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正反対

『――お前はどうしてここにいる』

「どうしてって、刀王さんに、ひいては未来の旦那様に会いに来たに決まっているじゃないですかー」


 旦那様って……おいおい、頭が痛くなるから止めてもらえないか。加えてそんな言葉をラストの前で吐いてみろ、首都が壊滅しかねん。

 それにしてもなんだこいつは。格闘家であるはずがミニスカートに金髪ギャルのビッチっぽい見た目とか、俺とはまるで正反対の立ち位置にいるはずの人間なのだが……一番に言えるのはそもそもこういったオンラインゲームをするようには見えない。

 っと、話題が逸れる所だった。今俺と目の前の少女は首都から外へとでたガルマス高原にいる。ここは首都近くにしては敵のレベルが2から10と低レベル帯なものだが、時折Lv60の高原トロールが徘徊することから育成にはあまり向かない地域であり、人もめったに通らないという俺にとっては都合のいい場所だ。


「それにしても刀王さんって意外とカッコいいんですねー。それともフードを被っているせいで顔があんまり見えないから? でも雰囲気がイイ感じなんでやっぱりカッコいいのかも」


 フードを外せば冴えない青年が出てくるだけだぞ。止めておけ。


『そんなことより、お前の名前を聞いていなかったな』

「そんな事って……スズが褒めているのにスルーですか」


 目の前の少女は俺のそっけない対応に口をとがらせながらも、改めて自己紹介を始めた。


「この度は初めましてー、スズハっていいまーす。気軽にスズって呼んでくださーい。オマケで闘王やってまーす」

『オマケ感覚で王をやっているのか……』

「だってスズは格ゲーをするのが本業だしー」


 どうやら話を聞く限りだと元々はゲームセンターに入り浸っていたらしく、このゲームを始めたのはこのゲームの闘士ファイターという職業が格闘ゲームの操作に近いからだそうだ。

 それでゲームにのめり込んでいたところで、いつの間にかこの世界に来ていたようだ。


「刀王さんってゲームとか好きなんですか?」

『まあ、オンラインゲームが主体だがな』

「そうなんですかー。スズはこのゲームがオンラインゲーム? 始めてなんですよー」


 ふむ、その割には闘王という王の座についているのだからそれなりにゲームが上手いのだろう。

 もしくは、このスズとかいう少女が格闘ゲームに天才的な才能を持っているのか。

 まあそれはいいとして、次の質問だ。


『……この婚約はどっちから持ち出してきたんだ』

「この婚約って……ああ、それはデューカー側の方から、ウチらの方からの提言ですよー」

『何故だ? 剣王と拳王は犬猿の仲だと聞いているが』

「それがそうも言ってられなくなっちゃったんですよー」

 スズハはまるで取り留めのない世間話をするかのように右手を振りながら、今回の経緯について話を始めた。


「マシンバラってあるじゃないですかー」

『ああ』

「あの国がスズたちの知らない間に随分と大きくなっちゃったみたいで、今だとベヨシュタットの次に国土が広い国になったみたいなんですよー」

『それは……マズいな』


 俺の知らない間にそんな事になっていたとは。


「それでデューカーとベヨシュタットの間で一時停戦をして、一緒にマシンバラを叩こうって話になったんですよー」

『待て、ブラックアートはどうなっている?』

「ブラックアート?」

『魔法を司る国だ。ベヨシュタットは手を組んでいる筈』

「うーん、スズはそこまで話を聞いていないんですけどー、その話だと三国でマシンバラを叩くっぽいですねー」


 ぽいじゃないくて潰すつもりなのだろう。これは復帰しただけで情報をかき集めるのを忘れていた俺の落ち度になる。

 戻り次第、すぐにギルドで情報を集めねば。


『それで犬猿の仲であることから、千切れにくい鎖をつくるのが目的だ、と』

「そういう事なの? スズは特に拳王様から何も言われてないから分かんなーい」


 そう言って両手を頭の後ろにやりながら、スズハは俺の方じゃなくある一点の方を向いている。


『……トロールか』


 噂をすれば何とやら。Lv62の高原トロールが、遠くから俺達二人の方をじっと見つめている。どうやら狙いを定めている様だ。

 その後トロールは両肩に生えた苔を揺らしながら、のっしのっしとこちらの方へと近づいてくる。


『やるか……』


 俺は腰元の《籠釣瓶カゴツルベ》に手を添えたが――


「あー、スズがササッと片づけてきますからー」


 スズハはなんと武器も何も持たず、素手でタタタッとトロールの方へと駆け寄っていく。


『おい、流石に籠手喰らいつけた方が――』

「――錬気拳れんきけん!!」


 独特の構えからまっすぐと右腕を打ち抜けば、風が空を切って一直線にトロールの腹を打ち抜いていく。


「ゴ、ギァ……」


 そしてそのまま必殺の一撃の下で、高原トロールは草原の上に大きな音を立てて倒れた。


「……ねっ? 楽勝だったでしょ?」

『……少なくとも、王か』


 パンチラした事についてつっこんだらあれが飛んでくるんだろうなぁ……。



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