ドラゴンの住む島へ
次の日を迎えいよいよ出発の日だ
「良いのか? 仮にとは言え獣人島を指揮するお前が島を出て」
ロックはロザの立場を気遣う。
しかしロザは、自分がいなくても勝手に復興は進む。
いざと言うときに戻れば何の問題も無い。と全然気にする様子はなかった。
それにしても昨日とはうってかわって違う日だ
まるで遊びに行くかのような格好で俺達は現れる
俺やライルは海パンになり、レアリー達も水着を着ている。
レジスタの自分の部屋にいろいろと用意してあったようだ。
彼女達は、今日は太陽よりまぶしく感じた。
ティカはビキニにショートパンツと健康的だ
ナナギも背があまり高くないせいか水着が、スクール水着にさえ見える。でもちょっと頑張っているのかどことなく色っぽい。
レアリーはビキニに白のYシャツ。ボタンは閉めず、腰より高い位置で縛っている
この時点では、俺にはとても素晴らしい日に感じた。
すべて荷物は持って、忘れ物は無いか確認する。そして
「ヨ〜シ! 出発するぞ!! ドラゴンの住む島まで競争じゃい!!! 」
ロックはサングラスを付け、タバコ《パイプ》までくわえた。いかにもキャプテン気取りだ。運転しないのに
それぞれがお互いのパートナーに確認し、発進しだす。
「行くぞレアリー! しっかり捕まってろ」
「ライルちゃ〜ん 手加減無しにアクセル全開じゃ! ナナギはしっかり捕まっておれ」
「きっとロックのバイクは細工してるねぇ。勝負事は負けたくないのが獣人の性だよ」
「運転以外はロザにおまかせ〜」
そのティカの声と同時に、ロック達の目の前に氷の雨が降り出した。
「ニヤリ! 」
しかし、ロックは不適な笑みを浮かべ、バイクは急加速し通り抜ける。
「チィッ!? 」
やはり加速が自分たちのと違うと気付く。
「うほほ〜い」
ロックは高々と喜び、後方を挑発し始めた。
獣の考えそうな事だ。単純すぎて予想通り。笑いが止まらん。
ケツでも叩いて挑発くれてやろうかのぅ。と嬉しそうだ。
そして調子に乗ったロックは最後尾の俺達も挑発する
「や〜ぃ このうすのろ!」
そしてレアリーに、歌うか俺の事しか考える事が出来ない可哀想な女の子と言いだした
一瞬後方を振り返りロザがレアリーを見る。
レアリーは、すでにマイクを天にかざしていた
確かあの女は雷を操ったな、っとティカに確認し、距離をおけと指示する。
その直後だった。
ライル、ナナギ、ロックを雷が襲った。
マジックバリアを無視し直撃した雷はライル達の叫びすら消し去る。
「……なにが起きた?」
ライルはまだしびれながらそう言う
「……なんでわたしまでこんな目に」
ナナギは半泣き状態だ
ロックはというと。すでにレアリーに捕まっていた。
レアリーの目には炎が上がり怒りが、しかし頬はなぜか赤らんでいた。
ティカが近寄りレアリーに、積んであったビニール袋とロープが渡された。
もしもの為にバイクに積んでいたと言う。
ロックはひ汗を流し、じたばたと暴れるがレアリーはビニール袋に入れ、ビニールを回転。
最後に縛り上げる。
その後自分のバイクの後ろにくくり付けた
「行きなさい! 」
俺に走り出せと言ってくる。
俺は言われるがままに、走り出すと、むなしくもロックの入ったビニール袋は水面を跳ねながら付いてきた。
ティカはしびれて動けないライル達を引き上げ、なんとか動けそうなバイクに乗せてあげる。
「バカなやつだ」
そう言い、アンティの事なら適当にあしらうが、せっかく自分が歌う事で役割を見つけたのに、それが可哀想なやつと言われれば怒るに決まってる。
っとしんみり言う。ロザもあの歌のおかげで獣人達が再び幸せに向かっている。そう有り難く話す。
やがて俺達はドラゴン島にたどり着いた。
草木は枯れ、もちろん森や林も枯れ果てている。荒れ果てた土地に生命を感じない。
至る所に岸壁があり谷を形成している。
水こそ流れているが、気配がない。
俺達は手分けして島の周囲からバイクで調べだす。
途中レアリーが先ほどの事を気にして、落ち込みながら俺に歌う事しか出来なくてごめんと言うが、俺はその歌が世界を救ってくれる。
