気晴らし
「主様、ご無事でしたか?」
『特に何もない。安心しろ』
あの後俺は一旦スズハと別れることにした。スズハは今回顔を見に来ただけのようで、またデューカーの方へと戻って報告をするのだそうだ。
俺は家に戻ってコートを脱ぐと、おやつに丁度いい焼き菓子を頬張りながら、今後の事に思考を巡らせていた。
「ああ、主様の威光にはどうしてこう羽虫がたかるのでしょうか……」
『俺はそういうつもりはないのだがな』
「仕方ありません、主様は魅力的すぎますから」
とはいえまさか政略結婚の話になるとは……剣王の性格からしてそういうことを持ち込むようには思えないのだが……。
『……まさか、デューカーとの会合で何かあったのか?』
「はぁー、主様……」
『だから、さっきからお前は何なんだ』
ラストは俺が家へと戻るなりべったりしっぱなしだ。今までもこう言うことが無かったというわけではないが、それでも今までにない程に椅子の後ろから引っ付きっぱなしで俺が動こうにも動けない。
『一体どうしたんだ、ラスト』
「はぁ……」
俺が仕方なく問いかけると、ラストは一つだけ大きくため息をついて俺に対する不満を打ち明ける。
「最近、主様が構ってくれないのです」
『仕方なかっただろ? 今まで国の体制を立て直すのに忙しかったうえに、今度は国の連合の話まで来ているからな』
「国の連合……?」
しまった、口が滑った……だがいずれは知ることか。
俺はできるだけスズハに触れないように、今後の事について軽く説明をした。
「――つまりマシンバラを相手にベヨシュタットとデューカー、そしてブラックアートで同盟を組んで倒そうと」
『そういうことだ。キャストラインの時とは比べ物にならないほどの大規模戦闘が起きるだろう』
そして運が良ければそのまま超大規模戦争へと持ち込むこともできるかもしれない。というより、シロさん辺りが仕組みそうな気がする。
『もちろん、お前にも働いてもらう。期待しているぞ』
「それは……もちろんのことでございますが……」
……まあ、最近はこいつに全然かまってやれなかったのもあるかもしれないが。
『……仕方ない』
俺はすっと立ち上がると、壁にかけていたタイラントコートを着なおして刀を手に取る。
『ラスト』
「はい」
『少し気晴らしに、外のクエストを受けに行くとしようか』
「……はい!」
これで少しは機嫌をよくしてくれるならいいが。




