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不死鳥生活、はじめました(仮)  作者: 蒼ととら
〔1〕不死鳥の巣(仮)
11/16

10.鬼

※虫、虫グロ、獣グロ注意

『もう大丈夫そうだな』


一応、ステータス確認しとくべきかな?


----------

【種族】地鬼 (アルビノ)

【年齢】14歳 【性別】男

【名前】---

【レベル】5

  体力 206/206(+50)  魔力 212/212(+50)

  筋力 259(+50)  知力 15

  敏捷 221(+50)  幸運 5(+50)

  器用 20  精神力 10

【状態】正常 不死鳥の付加(残り19:57)

【スキル】 物理耐性(中) /身体強化(中) / 魔法(中)[地風]

【アビリティ】白の結界(未覚醒)

【品質】可

【可食】○ / 無毒

----------


涙は一滴で十分なところを2滴与えたせいか、「不死鳥の付加」っていうのがついている。+50って微妙だな。

品質は「可」に上がってる。まぁ、飢餓と衰弱を改善させただけで、やせ細った体は元に戻ったわけじゃないから「可」ってことかな?まぁ、食べるところなさそうだしね。食べないけど。

白い鬼はきょろきょろとあたりを見回し、何かを探しているようだ。


『飢餓も衰弱も脱したから、もう大丈夫だ。よかったな』


さらに、キョロキョロが早くなる。

何を探してるんだ?さっきまで美味しいがいっぱいだったシートを見てみる。


----------

すごい。もう辛くない。苦しくない。

さっきの美味しかった。何だったんだろう?

ごはんくれた。でも、何処にいるんだろう?

僕のこといじめない。やさしい。

あ、鳥だ。小さくて食べるところ少なそう。

誰が助けてくれたんだろう。お礼が言いたい。

----------


あぁ。まぁ、目の前の雛鳥が探している相手だとは思ってなくて、誰に助けられたのか分からず、相手を探していたのか。意識が朦朧としてる感じだったしな。

せっかく助けたんだ。飢餓と衰弱から脱したとはいえ、病み上がりだから、しっかり栄養を取る必要があるだろう。

俺の両脇に風の手を出して、影収納から残っていた美味芋虫3匹を取り出す。栄養価は猪よりいいから、こっちを渡そう。突然視界に現れた宙に浮かぶ半透明な腕と芋虫のセットに、目を丸くする鬼。

でもやっぱり、雛鳥な俺は視界に映っていないみたいだ。半透明な腕の方を凝視している。

側の手ごろな枝を手折り、鑑定して無害かどうか確認して、それを芋虫の頭部分に突き刺して、芋虫のぼりの状態にする。頭を貫かれ「ギュイギュイ」と耳障りな音を立ててもぞもぞと暴れるが、これで逃げられないだろう。

しかし、気持ち悪いわ。3匹もたなびいていると、3倍どころか10倍くらいの気持ち悪さだ。


『さっき食べさせたのと同じやつだ。栄養があるから、これでも食べて精力つけて、早く元気になれよ』


「あ、ありがとうございます」


副音声で「ぐぉぉ」と聞こえるのはきっと|鬼≪オーガ≫語だろう。おずおずと差し出された手に、芋虫を乗せる。手も汚いけど、天然物の野生児?魔物?だから問題ないだろう。

芋虫のぼりを受け取ると、大事そうに掲げて、俺、ではなくて、透明な腕の方に視線を向ける。

俺はこっち、お前の目の前で両手、いや、両翼をパタパタしてるのがそうなんだけど。やっぱり俺、認識されてねぇー。


「命を助けていただいた上、こんなに美味しい獲物までいただいて。とても感謝しています。いずれきっと、このご恩はお返しします、透明なお方」


うん。風の手が本体だと完全に思われちゃってるわ。

というか、雛鳥=取るに足らない存在として完全に除外されてる?...まぁ、いいか。


『飢え死にしないようにちゃんと獲物捕らないとダメだぞ』


「はい。頑張ります」


そろそろ放置しっぱなしの猪が気になる。もう血抜き終わったかな?

