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刀王

ここから《蒼侍》、湊川ジョージの一人称視点となります。

 ――時はさかのぼって一年半前のこと。蒼侍もとい引きこもりの青年であった湊川ジョージは、大規模オンラインゲーム「キングダム・ルール」をサービス開始と同時にプレイし、あまりにもリアリティのあるゲームから三日三晩の徹夜をし、気がつけば昏倒状態に陥っていた。

 目が覚めれば目の前に広がるはゲーム内の世界。そして自分が身に着けているのはゲーム内初期装備。要約するとゲーム内へと意識が飛んでしまった。

 そしてゲームの管理人である《システマ》の指示の元、湊川ジョージはゲームクリアの為に天下統一の道を歩んでいくこととなった――



     ◆ ◆ ◆



『――とはいえ、道のりは長いよねー』


 ゲーム内では一年半という時間が経過しているが、現実世界はどうなっているのだろうか――なんて考えもとうに消え失せ、俺はゲーム内での生活にどっぷりとつかってしまっていた。


「――面を上げよ!」


 この俺、湊川ジョージは玉座の間にてかぶっていたフードを外し、剣王の前にて垂れていた頭を挙げているところである。隣には先ほどまで重傷を負っていた剣士も共に頭を垂れていて、今回の戦果の報告にあたっていた。


「今回ストラード跡地にて敵六名と接敵、銃王配下の突撃部隊トルーパーと判明。こちらの被害、九名の騎士ナイトが敵の手によって抹消デリート。しかし《蒼侍》の手によって、敵対存在を全て抹消デリートし終えました」


「ご苦労だった……流石は《蒼侍》」

『ご謙遜を、剣王』


 「流石は」って剣王あんたNPCだから俺達の限界のレベル120を越えてのレベル150じゃん! そんな奴が流石って言っても皮肉にしか聞こえねぇよ!


「ん? どうかしたか?」

『いえ、何も……』


 今俺が仕えているのは剣王、そして剣王が統治する首都ベヨシュタットだ。剣王とは俺の目の前にいる無精ひげを蓄えた筋肉マックスの大剣使い。その一振りはまともにくらえばレベル80代の輩を一撃で屠り去ることができるほどだ。


「それにしても、蒼侍もとうとうレベル98か。そろそろ俺も隠居すべきかねー」

『いえいえそんな、貴方が統治しないのならば誰がベヨシュタットを治められるのですか』

「はっはっは!」


 NPCとはいえ150レベルの者が引退してもらうと困る。スキル構築ビルド次第では人間おれたちでも勝てるとはいえ、王相手だとレベルカンストかつ最高峰装備が前提条件だからな……。


「そういえば、そろそろお前に新たな称号を与えようと思ってな」

『俺に……ですか?』

「そうだ」


 やっとか。剣士フェンサーから育て続けて侍に、そして剣王統治下にて刀を極めしものに与えられる称号。すなわち――


「《刀王とうおう》の座を、お前にくれてやろう」

「と、《刀王》!?」


 流石に隣の剣士もその意味を知っているのか、俺に対し畏敬のまなざしを向けてくる。

 “王”の名がつく称号は、六つの王とは他にそれぞれの武器種を極めた者にも与えられる。そしてそれぞれの武器に合わせた特殊ステータスも追加されたり、地位も他の者とは比べ物にならないほどの特権を与えられたりと、色々と得をするのた。


「ではこれからは《刀王》と名乗り、我が右腕として存分に武勲を重ねよ」

『ハッ!』


 っし! これで特殊スキル《抜刀法・神滅式かみごろし》が使えるようになった! これさえあれば、抜刀がゼロ秒でできるようになるという刀使いにとってチートに近い技が使えるようになる!

 俺は心の中でガッツポーズをしながら、その場を離れていくことにした。



     ◆ ◆ ◆



「……お前、本当にすごいよな」

『へ?』


 剣王住まう城の外にて、一緒に帰還した勇士が突然話しかけてくる。


「俺とお前、確か同期に入団したはずだよな。んでもって俺はまだ一勇士でしかないのに対し、お前は今や刀王だもんなぁ」

『まっ、事前の情報量が違うからね』

「それもそうかもしれねぇけど……」


 とはいえこのゲームに入ってから新しく導入されたコンテンツ(主にTM)とか、敵AIのアルゴリズム変更(より生物らしい動きや考えを持つようになった)のせいで、事前の情報なんてほとんど役に立ってないけどねー。


「それにほら。あんたには最強の美人嫁がいんだろ? ……あれ? 人って呼んでいいのか……?」

『あっ、あれはノーカンでしょ!? だって勝手についてきて――』

「でもいいじゃん。あれだけ惚れられてくっついてくるなんて、羨ましいぜ」


 ……ほんと、ロールバックできるならあの原因となったクエストだけはいかないようにする。

 絶対に。


「まあまあ、ここ数日の局地戦ローカルクエストも終わった事だし、俺も一旦家に帰るとするか」

『では、また』

「おう、またな蒼侍。いや、刀王か」


 《刀王》と呼ばれると自然とニヤついてしまうが、その顔を見られたくなかった俺は、即座にフードを被ってその場を去っていった。



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