闇を受け入れる場所
なんとか魔族の島に上陸する事が出来た俺達は、次にとるべき行動を確認していた
魔族の島は闇に覆われている為、これ以上進めばマザーの見えない範囲に入ってしまう。
つまりどんな危険が迫っていても、指示が受けられないし、援護も無い
しかし、命を張ってまで俺達を護り、この島に上陸させてくれた友の事を考えると、もう後には引けない
返るときは目標を達成したときだと、胸に決めて進む事を選択する。
ロザは全員に指示を出す
俺達人間は魔族の島が生まれ故郷であるカイを連れて、そのまま真っすぐ元中央学校で現魔族の城に向かう
ロザは右回りで音響機器の設置。スピーカーの設置だ。
ユズキとレイナは、怪我の状態が思わしくなくこの場で音響機器の設置。その後待機だ。
マザーの指示があれば、俺達に伝える役目になる。
左回りの音響機器は不安が残るが、スティアとドランが担当する。
マザーの話だと、攻め込んできた魔族は既に、城の方へ飛んで行ったと言う。
最終決戦の地に向かったのだろう。
ロザとスティアは作戦完了後、城に向かう
そして作戦は開始された。
マザーの言った通り、俺達に攻撃を仕掛ける者はほとんどいない。
真っすぐ進むとは言え、崖を上り、山を越える。時には生活感のある小屋も発見した。
しかし中には誰もいない、カイの話だと魔族は確かに悪い事が大好きだけど、中には話してて楽しいやつもいると言う。
そしてそんなやつほど、家を建てひっそり暮らすと言う。
その話も嘘ではなさそうだ。
至る所に酒瓶や、宴会をやった後が目撃される。ここで祭りでもあるのかなって思えた。
俺達はカイに何で悪い事するんだ?と聞いてみると、時々そう言う事をしなくちゃ行けないような気持ちになると言う。
ひどいときは我を失うぐらいだと話す。
そして一軒の小屋に辿り着いた
カイは、ためらわず中に入る。俺達は少しぐらい警戒しろと注意するが
「ここは大丈夫だよ。 ただいま!じいちゃん 」
カイの生まれ育った小屋だった。
しかしカイを迎えてくれる。声は無い。寂しそうに部屋を一周するカイを俺達は眺めていた。
カイは机の上の写真を見つける。カイと魔族の老神官が笑う写真だ。
「今、おいたら達の故郷においらは攻め込んでるんだぜ」
そうカイは写真に向かい話し始める。
俺達はその言葉に戸惑うが、聞いているしか無かった。
じいちゃんならどうする? 魔族の仲間と一緒に戦うか? でも仲間はみんなジャビスの声でおかしくなったよ
空から下を見たとき、知ってるやつが船を攻撃してた。
やっつけられてた。そん時おいらどっちと戦えば良いんだって思ちゃったよ。
でも城を見るたびに、あのジャビス司令官はやっつけなきゃ行けないやつだと思える。
あいつをやっつければみんな元に戻るよな? でもその後おいら達魔族はどうなっちゃうの?
その言葉に俺達は息をのむ。カイがどう判断するかわからないからだ。
もしかしたらここでカイともう一度戦う事になるかもしれない。そう思えた。
しかしレアリーが、ジャビス倒したらカイがこの島で一番強いんだよ。
この島では一番強い者が威張っていいんでしょ。
この島はカイが責任もって魔族のみんなに、他の島には迷惑かけないようにと説得すれば、ロザはこの島の存在を消そうとはしないはずだよ。
「たまに悪戯しても許してくれるよ」
そう言ってカイを説得しようとする。
こんな状況でも、こうやって優しく声をかけてあげられるレアリーはすごいと思う。
正直俺にはこの不安を抱くカイにどう声を掛けていいかわからず、成り行きに任せるしか無かった。
レアリーはカイに「行こう! 」と優しく手を差し出す。
その手を掴みレアリーとこの部屋を出るカイは、幼すぎる。本当にこのまま戦いに連れて行って良いのか考えてしまうぐらいだ。
次に辿り着いたのは二階建ての建物だった。
カイはここを魔族の生まれる建物。研究所でもあると言う。
俺達は魔族の発生を調べるため中に入る。
しかし、中は今壊されたかのように破壊されていた。
一階、どうやら資料部屋だったのか本棚がある。近くには黒こげの本や、焼かれた資料、息絶える研究員がいた。
一階の各部屋を見て回るが状況は同じだ。
情報無く二階に上がると真っ暗な部屋に入った。
何やらパイプのような物から煙が出ている。
その煙は割れた卵に吹きかけられていた。
「それは卵の中に、闇の力を入れている装置ですよ」
