ドラゴン
空はまだ薄暗く、一定の間隔で灯台の火は島を照らす。
獣人族の朝は早く、既に日が出るか出ないかの時間に活動を始める者がいる。
日が射すころには、にぎやかなもんだ。今日も笑い声が響く中この島の復興活動は続いていた。
住居を築き、生活感が出てくる。
しかし
いまだ眠り続ける者がいる
「ドラン起きないね」
未だにレジスタにある、特殊なケースの中に眠るドランがいる。
この世界に来る時、闇に心を支配されそうになってしまい、ケースに入れられたドラゴンだ
ケースの中で攻撃を繰り出し、自分がダメージに巻き込まれる。
そのダメージで倒れたまま起きてこない。
俺は久しぶりに会うドランが、こんなぼろぼろになりケースの中にいるのが耐えられない。
今すぐ出して手当てして、今までの話を聞かせてあげたいし、向こうでのドランを聞きたい。
そう思い俺はケースに触れようとした
「やめておけ」
その声はロックだ
ロックは俺の前に出て、いろいろ調べているがわからないんだと言う。
「このまま起きないか、それとも闇への道案内になって目覚めるかじゃな」
ドラゴンの中でも支配的な強さを持つカイザー種。良き心と悪しき心の狭間に生まれ、光か闇のどちらかに導くと言われている。
しかし一度悪しき心に傾き、闇に心が覆われると破壊の限りを尽くし、破壊を終えると永遠の眠りにつく。
ロックの知る限りでは、カイザー種のほとんどが破壊のドラゴンになると言う。
人間、獣人、ドラゴン、機械、そして魔族。それぞれがお互いをけなし認め合わない世界に嫌気がさす。
それがカイザー種が破壊の道を選ぶ原因ではないか。
この世界は昔は、すべて一つだったと言われている。
その時代の者達を神もしくは聖者、天使、妖精なんて表現している。
この時代が一体どうして無くなったか?
大きな争いがあり太陽すら、この戦いを見たくないと判断した。
空気は冷やされ昼間なのに風が吹けば草木も凍りだす。
生き物は寒さに弱い。死に絶える者が続出した。
しかし日があたらない地で生きて行く為に、体に多くの毛がはえ進化した獣人。
体の皮膚を強化、熱の変化も無効にし、寒さをしのぎ、圧倒的な固さと耐性を手に入れたドラゴン。
自分たちで、日を造る為にを考え研究し、生み出して行く。そうやって難題に挑み生き続け賢くなった人間。
人間の賢き生活から生まれた機械が進化した機械族。
そして、もともと闇を好む魔族。
やがて太陽の光は戻り、人と魔族は日の光を巡り争いを始めた
戦いには人間がほとんど魔族を退け勝利する。
魔族は人に勝つ為にはどうするか。それを考えだした。
人が嫌うこと、人が闇の心に染まるときをみる。
それが欲望の拡大と、消える事の無い先入観を利用する事
生き物の中にある魔の心を拡大する、それにより魔族は力を拡大させた。
人は暗闇では活動できない。活動できる者は欲望《魔の心》を成長させる者だ。
魔族はわざと戦いに破れ、日の光を呼び、夜は大地を照らす火をつくる。魂の灯台建設に力を貸す。
当時は魔族の被害を防ぐためだったが、今となってはこの灯台は昼夜問わず人の魔の心を成長させる光なのかもしれない。
起きている時間を長くすることは、考える時間を長くし、活動できる時間を拡大する。
活動している時間は、魔の心も起きている。
休む時間が減り、疲労感で心の隙間が出来る。そこに魔の心が広がって行く。
魔の心は闇の中で増大し、自分の生活を豊かにする為、楽にする為の行動をとる。犯罪とは魔の心が成長した結果だ。
それにこの灯台の火は生け贄。魔族は獣人、ドラゴン、機械からも魔族を生み出す為にこの灯台を造ったのかもしれない。
人間が獣人、ドラゴン、機械を巻き込む事で。
生け贄と言う方法で照らさなければいけないとわかった今では、この灯台の必要性すら疑う。
しかし魔の心はすべての生き物が持つ、光が無い世界では、魔の心を抑制すらできない。魔族の力を弱める事が出来ない。
光はエネルギーを生み、犯罪を未然に防ぐ、今は生活において光は必要な時代になってしまった。
光があれば魔の心は成長し、光が無ければ魔の心が行動を促す
何をすれば正しき世界ができるのか?
その答えは見つからない。
ドラゴンのカイザー種は昔栄えた者達が、こんな世界を、もう一度一から創り直す為に送り込んだ生き物かもしれない
ロックは遠くを眺めながらそうたんたんと語る。
どうやら灯台の地下にあった情報を解読したみたいだ。
「カイザー種を光に導く方法はわからないの?」
「残念だが、人間の事ばかりで、他の情報が無い」
レアリーはその言葉にがっかりした。
しかしロックは「ドラゴンの島に行けば何か手掛かりがあるかもしれん」そう言う。
「なら次はドラゴン島を、呪いから解放だ! 」
俺はそう意気込む
次の目的地はドラゴンの島になった。