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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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鳥籠へ匣

作者: 宮野くん

書きかけで投稿しちゃいました。随時更新していきます

針を刻む鈍い音、静寂を切り裂く獣の遠吠え、夜空に映えた小池を鯉が跳ねた、ぴちゃりという水音。

目を閉じた私の世界はそれだけだった。やがて遠吠えは離れ、水が奏でた残響は姿を消す。私には、静寂を後押しするような時計の規律的な音色だけが残った。


――その他の全ては、まるで奪われてしまったかのようで……。


闇夜に浮かぶ深緑の幻想。私の庭園、全てを犠牲にした果てに辿り着いた終焉の淵。永久に降り積もるは死を模した暗き闇と、生命感的精神を酷く蝕む、生き物まるで感じさせない静けさは、破瓜の痛みにも似た永久の調べとも思えている。その静寂から来る耳鳴りに耳を塞いでも意味などなく、長い年月の中で、それは私を侵食する絶望なのだととうに気がついていた。


憐れみを孕んだ蟲達の声が聞こえてくる。しかし彼らに憐憫を垂らす術などなく、そしてこれは私の自業自得に他ならない。知っている、気づいている……。過去はまだ暗闇を照らしていた月も背徳の闇に呑まれ、花は深淵の破滅に朽ちてそうして溶ける。


この世界は果てなくあり、そして永遠に時を刻む。そこに舞い込むのは苦痛を纏った色のない風。慈悲など忘れた統率者の無慈悲な審判を連想させる夜の静寂。暗い匣に閉じ込められたような感覚。事実としてこれはそうなのかもしれない。匣だ。淵までいけば、反対側へと飛ばされるような。四角く外界から切り離された世界で、永遠に反響し続ける私という現象が在るようなイメージで、いつからかわからないけれど、遥か昔から私は此処に在る。そうして孤独が私を蝕んでいる。静寂が耳を壊して、暗闇が目を潰して、無味無臭が神経を狂わせて、私以外に無い体温がこの身を焦がして、永遠が重石になって五体全部にのしかかっている。



この身体が滅ぼされるような刑罰の中で――……。


……――誰かを、待ってた。

貴方を、待っている。全てを賭して手に入れたかった、そしてそれでも共に生くことが出来なかった貴方を、私は待っていた。



会いたいと強く願うことだけを一体幾ら続けてきただろうか。何年かも知れないし、何千年かも知れない。我儘かも知れない理不尽かも知れない自分勝手かもしれない独りよがりかも知れない。けれど、私はそれを願った。永遠を思わせる死の淵のなかで、もしかしたら私は、初めて願いを口に出したのかもしれない。


「――……、私を連れ出して」


爛れた日々の中で、何も残すことはなくただ私を苦しめるだけの時の中で、壊れた世界が光る。眩くて、目が潰れるかと思うほどの光は、しかし痛みを伴わずただ柔らかく、まるでふいに包まれたかのように、美しく光りだした。


――差し込む光が憂いを帯びた灰となって、降り積もり何かを作る。忘れていた記憶さえも蘇らせてくれるのかもしれないなんて、思うぐらいに鮮明に――



見つけた、歪んだ光。

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