領収書2 ラックダックの肉
注意:
この領収書の一部は、現世の生物が使い方を分からないように黒塗りにしてあります。
幽世の商品を見つけた場合、速やかに連絡をお願いします。
今日も今日とて街をぶらぶら。生物やからはよう売りたいなあ、ここの家リフォームしたんかなぁなど考えつつ、道行く人に声をかけ続ける。しかし立ち止まってくれるのは子供のみ、それも商品ではなく私の格好に興味を持って。前の時もそやったなぁ。あんまりにも商品が売れないので、すっかり日も落ちてしまった。
「それ、鴨肉かい?」40代ほどの男が声をかけてきた。まぁそんな感じや、買うていかんか?と冗談混じりに言うと、その男は少し考え始めた。これはチャンスやと踏んだ私は、すぐに商品紹介を始めた。
「これはな、ラックダックっちゅう種類の鴨の肉で、新鮮なやつほど食べた時に幸運になるねん。味ももちろん折り紙つきやで」男が問う。「値段は?調理法は、どうすればいい?」「ウチは代金はお金では受け取らんねん、なんかおもろいもんちょーだいな。調理法は、ウチはやっぱ焼きが好きやな、普通の鴨とほぼ同じ調理でええよ」男はポケットを漁りながら、面白いもの、面白いもの…と呟いている。「こんなのが面白いかはわからんが、このハンドスピナーは代金にはならないか?」私はそれを受け取り、くるくるとまわしてみる。指を添えた部分は回らず、外側だけ回転している。「こりゃぁおもろいもんやなあ!ええで、肉もってき。ただし、生物やし鮮度が重要やからすぐ食べてな」回るスピナーを眺めながら言うと、男はダックの肉を持ち、ありがとうとだけ言って離れていった。
さて、ラックダック?の肉を貰ったのはいいが、妻になんと説明しようか。拾ったことにする?あまりにも意地汚い。正直に話す?捨てられてしまうだろう。そんなことを考えているうちに、家に着いてしまった。手に肉を抱えたままただいまとドアをくぐり、妻と顔を合わせる、「豊さんそのお肉なに?変なものじゃないよね?」案の定、肉について聞かれる。「職場の同僚に貰ったんだよ。できれば早めに食べて欲しいそうだ」なら明日の夕食にしましょうね、と、俺の手から肉を奪い取るようにして冷蔵庫に入れる。そういえば保存法を聞いていなかったな、とおもったが、まぁ普通の鴨とほぼ同じなら冷蔵でいいかと忘れることにした。
正直、あの肉は本当に美味しかった。鴨鍋、炭焼き、どの調理法を試してもおいしくたべられた。しかしあの日から、すっかり運が悪くなってしまった。会社でもミスを押し付けられ、一緒に食べた妻や娘は怪我をしてしまった。次あの商人に会ったら文句付けてやる、と考えながら会社に向かっていると、まさかあの商人とばったり再会した。
「おにいさん、ラックダックのお肉どやった?」どやったもあるか、あれ食べた日から運わるくなったぞどういうことだ!と軽く怒鳴る。「まぁまぁそう怒らんでや。あんた、それすぐ食べたか?まさか1日放置とかしとらんよな?」確かに食べたのは1日後だが、ちゃんと冷蔵庫には入れていた。「あー、あのな、あの肉は特殊で冷蔵庫に入れても─────」
そこで俺の記憶は無くなった、いや、俺自体が亡くなった。運悪く暴走したトラックに突っ込まれたのだ。なんでこんなことに、どうして───
「ラックダックの肉はな、食べられるまで生きてんねん。時間が経つとどんどん自身の恨みが溜まって、食べた時に貰える運が減っていくねん。環境にもよるけど、普通は3日、寒いところなら1日でダメになるわ。ちゃんとウチは説明したで、『新鮮なやつほど』ってな。」ハンドスピナーを回しながら、目の前の死体に語る。
「おい、またこんな所で何をしている」急に声をかけられる「人間の死体は消せと何度言ったら分かる」
「はいはいすいませんなぁ。すぐけしますんで待ってくださいな、大佐。」大佐。幽世の██████の中でも上位の商人だ。全く、お前はこれだからと愚痴をこぼす大佐は、実は大佐と言う名前ではないらしい。みんなが大佐と呼ぶから、その呼び方が浸透している。耳にたこできるわ、とこちらも愚痴をなげかけ、死体を消し、その場を去った。
はじめまして、蝶番です!
まさか私が失踪せず2話目を書くとは…実はこのお話、1話が描きたくて衝動的に作ったものなんですよ。
さて、今回最後に出てきた「大佐」、次回は彼女のお話にしようかなと考えています!乞うご期待!それではまた会いましょう!