あ、その前に...


『あと、人里には降りないようにな。俺がお前を退治しなきゃらならなくなるからさ。出来れば人間と出会っても、向こうが攻撃しない限り攻撃を仕掛けないでくれたらありがたいんだけど』


俺の言葉にきょとんとした顔をする白い鬼。でも、何かに納得したのか、うんうんと頷く。


「はい。人間には絶対手を出しません」


『いや、やられそうならやり返していいからね。死んじゃだめだからね』


ひどい人間にやりたい放題やられる光景が幻視できて、慌てて付け加えておく。


「はい。もちろん助けていただいたこの命、無駄に使うような事はいたしません」


ならよし。

俺はグロい猪解体に戻ろう。

踵を返し、すぐそばの猪を吊るした場所に戻る。

斬りとばして放置していた猪の頭部を、風の手で回収。影収納にポイ。牙とか売れるかもしれないし、念の為ね。

吊るしていた猪の胴体はもう暴れていなかった。首部分からも、もう血はほとんど出ていない。血抜き終わりって事でいいのかな?

次は、内臓出して、皮を剥ぐんだよな。

なら、まず内蔵か。カエルの動画では特に言ってなかったが、確か内臓を気付つけると臭くなるんだよな。イノシシ猟のテレビを見ているとき、父さんがなぜか自慢げに話していたのを聞いた。

風魔法でお尻から刃を突き立て、喉元に向かってお腹に切れ目を入れていく。刃を入れ過ぎないように、力加減を間違えないように。冷静に、慎重に。...切れ目は入れれたけど、これ開けない。

うーん。股で主張する立派な物...うん。食えない食えない。

潰さないように、足と足の間の皮と一緒にちょっと大胆目に切ってみる。自分のじゃないけど、切り取るってヤな感じだ。

あ、これでいいのかな?グロイわ。

開けた場所から下に、胸部の方に、中を気付つけないように切ってみる。

うわー。開けた。グロイグロイ。吐かないけど、グロイ。

今度は、お尻の周辺。腸の終わり周辺の肉は、何かが染み付いていそうなので、腸にくっつけた状態で切除。合ってるのか全く分からない。そこをきっかけに中の者を出していく。潰さないように、切らないように。

うえぇ。

出せた。出せたけどどうしたらいいの?

ちょ、風の手で持ちきれない。もう1本手がいる。

どうしようどうしよう。

あ、もう1本出せばいいんじゃん。風の手3本で1つは大きめに変更して持つ係に、と。

全部きれいに出し終えた。あれだけ血が出た後なのに、お腹の中の物を出したら、風の手が血だらけだ。中も当然血だらけ。洗った方がいいのかな?とりあえず水魔法で血を流しておく。


ふぅ。と一息つく。まだ、皮を何とかしないといけない。


さっきからずっと気になっていることがある。

じーっと背中に突き刺さる視線。まぁ、俺に向いているわけじゃなくて、風の手の、且つ、その手に持っている物に突き刺さる視線。

振り返ると、風の結界に貼り付いてこちらを見ている白い鬼。

風の手を上へと動かすと、それに釣られるように顔ごと上に向く。下に下げると下に、右に持っていくと右に。

やばい。ジャーキーを前にした犬に見えてきた。背後に、ぶんぶんと空気を切る音が聞こえてきそうなほど勢いよく振る、体色と同じ白いしっぽの幻まで見えしてしまった。だらしなく半開きにされた口から、今にも涎が垂れそうになっている。


『これ、欲しいのか?』


うん。何ていうか、犬っぽくて可愛いな。

お腰につけた”きびだんご”ならぬ、引きずり出した”臓物”で御供(おとも)になったりしないかな?

