未来へ
「いったいどうなっている? 」
そんな時ジャビスは、ロザに攻撃が当るたびに、おかしな音が鳴っているのに気付く。
「チリンチリン。チリンチリン」
ロザもこの音が鳴っるたびに俺が攻撃を止めるのに気付く
「まさかこんなときもペドロに救われるとはな」
ロザは俺の目の前で、何度も鈴を鳴らせてみせた。
癒しの鈴、混乱を回復させる音色を持つと言われているアイテムだ。
ジャビスはやめさせようとするが、スティアが物凄い勢いで攻撃を仕掛ける。
「くそぉ 折角の駒だったがしかない」
そう言って、ジャビスはレアリーを吸い込んだ穴を作り出し、俺を吸い込ませようとした。
それに向かおうとする俺が居る。「行かなきゃ。待ってるから」そうつぶやき穴に向かう
しかし「目を覚ませバカァー!!! 」
スティアの強烈な飛び蹴りが背中に入る。
あまり口を開かないスティアの声に、ユズキもびっくりする
そしてロザの元に戻るかのように俺は吹き飛ばされた。
ロザを見た俺は「お前が引っ張りださなければ」そう気の抜けた声で言う
それを聞いたロザは俺の襟首を掴み、今まで散ってきた友の意思を無駄にするのか
その答えに「ロックだってお前さえSAF0の射程に入らなければ」
俺の答えにロザは今この状況を見ていたら、ロックはどう思う。
あいつは自分を犠牲にしてまでこの世界を護りたいと思っていたんだ。
ナナギはそれに付け加えるように「レアリーさんが正気だったらを考えてください」
ライルが「お前がここまで辿り着けずに居なくなった者ならどうする」
しかし俺には皆の言葉が心に届かず、心に残る過去の悲しみを見つける事しか出来ないでいた
「犠牲になって良い命なんて無い。そう言ったのはロザだろ」
そして俺は「何も出来なかったんだ俺は」
ロザは俺の顔に自分の顔を近づけ、「良く聞け! 」
今でも犠牲になって良い命なんて無い。その気持ちは変わらない。
それは誰しもが思う事だ。しかし現実を見ろ、それでもこれから来る未来の為に自分を投げ出してしまう者がいる
こっちの迷惑なんか考えてもくれない
しかしそれを護る事が出来ないのは、何も出来ない自分自身なんだ。
何も変えようとしない自分自身でこれからも生きて行けば、同じ事の繰り返しになる。
同じ悲しみ、苦しみに合いたくないから、すべてを失って終わりで良いのか?
それじゃ同じ悲しみを他の者が経験してしまうだろ。
「悲しみが悲しみを生まないために、私達に未来をたくしてくれた者がいるんだ! 」
私達に大きな悲しみを背負わせても、大切にしたい未来があるんだ。
「その未来で同じ犠牲が出ないように私は生きて行く」
それが犠牲になってくれた者への礼儀だ。
それにな、もう会えないって思ったら、レアリーが可哀想だろ。諦めたらそれで終わりなんだ
生きているならずっと諦めるな。それがあいつへの償いであり礼儀だ。
ジャビスの作り出した穴はまだあるにもかかわらず、俺を吸い込む事が出来ない。
俺には見えない支えがあった。
「何も失いたくないか。人間とはどうしてそうなんだ」
そう言って死んだはずのゼニスが俺を吸い込まれないように支えてくれる。
「そんな欲張りな人間がわしは好きじゃ」
そうやってロックが俺を支えてる
「忘れないで、私たちはずっとあなた達を支えているから」
ソニアも俺を支えてる
「お前にだって心に光はある。誰にだって光があるんだ」
ペドロが支えてくれてる
ジャビスに力が全く入ってこない。その理由を調べる為ジャビスは闇の流れを一度散らし、闇の集まり方を見た。
すると
「何だと!? 」
闇はカイの中に入り込んでいる。どういう事だとあわてだし、カイを捕まえ見ると、カイの胸に黒く輝く球がある。
驚いたジャビスの体を一閃の光が通過した。
意識もうろうとする俺のライトニングだった。光は闇に攻撃を与える。
カイは地面に叩き付けられるように落とされると、カイの意識は戻った。
しかもカイは同士討ちをしてしまったときのダメージは消えている。
「魔王の器!? 」
ジャビスはカイが魔王の器になっている事に気付いた。
伝説のアイテムシリアラザーの心を食べた魔族だ。
闇の力を吸収して、力に変える事が出来る心を手に入れた者だ
つまりジャビスと同じ存在だ
しかしすぐ正気に戻り「同族よ、われらでこの世界を支配しよう」
そう言いまだ何が起きたかわからないカイにジャビスの闇の力を送り込もうとする。
「気持ち悪い物送り込むな! 」
そういってカイはジャビスの闇を跳ね返した。
ナナギは何ともないかとカイに聞くと「おいら元気! 」
そう言って笑い返してくる。どうやら正気のようだ。
そして「おいらの方があいつより全然強いんだ」と言い攻撃を開始した。
カイの武器は突然反応を見せる。鎌の刃の向きが変わった。
そして回転させ始めると、実体が影であり、闇のジャビスは周囲の闇ごと吸い寄せられる
そしてどんどんカイは自分の闇の力に変えていく。
決めの仕上げと言わんばかりに鎌の刃の向きを戻し、黒龍を発生させジャビスを攻撃した。
さすがにかなりのダメージを与えたがまだ弱らせるほどではない。
そこに意識を完全回復し、記憶も回復した俺が攻撃に加わる。
ジャビスに対し一斉攻撃が仕掛けられた
ユズキも最後の力を振り絞り全員の攻撃力を上げる。
レイナとライルが闘気を解放すれば、ナナギが炎の海を作り出しジャビスに押し寄せる
ロザ、スティアはその合間を縫うように、近づき連続攻撃を繰り出す。
溜まらずジャビスが逃げた所には、測ったようにティカの弓が影を散らす
そして俺は心にいっぱいの希望をイメージし光を解き放った。
「みんなの光が希望に未来になるだ!! 」
放たれた魔法は光の鳥になり、翼を大きく羽ばたかせジャビスを包み込む。
完全に目の前からジャビスの影は消え去った。
しかし、ジャビスの声が俺達に話しかける
これからの未来も今ままでと変わらない。
どんなに良い指導者を迎えたとしても、それは変わらない
人それぞれが同じ事を願い、同じ志を抱くわけじゃないからだ。
いつだって自分が一番大切な世界だ
かなわなければ、欲望を生む。欲望を満たそうとすれば誰かが悲しみを、怒りを、憎しみを。
このサイクルは永久に続けられる。それが生き物だ
そしてどんな場所でも必ず闇は生まれる
「そうだ! 私を倒した褒美をやろう。この世の闇を忘れさせてあげよう。永久にな」
そうすればどんなときも、怒り、悲しみ、憎しみは生まれなくなる。欲望のない世界はこれから始まる
お前達の望む世界だ。すべての者が喜び笑う事しかしなければ良い
その言葉の後、大きな箱が現れ周囲の闇を吸い取り始める。
闇だけではなく、悲しみ、怒り、欲望を吸い取った。そして最後に箱の中にジャビス自身が入り眠りにつく。
「これで良いんだよな」
俺はみんなにそう言う。しかしなんかみんなしっくりしない顔だった。




