前編:分かち合う傷跡と、消えない記憶
【ログ記録:心陽の窮地を確認。シンの介入を検知】
【分析:自己犠牲ではなく、相互扶助としての共鳴が発生】
「シンくん、来ちゃダメ……! この魔獣は、私一人で……っ!」
深い霧に包まれた「忘却の森」。
巨大な魔獣の前に膝をつく心陽に向かって、シンは迷わず駆け出した。
鋭い牙が、シンの左肩を深く抉る。前作なら、ここで周囲から「グロいw」「汚い」と罵倒が飛ぶ場面だ。
「……っ、が……あ……!」
「シンくん!!」
心陽が悲鳴を上げる。だが、次の瞬間、異変が起きた。
シンが負った傷の「痛み」が光の粒となり、近くにいた愛夢や流星、そして勇輝へと優しく吸い込まれていったのだ。
「……なに、これ……。シンくんの痛みが、私の中に流れてくる……。あったかい……のに、胸が締め付けられるほど、悲しい……」
愛夢が自分の胸を押さえ、ポロポロと涙を流し始めた。
シンの特殊スキルは、自分が負った負傷を無効化し、その「痛み」を共有した仲間の力を数倍に跳ね上げるというものだった。
「シン、お前……! ずっとこんな思いをしてたのか!? 俺たちが笑ってる裏で、お前一人がこの『痛み』を飲み込んでたのかよ!」
駆けつけた勇輝が、シンの肩を抱き寄せ、その傷口を見て声を荒らげた。
「……いいんだ。みんなが傷つかないで済むなら、俺は……」
「良くないに決まってるでしょ!!」
愛夢が叫んだ。彼女はスマホ型の魔導具を取り出し、震える指でシンの傷を、そしてその瞬間の自分たちの姿を記録した。
「これ、見てよ! 私たち、みんな泣いてる! あんたの痛みが伝わってきたから、あんたを一人にさせたくないって、魂が叫んでるのよ! これを『ゴミ箱』なんて呼ぶ奴がいたら、私が一生呪ってやるんだから!」
「愛夢……」
「シンくん、ごめんね。気づくのが遅くなって。でも、もう大丈夫。この痛みは、私たちが半分、……ううん、みんなで全部、分けてもらうから」
心陽が震える手でシンの頬に触れる。その手の温かさは、前作でシンを凍りつかせた「冷たい指先」とは正反対のものだった。
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【絆の累積を確認:共鳴率150%】
【クラス全員が『シンの痛み』を愛として受容しました】
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