...臓物じゃ無理か。


俺の声に、我に返ったのかはっとする鬼。


「あっ、いえ、その...」


自分の行動が恥ずかしくなったのかモジモジしだす。

元々燃やす予定だった臓物だ。勿体ないし、食べるならその方がいいだろう。


『手を出して』


結界内に招き入れる。俺の傍まで来ると、手に持っていた芋虫のぼりを地面につきたて、おずおずと差し出された手に臓物を置く。

手に置かれた臓物と俺(風の手)を、キラキラとした目をせわしなく交互に見て、「あ、あの、あの、」っと何かを言おうとしているが、遮る。


『傷みやすいからな。食っていいぞ』


グロイし、俺だと処分するしかないから。

そういうと、「ありがとうございます」という言葉と同時に、手の中の生の臓物に噛り付いた。

ぐちゃぐちゃと嫌な音がして、臓物をむさぼる鬼という、地獄の一場面ような、なんとも様になる、グロテスクで恐ろしい様に目を背ける。さすが鬼だ。骨と皮になっても、種族としての獰猛さを、そこはかとなく感じられる。

臓物の処理は良しとして、今度は皮を剥がないといけない。そんなことしたことないからなぁ。

とりあえず、お腹の部分から剥がせれないか、肉と皮の境目に風の手を添えて少し引きはがそうとしてみる。

あ、肉だけちぎれた。

うーん。やっぱり刃物で切りながら剥すのが正解なんだろうな。

とりあえずちぎれた肉は、鬼の手に追加してと。

刃で剥ぐなら、皮をきれいに、肉は残らないように、かな。

初皮剥ぎ体験の俺には無理難題だな。

とりあえず風の手の右手人差し指にあたる部分を刃物の形状にして、左風の手で皮を引っ張って剥しにかかる。

あ、早速失敗。丸く穴が開き、その部分の皮は肉に残っている。感覚のない腕で更に難易度が上がって予想以上の難しさだ。


--//皮剥いでるのかな?//

--//それ、やり方知ってる。//

--//皮剥ぐのできるよ。任せてー//


え?精霊って皮剥いだりできるの?まぁ、俺がやっても精霊がやっても同じ結果だろう。


...と思っていた時期が私にもありました。


お願いーと頼んでみると、闇の精霊と風の精霊、さらに水の精霊のタッグが、あっという間にきれいに皮を剥いでしまった。精霊さん方、有能です。

既に頭もないし、血もドバドバ出ない。内臓も処理済みの皮を剥ぐ作業は、それまでよりはグロさは、マシだった。いや、グロイけども。

自分で剥ぐこともあるかもしれないから参考に見ておこう、とは思っていたが、参考にできないほど素早くかつ丁寧な作業で、正直真似できる自信がない。

これからは、皮を剥ぐ作業は精霊に任せよう。

精霊達にお礼を言って、適当な大きさにぶつ切りにして、影収納にしまう。

後ろを振り向くと、白い体に赤い血のコントラストがホラーな白い鬼がいて、「ひっ」と悲鳴を上げそうになるのを何とかこらえた。まだいたのか。

水魔法で口や手、体に飛び散った血をぬぐってやる。完全に、犬に世話を焼いている気分だ。

もう、この鬼も臓物を生で食べれるまでに回復したし心配ないだろう。元気もかなりあるみたいだし。


『じゃあなー』


「あ...」


俺が人間だったら従魔契約(テイム)とかできたのかもしれないけど、俺鳥だし、やり方分からないからなぁ。また会った時に、一緒に遊んでくれたり、話し相手になってくれたりして、友達になれたらいいなぁ。

