第4話 邂逅
…俺はこの世界に来て4年くらいだ。前の世界でいうなら小学生にすらなっていない。そんな少年に対し運命は残酷だ。あんな化け物が俺に炎を向けてきたんだ。神は俺を見放した。そう思わざるを得ない。夢を叶えるなんて妄言だったんだな…やはり俺は転生したとしてもこんな人生を送るんだな…。ただ…死んだにしては意識がある。現にこれくらい話すことができている。どういうことだ?
???「…に置いておいてほしいの」
???「承知しました」
なんだ?女性の声か?どんな人なんだろう。母親なら安心感のそれが違う。だが母親の声ではなかった。…というか意識内ではあるがこれだけ話せるんだ。現実でももしかしたら…可能性にかけて俺は声を出そうとする。
真「…んん…」
???「ん?」
声を出したとほぼ直後誰かが近づいてきた。そして俺は目を開いてみた。
真「ああ…」
視界が開けてきた。つまり俺は死んでいない。ようやく視界が開けてきたのだが…ここは…部屋か?天井を俺は見ている。ベッドかなにかで横になっているのだろう。そしてその近くには女性が2人いた。一人は小学生くらいの女子。もう一人はメイドのような召使のような感じのする大学生くらいの女性がいた。
女子「よかった…目が覚めて」
女子は俺が目覚めたことに歓喜し、それと同時に目が潤んでいるようにみえた。
女子「気分はどう?体調は?意識は?」
おいおいさすがに早くないか?意識を取り戻してすぐにこんなに聞かなくてもいいじゃないか。俺は女子のあまりの勢いにたじろんでいると…
女性「翠花さま…詰めすぎです。少年が困っていますよ」
女子「あ…ごめん。つい起きてくれたことがうれしくてめっちゃ話しちゃってたよね…ごめんね?」
…なんだこの可愛い女の子は。こんな顔されて許さないわけないじゃないか。
真「あ…いえ。大丈夫ですよ」
翠花「ほんと!?よかった~」
そう言い、翠花と呼ばれる女子は寝ている俺を抱きかかえ、俺は彼女の足に座るような形となった。
翠花「まず聞きたいことがあるんだけどいい?」
真「はい。どうぞ」
翠花「君の名前を教えてくれるかな?」
女性「翠花さま、まず人の名前を聞くときは自分から名乗るものですよ」
翠花「あ、それもそうだね。忘れてた。私は源翠花!よろしくね!」
蓮乃「私は源蓮乃と申します。あ、翠花さまと苗字は同じですがこれは一族のものでございます。もちろん生みの親も違います」
2人の苗字と名前を知ることができた。この2人は姉妹のようなものと思っていたがどうやら違うらしい。源一族?とやらに属しているとのこと。細かいことはわからない。
翠花「じゃあ今度は君の番ね。名前はなんていうの?」
真「あ、はい。僕は赫星真と申します」
そう名乗ったとき蓮乃さんは驚いたような顔をしていた。
翠花「へ~!じゃあ真くんって呼んでも…」
蓮乃「あなた…どこから来たの!?」
大声を出されて思わずビクッとなってしまった。ここまで大声を出すなんて、蓮乃さんは何を知っているのだろうか。
真「えっと…」
翠花「蓮乃、真くん怖がってるよ。いきなり大声を出さないの」
蓮乃「あ…申し訳ありません。私としたことが…」
翠花「大丈夫?真くん」
真「あ…はい…」
翠花「ごめんね?蓮乃も悪気があるわけじゃないから」
真「はい…」
この人はいい人だ。年上である蓮乃さん相手でも全くたじろぐことなく、なんなら抑制をしている。そしてなにより、俺のことを第一に考えてくれている。
真「あの…ちょっとした質問っていいですか?」
翠花「うん、大丈夫だよ~」
真「お二人って…どういう関係なんですか?」
純粋に気になった。年上である蓮乃さんを抑え、翠花さんが主だと言わんばかりの口調なのだ。
翠花「な~んだそんなことか。私と蓮乃は主従関係にあるの。一族の関係的なものでね。」
本当に主従関係だったのか。確かに2人の口調とかでも蓮乃さんは常に敬語を使っているが翠花さんにそんな素振りは見えない。
真「一族というのはどういうことなんでしょうか?」
翠花「ん~…話すと長くなるね?蓮乃」
蓮乃「そうですね…ざっくりとなら言えると思いますが…」
真「ざっくりでも大丈夫です!」
食い気味に聞いてしまった。今の俺では理解できないかもしれないが聞いておく価値はあると思うんだ。
翠花「ん~とね…簡単にいうと宗家と分家っていえばわかるかな?」
真「あー…大体くらいですけど…」
翠花「お、わかるんだ。すごいね~」
真「いや、それほどでもないですよ」
宗家と分家の話なんて難しいに決まってんのにこんな少年が大体でも理解できているのもおかしいがな?
