プロローグ:生存時間、永遠。――「繋がった」鼓動
前作『ハッピーエンドの作り方 ―因果律の最適化に関する最終報告―』の対比作品です。
合わせて読むとより楽しめます
【共鳴因果律、接続。観測を開始します】
【対象:シンおよびクラスメイト全員の魂を同期】
【運命:全称肯定への収束を確認】
「……あ、……」
視界を埋め尽くしたのは、地獄の赤ではなく、命の脈動を感じさせる温かな黄金色の光だった。
喉の奥に鉄の味はしない。代わりに、肺いっぱいに吸い込んだのは、どこか懐かしい花の香りが混じった、異世界の澄んだ空気だ。
見下ろせば、召喚の魔法陣から現れたデーモンの鉤爪が、シンの目前で火花を散らして弾かれていた。
「させるかよ……っ! シン、お前は後ろにいろ! お前がいなきゃ、俺たちは……始まらねえんだよ!」
シンの前に立ちはだかったのは、クラスの中心人物である勇輝だった。彼は聖剣を構え、その背中でシンを庇っている。前作では自分を蔑んでいたはずの背中が、今は何よりも頼もしい盾に見えた。
「シンくん、大丈夫!? 怪我はない!? 今、加護を……!」
「待って愛夢、シンにだけじゃない! 私たちの魔力を全部、シンに預けるの! 彼が私たちの『中心コア』なんだから!」
聖女の杖を掲げる心陽が、瞳に涙を溜めながら叫ぶ。
召喚された直後、システムのバグで一人だけステータスが「0」だったシン。だが、この世界の仲間たちは、その「0」に隠された意味を、誰一人として見捨てなかった。
「……みんな……。でも、俺なんかのために、勇輝が怪我を……」
「馬鹿言うな! お前がいつも、俺たちの知らないところで、みんなのために泥を被ってくれてたこと……俺たちはもう、知ってるんだぜ?」
勇輝が振り返り、不敵に笑う。その瞳には、前作のような侮蔑は微塵もない。あるのは、対等な戦友への厚い信頼だけだ。
====================
【スキル:共鳴する献身発動】
【シンの受けた『心の痛み』を、仲間への『神力』へと変換します】
【共鳴率:100%突破。奇跡の駆動を開始】
====================
シンが仲間を想い、一歩前に出る。その瞬間、クラスメイト全員の装備が虹色に輝き、大気を震わせるほどの魔力が溢れ出した。
これは、一人で消えるための地獄ではない。
全員で、手を取り合って、約束の場所へ帰るための――絆の物語だ。
※本作は、同設定・同キャラによる「救いようのない絶望エンド版」の対比作として執筆しました。絆ひとつで世界がどう変わるのか、その結末を見届けていただければ幸いです。