俺は、何かまだ言いたそうにしている鬼を後に、そのほかの食糧確保に向かった。



◆--◆--◆



岩塩がないか鑑定してみたところ、所要時間1日の場所にはあるらしい。今日は諦めよう。

お金が来たら、町で買ってきてもらった方が手っ取り早いかもしれない。

代わりに肉に合う香草を探すと、ニンジンの葉っぱみたいな形状で少し青がかった白っぽい緑-アンティークグリーン色の、バジルに似た味の香草を見つけた。何でバジルっぽい味がするか分かったかというと、味見したからだ。当然採取。半分は水魔法で、水分を奪って乾燥させておいた。

その他にもいろいろ探して必要なものをゲットした。鑑定は機械定期な対応さえ気を付ければ、ホントに有能過ぎて頼りになる。


そして現在、鑑定のナビで帰宅しようと飛んでいる。


ふと、目の前をフワフワしたものが横切った。それを目で追ってみると、淡いピンクの綿毛が、フワフワと風に乗って飛んでいた。でも、大きさがすごい。綿毛の部分だけで俺と同じくらいの大きさがある。その下にはそれと同じくらいの棒がつき、さらにその下には丸っこいワインレッドの種がついている。

なんか、この森はなんでも大きいのかな?と今更ながらに思う。精霊のおかげで豊かなおかげで植物も動物も大きいのかもしれない。

俺も早く大きくなりたい。

それにしても、あのフワフワ、気持ちよさそうだな。いっぱい集めたら何かに使えるかも?

綿毛の本体は何処かな?鑑定の結果、近い。

ということで、綿毛のあるところに向かってみる。

そこには、真っ赤な絨毯を敷き詰めたように、沢山の赤い花が咲き乱れる花畑が広がっていた。そして、アクセントとして所々に淡いピンクの綿毛が風に揺られている。

壮観な長めにほへーっと見とれてしまう。すごくきれいだった。すごくいい匂いだ。ちょっと青い桃のような、金木犀のような、でもきつ過ぎず風にふんわり優しく香る。

この匂いと情景に、猪解体で結構疲弊していた心が癒される。

しばらく眺めた後、花の1つに近寄ってみる。

その花は、俺がいくら小さいからといっても、どう小さく見積もろうとも、前世で世界最大と言われるラフレシアの大きさをゆうに超える、直径が今の俺20匹分くらいの大きさがある。

近くに来てしまうと、大きすぎて形がよくわからないが、遠目から見ていたときはデイジー、まぁ菊みたいな花っぽく見えた。タンポポよりも密集してる感じ。それが全部種になった綿毛は相当すごいだろう。

大きな赤い花を横目に、淡いピンク色のフワフワに近づいていく。その綿帽子は、中の種を隠すように淡いピンクのフワフワが球体に覆った真ん丸な毛玉だった。大きさは、さっきみた赤い花より一回りほど大きい直径のきれいな球体。飛びついて埋もれてみたいけど、さすがに飛んで行ってしまうだろう。

風の手で茎を支えて、風の刃で揺らさないように切る。それを慎重に影収納にしまう。魔法を使って物を掴んだり切ったりする細かい作業も大分慣れてきたな。

6本目の綿帽子を切り終えた時、山を駆ける風が通り過ぎた。


あっ

「ピッ」


切り取って持っていた綿帽子から、綿毛が風に乗って飛んでいく。それに釣られるように周りの綿帽子も一斉に綿毛をとばし、その風に乗って舞い上がった。

暖かな春の雪が、辺り一面の真っ赤な絨毯の上に広がった。時間が止まったかのようにゆっくりと、上に向かって降り注ぐ

再び、広がる幻想的な風景に目を奪われた。

こんなにたくさんの花なんて、テレビでしか見たことないし、さらにこんなにたくさんの綿毛が舞う光景なんて、テレビでも見たことがない。

だらしなく口を開けたまま、暖かな風にフワリフワリと揺られる綿毛を見ていた。


綿毛は、生まれたこの地に挨拶するように回り終えると、暖かな日差しに向かって消えてく。空は綿毛を吸い込み、その色を綿毛と同じ淡いピンク色に染め上げていった。


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