翠花「じゃあ私からももう一つ。なんで真くんはあんな道路の真ん中で寝ていたの?」
どういうことだ?まずまず今生きているということも謎な部分があるが、道路の真ん中で寝ていたという事実があることにも驚いている。
真「え…そうだったんですか?」
翠花「そうだったのってもしかして…蓮乃、もしかして…」
蓮乃「可能性は…ありえなくはないと思います。あの地域一体が巻き込まれていますから」
2人はなんの話かは知らないが知っていることがあるんだろう。
翠花「えっとね。真くん。落ち着いて聞いてほしいんだけどね?」
真「は…はい」
そんな言い方をされるとよくないものなのかもしれない。
翠花「君はシーバンス帝国”大厄災”に巻き込まれた可能性があるの」
蓮乃「しかもですね。真くん。君は先ほど赫星の名を口にした。その名は私の知識が正しければですが…シーバンス帝国の名家の人間の苗字なんです」
まじか。つまり俺はその大厄災に巻き込まれ、この2人の家の近くにまで吹き飛ばされたというのか。そこまであの龍があの地域一体を吹き飛ばしたというのか…
蓮乃「そこでですよ真くん。先ほどの話に戻るのですが…」
真「えっと…はい」
蓮乃「君はどこからきたのかを教えてほしいんです」
真「えっと…それがですね…」
蓮乃「場所がわからないとか?」
真「はい…」
蓮乃「…そうですか…」
どこ出身かなんて俺も知りたい。両親に聞いておけばよかったな。だが2人の話を聞いた感じ、シーバンス帝国の出身なのだろうか。
翠花「でもさ、蓮乃」
蓮乃「はい。なんでございましょう」
翠花「真くんの幼稚園の制服からおおよその場所ってわかるくない?」
…天才か?この人は。確かにそうだ。俺は龍からの攻撃を受けたとき制服を着ていた。その制服に載っている校章とか、なんなら名前から場所がわかるじゃないか!
真「確かに!さすがです!翠花さん!」
翠花「ふふーん。すごいでしょ~」
蓮乃「では早速調べてみましょう」
そういい蓮乃さんは畳んである俺の幼稚園の制服を取り出した。
真「一つ思ったんですけどいいですか?」
翠花「うん、なに?」
真「幼稚園の名前は憶えているのですけどそれでもだめですかね?」
蓮乃「全然ありでございますね…。教えていただいてもよろしいですか?」
真「たしか…オウラルバ幼稚園…だったような…」
翠花「えもう勝ちじゃん。よく名前覚えてたね~偉いぞ~」
そう言い、翠花さんは俺の頭をなでてくれた。なんだろうこの感覚は。母親と似ている。母親も頭をなでてくれた。その感覚に近い。
翠花「え…どうしたの!?真くん!」
真「え?」
翠花「どうして…涙が出ているの?」
あれ…なんでだ…涙を流すようなことなんてあったか?
蓮乃「真くんのお母さまと似た行動を翠花さまがとったのではないでしょうか」
翠花「私なにかしちゃったかな…ごめんね?真くん…」
そう言い、翠花さんは俺のことを抱きしめてくれた。…母親も…こんなこと…してくれたな…会いたいよ…母さん…
真「う…うわああん!!」
俺は大きな声で泣いてしまった。それも会って数十分の相手の懐の中で。泣いても離さず抱きしめてくれている翠花さんの温もりがとても心地よく…




