水上を突っ走れ!
「さて! 出来たぞ」
ロックは海辺で水上バイクを造っていた
水の上に、おかしな乗り物が造られていた。
ゆで卵に折りたたみのハンドルでも付いたかのような形をした乗り物だ
ロザが近寄りこれは何かと訪ねる。
水上を移動する為の乗り物だとロックは自慢げに言う。
ドラゴン島への移動は、レジスタでの移動も考えたが、現状レジスタは音の発生源に使われている。
いざとなった時、距離があればあるほど効果は薄いが、どっからでもレアリーの声を送る事が出来れば、レジスタを経由し、各スピーカーから音が出せる。
獣人島を護る為にはレジスタを動かしたくないと言う。
それに小型の乗り物で移動する事により、魔族に見つかりにくくする為でもある。
見つかっても小回りがきく分逃げる事が可能と言う利点があった。
そう話しているうちに、レアリー達が集まってきた。
「これで移動するのか?」
「話には聞いていたがロックは何でも造れるんだな」
「二人乗りで3台か? 」
いろいろと賑やかに意見が出たがロックは話し始めた。
まずこの水上バイクは二人乗り用。
一人は操縦し、もう一人は乗ってるだけ。
ハンドルのきった方向に曲がり、アクセルは右側のハンドルのグリップ部分をひねる事で加速する。
ブレーキに関してだが、このバイクは水を吸い込み吐き出す力を高めて前に進んでいる。
ってことで、アクセルを全部戻すと、水の吸い込みが止まり減速して行く。
後ろに下がる機能は付いてないから、Uターンしてくれ。
これだけ広い海なんだから、真っすぐ進むようにシンプルな設計で造っているみたいだ
「機械的にはこんなもんかのぉ〜 」
「すごいじゃろ〜 かっこいいじゃろ〜 エコじゃろ〜 わしって天才!? 」
「ふ〜ん 」
「……ナナギちゃん聞き流さんでくれ〜」
ロックは楽しそうに話すが、ナナギは操作方法を習う学生であり、ロックの話は、操作方法以外興味なかった。
「おっと!? そうじゃ」
そう気付いたかのようにロックはこの乗り物には、ナナギのマジックバリアが施されているため、よほど強力な魔法を受けない限り破壊できないと言う
「では、明日出発として、パートーナーを決めてくれ! 」
操縦に関しては、真っ先に俺とライルが名乗り出た。すでに動かしてみたくてワクワクしている。
ロックはそれがわかったのか練習してきて良いと言ってくれた。
俺とライルは幼き子供のように海に出る。
アクセルを開ければ風を切り、水しぶきを上げる。
ハンドルはきりすぎると、体が海に投げ出される事がわかった。
しかしぎりぎりの所ぐらいでハンドルをきると海の上を小刻みにジャンプしているかのようだ。
ライルは俺の前に出て水しぶきを思いっきりかけてくる。
「くそぉ〜 前が見えねぇ〜 」
ハンドルをきりライルの水しぶきをよけ、アクセル全開!
体を前方に倒し空気抵抗をなくすと更に速くなる。
俺とライルには絶好のおもちゃに感じた。
「あの二人は問題なさそうじゃ 」
そうロックは言うと後一人はとせかす。
そして
「ティカかロザどっちか運転せんか? いつも偉そうなこと言ってビビってるのか? 」
一瞬かちんと来て表情を変える二人。ロザが運転しようとしたが、ティカがロザを止める。
器用さだけなら誰にも負けない。すぐになれるからやらせてほしいと。
正直、空を自由に翔る事の出来るロザにとっては、どうでも良い事だった。
ただ好奇心がある。触ってみたいとロザの気持ちはあった。
ティカはバイクに座ると
「乗りなさい! 」
ロックにそう言う。
「どうせ塩水はまずいとか言って乗らないんでしょ」
「……」
ロックは苦笑いを見せるが
「あんたなんかに後ろに乗ってもらいたく無いけどね! 」
「なんかっていうな!! 」
急にロックは大声を上げる。俺とロザは何事かとびっくりするが、ティカもレアリー、ナナギ、ライルもなぜか笑顔だ
ロックが自ら大きなビニール袋をかぶり防水対策し始めた。
ロックは〇〇なんかって言葉を言われると腹が立つ。
それを利用してティカはロックを挑発したのだ。
「振り落としてみろ! 」
ロックはそう言ってしがみつく
しかし
「どひゃ〜〜〜 」
目の前にあったバイクが残像だけ残したかのようだ
アクセルはいきなり全開!
ハンドルはきりすぎ空中にバイクが浮いても、空中で旋回してみせる。
見事な体重移動をし、とても初めてには思えない
すでに俺やライルの運転技術を圧倒する。
振り落とすつもりで運転するティカだが、ロックもしっかりしがみつく。根比べかと思えた。
しかし、スピードを緩めティカが波を待つ。
海の穏やかさにいらついたティカは弓を取り出し、波を凍らせ始めた。
次第に三角形のスロープ状の氷が出来上がった。
スロープに向けアクセル全開! 氷の上に乗るとバイクが滑り更に加速度を増した。
「バッ!! 」
ティカとバイクがジャンプ台から飛び立った!
太陽に向かって高く飛んだバイク!
飛び立つ際ティカが上手く体を使い回転力を与えていた。
バイクとティカは横回転で光速スピン、ロックが回転中にティカから離れ飛んで行く。
やがて見事に着地するティカの顔には満面の笑みがあった。
そしてこっちに、いやロザに向けガッツポーズ見せた。
俺達はロックの存在を忘れ自然にでる拍手をティカに送る。
「あの女は嫌いじゃ ……グスン」
水上ではぷかぷか浮かぶビニール。その中にロックがいる
やがて後ろに乗る者が決まる
俺の後ろにはレアリー。ライルの後ろにはナナギ。ティカの後ろにはロザが乗る事になった。
ロックはライルのバイクに改造を加え、バイクのエンブレムとばかりに先端に自分の入るスペースを取り付けた。
なぜライルのバイクかと言うと、ナナギは自分に優しくしてくれるという理由だ。
そして次の日出発すると気合いを入れた。