喜びの中で
獣人族の島を解放した俺達だった。
もう何年ぶりの出来事だろうか。獣人達が地下から出て酒に酔い踊っている。
「祭りだ!!!」
炎を囲みすべての物が笑みを見せる。
これからは地下で暮らすのではなく、日のあたる地上だ。
獣人が増えている。呪いが解けたからだ。
どうやらマンモスとグリフォンは親しい仲みたいだ。
1000年ぶりの再開か?でかい声で昔話をしている。
その中、時折せかされるようにレアリーが歌を歌う。
そんな歌の中、ナナギは伴奏をし、ライルがドラムに加わり、ティカはエレキギターを鳴らす。
外から見ている俺は、なんかそれが不思議な光景だった。
今この四人と本当に俺は一緒にいるんだろうか?
もしかしたらこれは画像で映し出されているだけではないのか?
笑って見つめているが、いつのまにか俺はひとりぼっちのような気もしていた。
きっとあの場に俺がいないからだ。でもどうやってあの演奏の中に入って行けば良いんだ?
もし入って行ったらこの音は止まってしまうかもしれない。
「…… いいんだ この音を聴いていられれば」
俺はこうやって聴いていればすべて上手く行く。そう思うよう心に言い聞かせる。
「心からは笑えないか? アンティ」
隣にはロザがいる。非常に酒臭いし、心無しか遠い目をしている。
「お前は、いつも本音を隠して生きているのか? 」
そんなロザの言葉に、俺はなんだか寂しさを感じた。
「俺の考えがわかるのか? 」
何となく聴いてみる。
あいつらに比べれば短いかもしれないけど
「私だって幾晩もお前とともにしてきた。少しはわかる」
「…… 幾晩かよ」
人間達にはその言い回しは誤解されるぞ。俺は一瞬ドキッとし、苦笑いをした。
俺は人付き合いは正直苦手だ。何か始めるのには、ライルやレアリーがいつも俺に手を差し伸べてくれた記憶しか無い。
変装したペドロと会い、学校の探検を始める。
ペドロと会わなかったら、ここにいないかもしれない。
今年の学校の披露会だって、二人がきっかけを作ってくれたおかげで出られたようなもんだ
何かつまづくとティカに煽られ、解決に困るときはナナギが知恵を出してくれるし、応援してくれる。
俺って本当に強いのかな。あいつらいないと何も出来ないんじゃないか。
こうやって獣人族と一緒にいられるのもペドロさんがきっかけを作ってくれていたおかげなんじゃないか?
「考えれば考えるほど自分が小さくなって行くぞ。アンティ! 」
生き物はいつもマイナスの方向に考えだすと、どんどんマイナス引きずらて行くもんだ
そうやっているうちにも時は動いている。
目の前にいるのは友だろ。これからもお互い気を使わず生きて行く事を望む友だろ。
ロザはそう言ってくる。こんな時ロザならどうするんだろ。そんな事まで考えだした。
「これからもそうやって生きて行くのか? 」
「……先の事は明日聞いてくれ」
俺はそうごまかすのが精一杯だ。
「めんどくさいやつじゃな 」
ロックはそう言い俺に一本のギターを手渡した。
皆は俺が生きているはずとずっと信じていた。だから一緒に演奏して歌うのを楽しみにしてると言う
その為にいつもこのギターはみんなの側に置いてあったと言う
俺はそれがうれしかった涙を浮かべながら、ゆっくり四人に近づく。
レアリーが笑って俺を引っ張る。
ティカがさりげなくエレキギターから発するレーザーで、俺を攻撃してくる
ナナギがそれを指す
ライルのリズムがおかしくなったのは、皆気付かなかったみたいだ。
しかし
「しまった!? 」
なんとした事か不覚にもこのギターには弦が付いてなかった。
俺はうれしさのあまり、ギターを持って出たのは良いが、あり得ない失態をしてしまった。
しかしレアリーは、それでも弾けとギターを弾くポーズをとりせかす。
やけくそとばかりのエアーギター状態が獣人の心をとらえた。
今までで一番の大盛り上がりだ!
俺の真似をしてエアーギターの姿が見られる。
「あの男は不器用な寂しがり屋じゃなー」
「ペドロの話だと冒険好きで旅に憧れているみたいだ」
そしてやるときはしっかりできる男だと聞いた。
ロックはロザの言葉を聞き、何をしたいんだかわからないやつだと俺の事を言う。
その答えにロザは「明日聞いてやれ」っと笑みを浮かべた。
そして俺の事をロックは「おおかた 気まぐれで寂しがりやの旅人って所じゃな」そうよんだ。
ロックが付けてくれた『気まぐれで寂しがりやの旅人』そんな二つ名を俺は気に入った。
皆がぶったれ眠りについた頃、俺は灯台に上っていた。
「やっぱりここにいたのか?」
そこにはカイがいた。祭りが見える場所にいると思い俺は探した。
「楽しそうだな! 」
「ああ楽しかったよ」
しかしその会話だけでカイは飛去って行った。
あいつは戦いの中になら飛び込んでくる。俺も同じかもしれない
ああ言う楽しい所に簡単に飛び込んでいける俺達だったら、もっと上手く生きて行けるだろうな
カイの飛び去る姿に俺はそうつぶやいた