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最後の日常

『うーむ、何を受けるべきか……』


 ラストを連れていくとなると、それなりに高難易度のクエストを受けた方が、やりがいが無くなってしまうからな。

 それにしてもクエストを受けられる依頼所内で、俺達は随分と目立ってしまう。ここでは常にクエストを受けようとする者や、ギルドの団体でにぎわっている。そんな中で刀王が《七つの大罪セブンス・シン》を引き連れるとは、一体国で何が起こっているのかなどと思ってしまうのも無理はない。


「主様、羽虫がチラチラと――」

『少し静かにしていろ。すぐに出ていく……これだな』


 俺は壁に貼り付けられている依頼書の内の一つを手に取り、受付の女性へと渡して依頼を受理するように言う。

 マシンバラ国境警備の支援。任期は一週間ほど。恐らくこれから国境付近で非公式の小競り合いが起き始めるだろう。互いに偵察隊を送り出すだろう。それを水際で制御する任務に就くことにした。

 だが受付の女性は、俺の称号を踏まえた上でこう言ってきた。


「出過ぎたマネかもしれませんが、刀王とあろうお方が警備任務などという任務を受けるのは――」

『いいや、それでいい。現地にいることで得る情報もある』

「かしこまりました」


 受け付けが任務手続きを行っている間、俺はじっと受付所で待つ。後ろからは相変わらず憶測が飛び交っているが、何一つ俺の目的を当てることなどできていない。


「もしかしたら、国境で何か起きるのか?」

「だがそれにしてはクエストランクは高くなかったが……刀王ともなればクエストランクがAランク以上になるのはおかしくもないぞ」

「…………」


 受付には情報収集と言ったが、俺は単にラストとの気晴らしに言っているつもりなのだが。


「……はい、手続き終了です。御気をつけて」

『ありがとう……行くぞ、ラスト』

「はい! 主様!」


 その場に当たらない憶測の空気を残しながら、俺とラストはマシンバラ国境付近へとワイバーンで飛び立っていった。



          ◆◆◆



『――ここか』


 一度は見た事のある風景。道路はこちら側で途切れており、向こう側にはひたすらに荒野が広がっている。

 関所など無く、周りには俺と同じように警備任務に就いているものがちらほらと見える。


『さて、野宿でもするか』


 俺は適当に火を起こそうとしたが――


「主様がそうおっしゃると思ってこのラスト、色々と準備してまいりました!」


 どうやらラストは俺の心でも読んでいるのか、色々と準備して来たらしい。


「まずは――【大地防衛壁グランドウォール初級プチ】!」


 ラストは魔法で簡単な岩宿を作り出し、俺を夜風に当たらないようにする。そしてそこからは空間に収納しておいたサバイバルキットを取り出し、簡単な焚き火を作り出した。


「これで、暖かく眠れますわ」

『……流石だと褒めておこう』

「ありがとうございます!」


 さて、防寒用の布が一枚しか見当たらないのはツッコまないとしておいて、俺は岩宿から外に出て様子をうかがう。


『……それにしても、よく偽装できているな』


 元々の魔法が岩で対象を覆う魔法だから上手くいったのか?


『……今のところは何もない、か』


 一日目は何もない、か。

 念の為にラストにも見てもらったが、何も引っかからなかったようだ。


『そろそろ夜も遅い。魔法陣だけ仕掛けて寝るか』

「はい、主様。今宵は私が体を温めて差し上げますわ♪」


 それはいいから、ね? 温まるんでしょ? 服を脱ぎながら詰め寄らないで! 色んな意味で怖いから!


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