表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/112

適材適所

この回に一回だけ主人公がキーボードを使わず地声を漏らします。ちょこっとだけ探してみて下さい。

『――だいぶ片付いたかな?』


 非武装市民を一か所に集め、俺は降参するよう刀を構える。


『もちろんこちらの配下に下るよね?』

「は、はい! もちろんです!」


 まあ流石に無抵抗の人を攻撃するほど落ちぶれてはいませんし。自分の周囲は落ち着いたとはいえ、現状音響石による通信も混雑しているようで、様々な情報が飛び交っている。


「“こちら西側スナイパーを抹消デリート完了! 他の隊の救援に向かう!”」

「“こちら南側、敵のTMと遭遇! クラスB、ミノタウロスです!”」

「“こちら北、味方が三名抹消デリート、依然銃撃を受け続けています!”」


 今俺がいるのが中央区、となると北側かTMが出ている南側に加勢に行くべきか……


『“……こちら中央区制圧を完了。今から南区に――”』

「南区は我らが行くわ!!」


 家を突き破って表れたのは、あの有名な《暗黒騎士ゴウ》withベヒモス。


『……ミノタウロスいけるのか?』

「我を舐めるでないわ!」


 そういうとゴウは右手を天に掲げ、詠唱を始める。


「――【天譴召喚てんけんしょうかん】!!」


 持つのは到底不可能なほどの巨大な剣が、空に召喚される――ってか魔法騎士の時点で唯の脳筋バカって訳ではないことを忘れていた。


「では、行ってくるとするか!!」


 ゴウが掲げた右手をぐっとつかむと、それと連動するかのように剣も捕まれたようにグッと微動する。


「フハハハハハハ――――――――ッ!!」


 そのまま右手を振りまわすと連動して剣も渦を巻き、ゴウは建築物をなぎ倒しながら南の方へと進軍していった。


『……あいつ結構強かったんだ』


 名前はネタ臭いくせに。



     ◆ ◆ ◆



『“北の方の状況は?”』

「“一進後退といったところだ!”」


 遠距離相手に距離を取ってしまうと、当たり前のことだが近接が戦局を握る事は不可能になる。一方的に遠距離の物陰から銃弾を撃ち込まれ、こちらも壁に身を隠してそれに付き合わされるのがオチだ。


「…………」


 ワイバーンを呼ぶべきか? いや、そもそもあの子に手綱を渡したっきりで所在も分からないか。


『“今そっちに向かっている! 戦況を維持していてくれ!”』

「“分かった! あんたが来るなら百人力だ!”」


 とはいえどうしたものか――と思っていると、足もと近くにパキュンという音とともに弾痕が残される。


「げっ!?」


 俺はすぐさま物陰に隠れると、音のした方と弾痕から敵の位置を推理し始める。


『……やはり外壁に隠れているか。というかヘッドショット喰らわなくてよかった……』


 流石にスナイパーの倍率だとこっちの体力の五分の一持って行かれる可能性が……


『……仕方ない、遠距離も対応できるあいつを呼び出すしかないか』


 俺は渋々自分のTMを呼び出すことに。俺は自分のTPテクニカルポイントを確認しながら、呼び出し用の道具をステータスボードから呼び出す――空間にボードを呼び出すなんて、ゲームだからこそできる芸当だな。

 とまあこちらからはあまり呼び出したくはないのだが、敵陣を蹂躙するにはこいつしかいない。俺は魔法陣が縫い付けられた手袋を右手にはめた。


『――【呼出コール召喚サモン】』


 自分の職業が魔法職でないから、一から魔法を構築し詠唱するなんて真似はできない。右手にはめる様な専用の魔導具が無ければ、俺達のような者は魔法の一つも使えない。


『……やっと来たか』


 数秒の応答時間があった後、目の前にラストが再召喚される。


「お呼びしましたかマスター?」

『ああ、お前ならいけるだろ』


 そう言って俺は首をクイ、と城壁の方へと向ける。


『目的は撹乱かくらん、物陰に隠れているスナイパーをあぶり出せればいい』

「はい♪ ではマスター……?」


 来たよ。こちらからお願いすると必ず足元見てきやがる。その顔を赤らめてもじもじするのを止めなさい。

「今回は――」

『い、今は時間がないんだよ!』

「ですが、私としてはご褒美無しでは――」

『家に帰ったらいくらでも聞いてやるから!』


 苦し紛れにそういうと、ラストは笑みを浮かべて「では、家でたっぷりと……」とだけ呟いて飛び立って行く。


 あっ……まずいこと口走っちゃった?


「…………」


 俺の額を、一筋の汗が垂れ落ちてゆく。


『……ちょっと待て! まだ話は――』

「――【刺突心崩塵ハートキルスティンガー】!!」


 目の前で呼び出された数多の棘が、一斉に城壁に突き刺さる。もちろん直に突き刺さったものはそのダメージ+猛毒のスリップダメージでLPを一挙に削られ、次々と抹消デリートされていく――


『嘘だろそんな贅沢ぜいたくにスキル使っちゃう?』


 だって相手はせいぜい良くてレベル70代だよ? それに対しレベル150の人がゴキゲンで笑いながら上級呪文スペルブチかましているんですけど。


「アハハハハハハッ! やっと主様が体をお許しになられて下さったわぁー!」


 そう言いながら追加詠唱で棘を破裂させないでください外壁が粉々になってしまいます。


「家に帰ったら……んっ………タップリ※※ゲーム内倫理協定により表示不可※※を※※ゲーム内倫理協定により表示不可※※に注いでいただきましょう……フフッ♪」


『……やべぇ、やべぇよ』


 俺はこの時初めて、自分の貞操の危機を悟ったのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