戦う事でその場を解決するしか出来ない俺に比べたら、よっぽど有り難い能力だ。
呪いを解放する為だけに歌うんじゃない。大好きな歌を歌うってことを忘れるなよ。
そして「たまには俺の為に歌ってくれ」
レアリーの声が聞けなかった期間寂しかったと言う。
俺の声が届いたかはわからない。後方で
「もう勘弁してくれ〜」
ロックが一生懸命泣きを入れる。
そのたんびにレアリーが袋の付いたロープを、鞭のように「パシッ パシッ!」と水面に叩き付ける
ビニールの挙動が変わり、不規則な動きをして更にロックが目を回す。
きっと俺の為には歌ってくれそうにないと思った。
やがて俺達は上陸した。
目指すは海岸付近にあった大きな洞窟だ。
怪しく口を開けた洞窟は、入り口に立っても奥が見えない。
なぜか俺はワクワクする。
「なんか宝がありそうだ! 行くぞ!!」
この先過酷な罠があるかもしれない。しかしきっとこういう場所には宝があると言うのがセオリーだ
これをワクワクせずにいられるか。
皆は慎重に行こうというが、俺は真っ先に入ろうとする。
「仕方ないやつじゃな」
ロックはそう言うと、体を光らせ皆の明かりとなった。
ライルが光るロックを見て、便利なやつだと言う。
その声にロックは、レアリーを見て不適な笑みを浮かべた。
しかし「ドォッ!! 」
レアリーがロックを洞窟の中に蹴り込んだ。
俺達はしばらくレアリーとロックの攻防は続きそうだと思いながら、洞窟の中に入る。
始めに罠を作動させてたのは俺だった。足下にロープが引かれていた。
これに引っかかることで頭上から大きな石の塊が降ってきた。
しかしロザが俺を拾い上げ移動し、ライルが石を切り裂く。
「アンティお前一回死んだぞ」
そうロザが忠告するが更に進む。
目の前から槍が、横から槍が来るがライルとロザがことごとく跳ね返す。
頼もしい限りだ。
しかし数時間進み幾多の罠を超えた辺りだった。
ティカが俺を捕まえ後ろに下がれと言ってきた
似たような仕掛けに何度も引っかかりイライラしていたようだ。
だが俺だって誰よりも先に宝を見つけたい。
引こうとせず前に進もうとした。
「アンティさんごめんなさい」
そう言いナナギが俺をロープで縛り上げた。
こうなってはおとなしく付いて行った方が良さそうだ。抵抗したら今度は足まで縛られそうだ。
ナナギはその場の判断力が高い。効率を考えそうしてきたんだ。
「……無念。力不足の経験不足」
うなだれる俺にロックは「心中察するぞ」と一言声をかけてくれた。
しかしロザとティカが先頭に立つと全く罠が作動しない。
ティカは罠の先読みをし、ロザは罠を嗅ぎ付ける。
やがて開けた場所に出た。
その場所には沢山の大きな卵が見える。
俺は卵に見覚えが有った。ドラゴンの卵だ。かつて秘密の部屋で見た写真の卵にそっくりだった。
「タッ 」
俺達の前に人が現れた
「人間!! 」
目の前の女性は、俺達と同じ姿をしていた。
背はそれほど高くない、道着を纏い、手にはグローブがはめられていた
「まかせて! 」
そう言いレアリーが前に出て歌い始める。
しかし、女は歌など気にせず、ロープで巻かれた俺を見つけ嬉しそうに微笑んだ。
「ドカッ ドッ ドッ ドォー! 」
俺の腹に直線的に拳を一撃入れ、その後突き上げの拳二発。俺の体は宙に浮き更にハイキックで宙を舞った。
その攻撃は速すぎた。ロザですら気付いたときは、女が俺の懐に飛び込んでいた。
俺はあまりの痛さに半泣きになり
「おかしいだろ普通は一番前にいるやつ攻撃するだろ」
しかし女は嬉しそうに俺を指差し手を叩き笑う。
「スティアさんダメですよまずはお話を聞かないと」
卵の奥からもう一人の小柄の女性が現れる。
優しそうな顔立ち手に杖、僧侶のようなかっこしている。
「全くぅ〜 不思議な日が続きますね」
そう言い、話しだした。
先日はご飯をよこせと、自分の名前を連呼するおさるさんが来たかと思えば、今度はいきなり歌いだす人間ですか
「ユズキ〜 」
そういいスティアは嬉しそうにユズキの方に移動する。
とにかく何やるにしろ、この武道家スティアは嬉しそうな顔をする。
俺達は話せる相手と判断し、話しをする事にした。