊の干渉はなく、高さを維持できている。

うん。問題ないな。

今度は移動してみる。

こっちに行きたいとか、あっちに行きたいと思うだけ。簡単ー。

ゲームや小説なんかだと、魔法って精神集中とか詠唱とかで時間がかかるイメージだけど、全くそんなことなく自分の足で歩いているのと変わらないくらいラグなんてない。むしろ俺が歩くより転けないし断然早い。

調子に乗って、結構飛んでたけど、そういえば魔力は大丈夫だろうか?

使い過ぎて今日はもう外に出れないとか、ないよね?

そ、そうだ。こんな時は鑑定さんだ。

飛ぶのに使う魔力はいくらだろう?


----------

■魔法

【名称】---

【属性】風

【コスト】使用時:魔力-5、1日維持:魔力-5

【現象】風を自らの周囲に纏わせ、浮遊効果を生む。


----------

うわー。魔法ってホントすごいな。

こんな簡単で低コストに空飛べるなら、そりゃ科学じゃなくて魔法が発展するわ。魔法の方がなんとなくエコな感じがするし。

それに1日維持するのに魔力5だけで足りるのか。

ずっと飛んでても問題なさそうだな。


外に出るなら、何があるかわからないし魔法的に守りを強化しておいて損はないだろう。ただやってみたいだけとも言う。

魔法でシールドって、カッコイイじゃないか。中二病だろうと、実現できる今、痛くないのだ!

てことで早速........シールドってどんなだ?

とりあえず、風魔法みたいなイメージで、包み込む透明な壁で俺が必要だと思わない物全て防ぐってのでどうかな?魔法なんだから不思議仕様でも何でもありだろう。

ってことで、もやーんにポイッと。

...ん?なんか変わったかな?

あ、透明ってしたから出来ててもわからないのか。

もし浮いたまま出来てるなら、複数同時に魔法使うってのも出来てるって事になる。

鑑定さん、シールドある?どんな様子?


----------

■魔法

【名称】シールド(仮名称)

【属性】地水火風光闇

【コスト】使用時:魔力-10、1日維持:魔力-50

【現象】全ての属性を纏い、対象の不快となる全てを弾く結界を形成。


----------

これも、やっぱり大してコストがかからなくて便利そうだ。

効果の程は実際試さないとわからないな。しょうがない、これはぶっつけ本番で試そう。...なるべく弱めの攻撃から。

名前の項目の仮名称ってなんだろう?

仮名称を気にしていると、「名前の無い状態。命名可能状態」と表示された。

風魔法の方は表示すらされてなかったから、そっちも名前が無いのか。

歴代不死鳥は独自の魔法を使っていたけど、魔法は使えればよしとしていたワイルドさのせいで、名前を一切つけていなかったようだ。それに魔法も、全てイメージだけで毎回違ったようだし、名前を付ける気にはならなかったのかもしれない。

名前はとりあえずそのままでいいや。

後から、カッコイイのを付けよう。


防御はとりあえずOK。

今度は攻撃だが、此処は(おうち)だ。うっかり破壊とか、初攻撃魔法にありがちな展開は嫌なので、これもぶっつけ本番で。

どんな攻撃がいいか、考えておこう。


それじゃ、そろそろ行きますか。

上の穴目掛けて飛んでゆく。外ってどんな場所かな?森みたいだけど、わくわく。

文字通り、生まれて初めての外へ出発ー。

■修正

魔法に名前がない事について予告通り追記しました。たいした量ではありません。

言い回しなどは後日修正するかもしれません。

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