小さな友達
俺達が甲板に出た時、見た物は!!
元気よく走り回り、攻撃を繰り出す、小さな金色チビデブドラゴンの姿だった。
こちらをチラッと見ては、飛び跳ね笑顔を振りまく。
そして「がんばる!! 」
そう叫び、笑いながら爆破系の攻撃でモンスターの接近を食い止める。
モンスターに近づかれると、噛み付き攻撃、しっぽビンタ、飛び蹴りを披露する。
「ドラン! 」
俺の大きな呼び声が、船内に響き渡り、レアリー、ナナギ、ロックの耳にも届く
ドランは、この世界に来る時哀しみで、体からの放電現象を発し、目が闇に覆われて闇のカイザードラゴンになってしまった。
っと聞かされていた。俺も弱りケースに入ったドランの姿を見ている。
でも、あきらかに目の前のドランは、闇のカイザードラゴンへの変化は見当たらない。
それにあの嬉しそうな笑顔が、ドランの顔に戻っている。
闇のカイザードラゴンになったら、何かに宿るしか心を取り戻せない。そうユズキに聞いていた。
もしかしたらシリアライザーの心を食べさせれば、元の心に戻るかもしれないと聞いていた。
確実な方法はわからないと聞いていた。
でも目の前には元気なドランがいる。
俺やティカ、ライルも必死にモンスター達を近づけないようにレジスタの守備に参加した。
ティカには、また新たな矢が加わっていた。目くらましの矢だ。
放たれると、一定時間後、周囲に目を開けていられないほどの光を発する
一発目のその光に、俺もライルもやられてしばらく目が開けられなかった
俺はその矢放つ前に一言頼むティカに言うが、嬉しかった。
俺の魔法を詰め込んだ、魔法の筒を使っている。
いろいろな場面を想定しているのか、気がつくと俺やナナギに魔法を入れてくれと持ってくる。
毎回毎回頼りになる女性だと感心する。
ドランの爆破系ブレスも凄まじい物になっていた。
確実にモンスターの前で爆発させるだけでなく、爆風で吹き飛ばす。
俺達が甲板に行くまで、モンスターを甲板に近づけなかったのは、ドランの爆破ブレスのおかげだ。
今では爆破のタイミングまでコントロールしているかに見える。
そう考えた俺は、ドランは正直走り回らず、中央で戦っていれば良いのではと思う。
やがてナナギとレアリーが加わる。
ナナギは魔法で牽制し、レアリーが中央に陣取り歌い始めた。
しかしロックは別の事に驚き、指をさす
「わしの最高傑作が!? 」
俺達はロックの方を向くと、上空で手足の付いた時計型のロボットが戦っている。
背中にはロケットを付け空を飛び回る。
手の部分を飛ばし、モンスターを攻撃する。
ビームガンと呼ばれる銃を取り出し、攻撃を出す。
接近戦になると今度は剣を取り出し斬りつける。
逆の腕には丸い大きな盾を持ち、相手の攻撃を受け止めていた。
トドメとばかりに両腕を上げガッツポーズを決めると、時計の表面から巨大なレーザーが放たれた。
あきらかにモンスターを近づけない為でなく、倒す為に戦っているが
「…… 強い! 」
俺達はその強さに笑うしか無かった
ティカがあれはロックが造ったガラクタだろとロックに聞く
「ガラクタに見えるか? このへっぽこ女!! 」
ロックは手を叩いて喜ぶ。
ついさっきまで壊れかけていたのを忘れるくらいだった。
しかし「アイス! 」
ナナギがロックと周囲を凍りづけにして動きを止めた
「ナイス! 」
「ちぃっ」
俺がナナギの行動をほめたと同時に、ティカが舌打ちをした。
ティカを挑発したロックを、ティカが船外へ蹴りだす恐れがあったからだ。
周囲ごと凍らせてしまえばそれは出来ない。
ナナギが冷静な行動をした。
しかしレジスタ内にあったあのロボットがなぜと俺達に疑問も抱かせた。
ロボットを見てドランは「親分サイコー! 」って喜ぶ
俺達はしばらくロボットを目で追うと。
「お前か!? 」
ロボットの顔部分にあるコクピットに映る姿に俺はそう叫んだ。
ロボットも俺に気付きこっちへ寄ってくる。
「アンティ助けてやる! だから美味しい物食わせろ!!」
そう、にこにこと言ってきた。そしてまた戦いに戻る。
「説明しろ!! 」
ライルが俺に怒鳴りつけてきた。
あきらかに魔族が俺に話しかけてきたからだ。
それに助けるまで言われて大混乱だ。
俺は強い味方だと笑う。
そんな曖昧な説明に、ライルが俺に近寄ろうとしたが、ティカの目くらましがライルを襲う。
「うるさい男ね 今は猫の手でも魔族の手でも借りたいのよ! 」
そう言ってライルの動きを止めた。
ライルは目の前で光ったせいか、倒れ込み目を押さえてもがき暴れている。
ナナギはそれを見て、ロックの周囲の氷を更に厚くした
ティカのイライラが危険と感じ、今の氷の厚さではロックは船外に蹴り飛ばされると思ったからだ。
ティカはそれを見てナナギを睨むと、ナナギは作り笑顔で頭を掻き、ティカにぺこぺこと頭を何度も下げる
やがてレアリーの声が届き始めたのか、呪いのモンスターは攻撃をやめ、魔族は異変を感じて撤退して行く。だんだんモンスターがレジスタから離れて行った。
そしてレジスタは、機械島付近の海にゆっくり不時着した。
モンスター達も、もう周囲には見当たらなかった
「助かった〜〜! 」
俺達はそう言って安堵の表情を浮かべた。




