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主の黄昏

「ふぁあ……ん」


 日が明ける前に目を覚ます。今のところ周りでも異変はないようだ。

 寒さは凌げたが、まさかこいつが一人分の毛布しか持ってこない策士だったとは……。


『そもそも、俺がきちんと支度をしなかったのもミスだが』

「すぅ……すぅ……」


 ラストがこうして静かに寝息をたてているということは、夜間に魔法陣に引っかかった者はいないようだ。

 それにしても、こうして静かに寝ている分には美人なのだが。


「むにゃ……あ、主様、そんなにがっつかなくても、ラストは……準備できていますから……」


 寝ているのにビクンビクンしながら怪しい言葉を吐かないでもらいたい。

 ともかく、このまま寝てもらっていては困る。


『……おい、起きろ』

「うぅ……もう少しだけ……」

『起きろ!!』

「うひゃい!?」


 全く、本当に大丈夫か?


「主様!? 何かあったのですか!?」

『何かあったらお前の魔法陣センサーが探知するんじゃなかったのか?』

「ええと……何も探知しなかったようでなによりです」

『ならいいが……とにかく目を覚ませ。二日目だ』


 朝になって続々と自国領から煙が上がる。恐らくキャンプで自炊しているのだろう。


『俺達も何か食っておかないと』

「でしたら、パンと干し肉を少しお持ちしました」


 ラストは薪に火をつけ、さっそうと料理を始める。手際の良さは賞賛に値するが、後は俺への対応さえ改善すれば――


「主様、はい」

『すまない』


 魔法のおかげか料理はすぐに出来上がり、俺へと渡される。

 まああれこれ言ったが、贅沢の言い過ぎか。


『しばらくは地味な仕事になると思うが、耐えてくれ』

「主様と一緒にいられるのであれば、なにも文句はありませんわ」


 もともとラストと二人で過ごす時間が少ないと考えたからこんなことをしている訳だが……冷静に考えるとNPCのご機嫌取りか。


『ま、NPCに見えないからこうしているのだがな』

「……?」

『気にするな。どうでもいい独り言だ』


 ラストはきょとんとしたままだったが、俺は朝食を手早く済ませて外へと出る。


「…………」


 野盗すら見えず、か。相変わらず荒野だけが広がっている。


『……退屈だな』

「ええ。そのようですわ」


 俺はここで周りを見回し、ある程度離れた状況だということを確認する。


『……ラスト』

「はい、なんでしょうか?」


 俺はそこから先は無言で腰元の黒刀を抜き、刀を抜いた後にラストにこう言った。


『久々に、手合わせをしようか』

「えっ!? で、ですが主様、お怪我をなされては――」

『ククク、俺が怪我、か。面白い。だったら俺に少しでも負わせることが出来たら、お前の言う事を一つ聞いてやろう』


 俺の言葉に対し、ラストは少しだけ以前のボスモードに近い口調へと変わる。


「……それは楽しそうですね」


 半径五十メートルを戦場バトルフィールドとして、俺とラストは互いに相対する。


『これで少しは退屈をしのげるだろう』

「ええ。主様を満足させられるよう、このラスト、久方ぶりに本気を出させていただきますわ」

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