尋常じゃない戦い
「――で、どうするつもりですか?」
壊滅させた砦跡地に、ドラゴンが着地する。俺は負傷したベスを背負いながら、ため息をつきながら問いかけるシロと目を合わせている。
『決まっている。キャストラインに追い打ちをかけ、この戦争中に完全に叩き潰す』
「ですが現実問題としてベスさんが負傷している今、進軍は踏みとどまらざるを得ません」
『だったら一人で潰してくる。それならいいだろう?』
邪魔立てするなら味方ですら斬るつもりで、俺は腰元の刃をちらつかせつつシロに向かってそう言った。
シロはそんな俺の気概を感じ取ったのか、ため息をついて改めて作戦を練り直すことにした。
『ベスは本国に帰す。俺はここに残って、キャストラインを完膚なきまでに潰す』
「編成はどうしましょうか。流石にベスさんが負傷した今、本国に戻そうとしたところで護衛を付けなければなりませんから」
『ここから先は進軍戦だ。キリエはベスと共に帰還しろ』
「……分かったわ」
キリエは心配そうに俺を見ているが、俺は別に大丈夫だ。
『……というか、俺とシロさん以外は全員帰還しろ』
「えぇっ!?」
「そ、それがしたちもであるか!?」
『ああ。何か問題でも?』
俺に異を唱えたのはグスタフだった。
「流石のジョージ殿とシロ殿でも、相手はキャストライン、七つの大罪がつくとはいえたった二人で一筋縄でいく相手では――」
『黙れ』
俺は抜刀した刀の切っ先をグスタフに向け、威圧と共に言葉を浴びせる。
『……ここから先の戦いは、殲滅し引き裂く剱でもベヨシュタットでもない、個人の戦いだ』
俺の言葉の裏に隠された意図を察したのか、グスタフはそれ以上は何も言わずにいた。
「…………」
「っ、ジョージさん!」
俺が刀を収めたところで、今度はイスカが話しかける。
「一つだけ、約束してください」
『……何をだ』
「勝っても負けても関係ないです、絶対に帰って来て下さい」
『……その約束は少し無理がある』
「どうしてです!?」
シロは既に支度を開始しており、俺はラストに刀を預けながらこういった。
『……俺とシロさんに、敗北は無いからだ』
◆ ◆ ◆
四人が撤退するのを見送り終えたところで、俺とシロは改めて向き合って話始める。
「……あの人たちを帰すということは、ここから先は普通の戦いではなくなると?」
『……そうなるな』
どんな手を使ってでも叩きのめす。それすなわち常人から見れば残虐だ、卑怯だと呼ばれるような戦い方をすることになる。
「仕方ありません、ボクもあの武器を呼び出しますか」
シロはそう言って魔法陣が刻まれた手袋をはめ、武器の召喚に取り掛かる。
「――【呼出・召喚武器】」
シロが呼び出したのは、柄の両端に刃が付いた両刃剣。
――《緋蒼剣》と呼ばれるレアリティレベル120のその武器は、一方は緋く輝き、一方は蒼く輝いている。
「ここから先は《殲滅し引き裂く剱》としてではなく、《無礼奴》として戦う事になる――でよろしいですか?」
『……懐かしい名だ』
「名目上はベスさんの敵討ちということで……ああ、つらつらと言い訳ばかり考えるのは面倒です。早く潰しましょうか」
『ああ』
シロはそう言ってラースの背中へと飛び乗り、俺とラストもそれに続いてラースに騎乗し、敵の首都であるドラムマグルナへと向かう事に。
「まさか国を落とすタイムアタックをすることになるとは、面白くなってきました」
『……ラスト、籠釣瓶の召喚をしておけ』
「っ! で、ですが主様――」
『封印とかしている場合じゃなくなったんだよ。たった今な……』




