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TRUMPⅤ  作者: 四季 華
第2章
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「リアル…」

 かつて春一を追い込み、妖怪世界を我が物にしようとしていた妖怪、リアル。春一に捕えられ、今は枢要院の牢の中にいる彼が、どうして春一に挑戦状を送れたのか、それはわからない。しかし、春一にとってそんなことはどうでもよかった。リアルが自分に対して挑戦状を叩きつけた。それだけで、十分血流は速くなる。

「あんの野郎…チョーシこきやがって…!…ぶっ飛ばす…っ!」

 春一は夏輝から紙をひったくると、それを握りつぶした。



「何で琉妃香の方が先に解くんだよ」

 春一は、不服そうな顔をしてコーヒーを啜った。リアルからの挑戦状を受け取って数日、以来春一は不機嫌を露わにしてきたが、今日もそれは変わらない。だが、今日は若干矛先が違うようだ。

「昔ピアノを習っていたそうで、それでパソコンを見たら気が付いたと」

「そういやあいつ小学校の時ピアノやってたっけ…。ああ…そういうことか…」

 春一は全てに合点がいったように頷いた。

「つまり、あの数字がピアノでいう指の位置を表し、『すいちり』という言葉がキーボードのかなを表していた。その通りに指を置くと…」

「『Real』というアルファベットが浮かび上がるというわけですね」

 春一は頷いて、コーヒーをグイッと飲み干した。

「さて、俺は出かけてくる」

「どちらへ?」

「駅の本屋。あそこが一番品揃え良いからな」

「お気を付けて」

「あいよー」


春一はバス停でバスを待っていた。車かバイクで行けば早いのだが、駅周辺では駐車料金を取られる。それならばバスで行ってしまった方が安い。

 発車時刻を三分遅れて、バスがやってきた。春一はバスに乗り込んで、前部の二人掛け座席の奥に座った。そしてバスが発進する。すぐ先の信号が赤だったため、停車した時だった。

「お前ら、動くな!」

 突然、左側の一番前に座っていた男が立ち上がって銃をこちらに向けた。


 バスジャック。その単語が乗客の脳内に再生される。


 混乱の声が車内に響き渡る。女性の悲鳴、男性のうろたえる声。

「静かにしろ!」

 銃声が轟いた。男が放った一発が、天井に穴を穿つ。今度は男女問わず、悲鳴を上げた。

「おい、下手な運転してみろ、お前を撃ち殺すぞ!」

 運転手に銃口を向けると、運転手の男はびくりと身を震わせて必死に頷いた。

「お前、来い!」

 男は、右側の一番前に座っていた女性を乱暴な手つきで引き寄せた。彼女のこめかみに銃口を突き付けて、腕を首に回している。女性は必死にもがいていたが、銃口を一層強く押し付けられると、涙を流しながら大人しくなった。

「助けて…」

 嗚咽を交えた人質女性の懇願が、虚しく宙に舞う。

「あのさ、人質、っていうのかな。交換しない?俺と」

 そんな中、まるで空気を読めていない呑気な声が車内にのんびりと伝播する。

「…は?お前、何言ってる?」

 若干呆気に取られているバスジャック犯が春一の方を見る。車内の混乱も一時停止をしたように、皆が春一を見つめている。

「いや、だから。俺が人質になるよ。それとも何、女の人じゃなきゃヤダ?エッチー」

「ふざけんな!何だテメーは!」

「大学生」

「そんなことを聞いてんじゃねぇ!」

「じゃあ何を聞いてんのさ。漠然とした質問じゃ的確な答えは返せない」

「お前…死にたいのか?」

「まさか。でもほら、俺が身代わりになったら、格好良いじゃん」

「…それだけか?」

「まぁね」

「…お前は最初に殺してやる」

「じゃあ、交渉成立ってことでいいかな?」

 犯人の男はゆっくりと女性から腕を離した。代わりに春一の眉間に銃口を突きつける。春一は両手を上げて、犯人の男と相対した。



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