その言葉の方をあわてて振り返ると、校長がいる。
俺達は全く気配を感じる事が出来なかった。
闇の属性の取り柄だ。音も無く忍び寄る。これこそ闇の特性だ
「驚かせましたかな? だったら美味しい卵はいかがですか? 」
そう言い、卵を割り中身を飲み込んだ。
それを見たカイは、攻撃を仕掛ける。自分の仲間が食べられていたからだ。
しかし攻撃は当る事無く、簡単に捕まえられ、俺達の方にカイは投げ飛ばされる。
「この世界を支配する為には、魔族は必要でしょ!? 」
レアリーの問いに校長は、当初は必要だった。しかし先の戦いを見て使えないと判断したから、エネルギーとして使う事にしたと言う。
そして今頃は、建物の中で同じ事をジャビスはやっている
「目的はなんだ? 」
「そうですねこの世界はやはり存在しなかった。それが目的です」
校長達はこのシリアライザーを破壊しようとしていた。
そして校長が姿を変える。
「メデューサって知ってますか? 実に優れた戦いをすると思いませんか? それの理想型です」
校長は下半身を蛇の姿に変え、上半身をドラゴンの体に、頭部は機械で造られていて、360度回転する首になっていた。
そして、音を立てず移動を開始する。
「私の目を見たら石化すると思いましたか? 腕を見てご覧なさい 」
俺達はあわてて腕を見ると、黒い斑点が出来ていた。校長はそこからエネルギーを吸収していると言う
そして真っ黒になった時、俺達の命は消える。
俺達は身構え、攻撃に備える。ティカがもう一度獣化しようとするが、ライルが止めた。
現状まだティカの精神力は回復していない。これ以上は命の危険があったからだ。
しかし音を立てず忍び寄る敵に、俺達は苦戦する。
上半身のドラゴン攻撃は、俺達を思いっきり殴りつける。その後蛇の体が音も無く素早く闇に消えて行く
俺達は各自が部屋の端に行きそれぞれを見る。現れた所に攻撃を仕掛けるが攻撃が届かない。
むしろ分散すると集中的に狙われてしまい、不利になってしまった。
しかし中央に姿を消したのを合図に、一気に中央に走り追いつめた。
が、目から周囲にレーザー攻撃がくる。それを360度首が回転して、周囲の俺達を攻撃してきた。
次第に体力の劣るナナギが動けなくなって行く。
俺達はナナギを囲むように構えた。
「くそぉ なんか良い方法ねーか? 」
俺はそう皆に聞くが誰一人声を上げない。
俺達の体は既に真っ黒になりかけていた
「やるしか無い! 」
ティカが獣化するため精神を集中する。
「アンティさん 光です!! 」
俺はナナギの言葉を聞き、自分を中心に最大限の光を周囲に発した。
当然のごとく俺以外、視界を失う。それは校長も同じだった。
「今だ! 」
そう言い光り魔法ライトニングを放つと、その一線が校長の胸を貫く
しかしすぐにまた闇の部屋に戻ってしまった。
「確実に心臓を貫いたはず」
俺は豪語したが、また攻撃が来た。
「不死身か? 」
そう言う俺にナナギが待ってくださいと眼鏡をいじりだす。
「心臓部確認! 頭部目の部分です」
俺はもう一回光らせるぞと言い光らせるが、今度は聞かない。光る瞬間目をそらしている。
ナナギの話だと獣の感覚が残っているから、危険察知能力の高さで交わしていると言う。
「ナナギ! あいつの位置はわかるか? 」
ライルの声にナナギは熱探知可能です。わかります。
そしてライルの指示が出た。
「アンティ今だ! 」
俺はドラゴンソウルを全快に広げ波動砲放つ
「交わされました」
「カイ! 」
カイが黒龍を放つ
「交わされました・・・・・・ ライルさんの前方に! 」
「ビッグバン! ゴォーーーー ! 」
ライルの溜めていた闘気が目の前の校長に直撃した。
グランドクロスと違い、円形に破裂した後が広がっている
そしてライルの攻撃で動きの停止している校長に、神々の裁きのごとくレアリーの雷が頭部に降り注いだ
「機能停止! 破壊しました」
ナナギの声と共に俺達はガッツポーズをとる。その体には黒きシミは無くなっていた。
俺達は、校長の近くに行くと言葉が流れてきた。
おそらく力尽きたとき自動で再生されるようになっていたのだろう。
いつ録音されたのかはわからない。
話の内容も昔話のようなことばかりだったが、最後に述べられていた言葉が俺達の心に残る
「もしやり直せるなら、人間だけ逃げ出す事を選択した日をやり直したい」
なぜだかわからなかったが、この言葉は真実だと思えた。




