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核戦争後の生業  作者: 橘花
集落編
5/16

奇襲 前編

集落へと無事戻れた俺達は、王虎号をダッチじいさんに預けた。エンジンなどの改修を行うためだ。


それから、俺達はセミトレーラーで運んできた二台の戦車の内、5式中戦車だけ持ち帰った。装輪戦車は大和さん達に預けた。



「それで、今夜はまた徹夜になりそうね。」


中島は車体に登った状態で言う。砲身は錆が無いが、砲塔には少なからず錆が出ている。まずは、それを落とす作業からだった。


「ここで、中島錆取り講座!!。」


っと、軽いノリで中島は変な黄土色?っぽい液体を運んでくる。


「はい、これ持って。」


っと、ブラシを渡される。


「これは、通常の廃糖蜜を何十倍に濃く作った中島特製錆取り液です。」


そう言いながら、ブラシを廃糖蜜と呼んだ黄土色?っぽい液体に入れ、暫くして取り出した後に、ブラシで錆びている部分をゴシゴシ擦る。


「ほら、見てないでやってよ。これ、一人だとキツイ仕事なのよ。」


「わ、分かった。」


っと、俺もその妙な黄土色?っぽい液体事『中島特製錆取り液』の中にブラシを入れ、そして砲塔に付いている錆を擦る。


「よく取れる。」


廃糖蜜と水を混ぜることでリン酸を作り出し、それが錆を取っている。しかも、通常よりも何十倍に濃い廃糖蜜である。数日かけて溶かす筈の錆を一瞬で溶かす。


「これ、体に掛かったら害じゃないか?」


俺は作業をしながら中島に聞く。


「大丈夫だ。問題は無い。皮膚に付いても水で一気に洗い落とせば大丈夫。」


中島はそう言いながら作業を続ける。俺も、より一層慎重に作業をしていく。




「回収はできず、挙句に戦車を破壊されるとはな。」


砂漠にて戦車を並べて待機している者たちがいた。焚き火の火で、ボスらしき男は顔に傷がある。その傷によって、左目が開かないようだ。


「も、申し訳ありません。何しろ、相手は装甲の薄く、しかも砂漠での移動に不向きな装輪戦車でしたので、油断しました。」


「言い訳はいい!!。」


そう言って、ボスらしき男は失敗した部下の頭を踏みつける。踏みつけられた男は、もがく様に足をジタバタさせる。


「りゅ、リュウ様。お、お許しください。」


劉と呼ばれたボスは、そのままCz75で部下の頭を撃ち抜いた。


「死体を片付けとけ。」


劉はそう言って、テントの中に入る。他の部下数人は、死んだ仲間の墓を掘り、そこへ埋めた。



「斥候に出した部隊から連絡が入りました。車輪の後を確認し、まだ消えていないそうです。」


部下の男がそう言い、ボスの顔を見る。次の命令を待っているのだ。


「T34をぶつけてやれ。それで、連中の実力を見たい。」


「了解しました。斥候部隊と、第三装甲大隊からT34を出します。」


「計40台の戦車だ。だが、76だから性能は今一だな。」


T34-76。まだ、問題を抱えていた戦車である。劉もそれを理解しているが、指揮官に期待していた。


「指揮官には、原隆司はらりゅうじを充てよう。まだ高校生だが、指揮に関しては十分だ。」




「第三装甲大隊宛て、司令部からです。斥候部隊並びに我が大隊よりT34を使って報復を行う。部隊指揮官は原隆司。」


そう、第三装甲大隊指揮所から原に伝わった。


「俺が、部隊を率いて報復に出向くと?。そんな仕事は正直専門外だ。」


「砂漠で行倒れていたのを救った恩を忘れたか?」


原隆司は、核戦争によって全てを失った。家も、家族も、何もかもを。気づいたら、彼らに救われていた。そして、ほぼ雑用のような扱いを受けては、要所要所にて目を見張る活躍もする奇妙な少年と言うのが司令部の所見だった。


「分かりました。但し、旧式戦車では何処まで戦えるか保障しませんよ。」


「全滅してでも、相手の情報を持ってくるんだ。それが、司令部の意向だ。」


「では、成功を祈っていてください。」


原はテントを出て、指揮下の部隊を率いて集落目指して移動を開始した。



「ようやく、錆取りを終わった。」


途中から、俺一人の仕事になった。中島は簡易自動装填装置を取り付けた。これで、取り敢えず装填手は要らなくなった。


「砲弾積んどいて。いつ出撃になるか分からないでしょう。」


ハッチを開けて油まみれの中島が現れる。自動装填装置の調節も行っているようだ。


「簡易だからね。簡易。あまり連続しての装填はまだ無理よ。改良を加えないと、虎さんみたいな連続装填は無理。」


中島は注意するように言う。王虎号は、冷却装置さえあれば連射砲並みの連続砲撃が可能なほど進んだ自動装填装置を積んでいる。俺は、油まみれの中島の顔を拭きながら


「注意するよ。俺も、代えて早々壊したくないからね。」


その時、砲撃音が微かに聞こえた。俺は急いで窓から外を確認すると、煙が昇っている集落を確認する事ができた。


中島は整備用のクレーンで砲弾を入れている。ってか、それで入れれるんなら最初から入れろよ。


「煙が昇っている。砲弾を補給しだい、出撃する。」


砲弾を急いで入れる。この間にも、何度も砲撃音、爆発音が聞こえてくる。


「急げ。大和さん達が心配だ。」


「私の虎さんもね。」


砲弾を常備半分を積んで、急いで乗車する。日本戦車とは思えないほど砲塔が大型のため、車内も含めてかなりの余剰スペースがある。中島はエンジンを掛け、ガレージのシャッターを開けるスイッチを押す。


「一気に行くわよ。」


ダッシュし、ガレージを一気に飛び出し、砂の段差を苦にならずに力強い走行を見せて、炎上する集落を目指した。

リン酸は目に入れば最悪失明します。皮膚や粘膜に付着すれば炎症も起こします。


もし、上記の状態になったら直ぐに多量の流水で洗い落とし、必要に応じて医師の診察を受けましょう。

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