7話ー撃破と絶望
「万物行使?リク、何それ?」
「俺がこれまで一人で戦ってこれた理由。この能力がなければ死んでたってことは一回や二回じゃなかった」
俺はこの絶対反射と万物行使を幼い頃にある理由で使えるようになり、少しずつ戦いに身を投じてきた。
そんな中でも万物行使は命の危険に晒された時以外は使わないようにしていた。
なぜならこの力は自分の目から見ても明らかに異質だからだ。万物行使を絶対反射と組み合わせて使えば、正直簡単には負ける気がしない。
だからこそ、万物行使は不用意に使わない。使いすぎれば機械兵士に狙われる可能性が高くなるからだ。
討伐者が強力な能力を手に入れる。そしてどんどん機械兵士を倒して行くと、機械兵士一体の討伐任務のはずだったのに気づくと機械兵士に囲まれ殺される、という事も少なくない。
このように機械兵士達も討伐者の情報をどこからか手に入れ、強力な能力を持つ人を減らすための作戦を立てているのだ。
「そう。じゃあこれがリクの本気ってことなんだね」
「そういうこと。絶対反射と万物行使。この二つの能力がある限り俺は負けない! だから安心して見てて」
「うん。信じてるから」
ゆずとの会話を終え、機械兵士の様子を確認する。脳筋機械兵士は先程までと変わらず地面にひれ伏している。その仲間のチャラ男機械兵士とオバサン機械兵士は動かずじっとこちらを見ている。脳筋機械兵士との約束をしっかり守っているようだ。
「‥‥‥‥それじゃあ、お前からトドメと行こうか、脳筋野郎!」
「くそがっ。‥‥‥‥この程度で俺が倒せると思うなよ!」
重力によって地面にひれ伏していた脳筋機械兵士が少しずつ体を起こし、遂には立ち上がった。
そしてその姿が消えた。
「俺の最大の攻撃、落下打撃。これで死ねっ、人間!」
俺の頭上約十メートルに現れた脳筋機械兵士は重力を利用して真っ直ぐ自由落下して来る。それに気付いた俺は重力制御で重力を強くしていたのをやめた。
「最大の攻撃か‥‥‥‥なら俺はその攻撃を真っ向から打ち破ってやろう!」
「出来るもんならやってみやがれぇぇ!」
脳筋機械兵士は拳を振りかぶり、徐々に俺に向かって落ちてくる。その向かってくる拳に俺は正面から自分の拳を振り上げ、ぶつける。
拳と拳が重なり合ったまま一瞬膠着状態となる。
「砕けろぉぉお!」
「やっぱりお前は脳筋だな。‥‥‥‥万物行使に気を取られすぎなんだよ」
「‥‥‥‥はっ!しまった!」
「もうおせーよ。‥‥‥‥絶対反射!」
俺の放った拳は脳筋機械兵士の力を吸収もせずに、ただ単純にエネルギーをそっくりそのまま反射し、多大なダメージを与える。脳筋機械兵士は自分の力によって死ぬのだ。
「ぐ、ぐぁぁぁあっっ!」
断末魔の叫びを上げ、脳筋機械兵士機械兵士は爆発し、砕け散る。
よしっ!まずは一体。これなら何とかなりそうだ。この調子で残り二体もさっさと片付けてしまおう。
‥‥‥‥しかしこれは明らかに俺のうぬぼれだった。自分の力を過信して大切なことを忘れてしまっていた。
俺が振り返ると、俺にとってあまりにも、あまりにも衝撃的すぎる光景が視界に入った。
この戦いの目的は機械兵士を倒すことではなく、ゆずを守ることだということを忘れてしまっていたのだ。
俺は目を離してしまっていた。自分が守るべき人が弱っていたのに。そこには野放しにされていた大尉クラスの機械兵士が二体もいたのに。
それでも俺はゆずから目を離してしまった。
だからこそこんな悲劇が起きてしまった。
「ふふふ。気を取られすぎなのはあなたの方だったようですね。まずは一人、始末完了ですわ」
「そだね。あいつが囮になってくれたからこの化け物男の意識を逸らすことが出来たよー。まぁ、囮になろうとした訳じゃないだろうケドね。‥‥‥‥何はともあれこれで後はお前を殺せば任務完了ってことネ、化け物男君」
俺の視界の先にはチャラ男機械兵士の神機であろう槍に胸を貫かれているゆずの姿があった。
「えっ‥‥‥‥ゆ‥‥‥‥‥‥‥‥ゆず?」
最後まで読んでくれてありがとうございます!
また次回も見に来てください。