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森と湖と砂漠  作者: まある
9/25

望みの木

あるう日ィ~チャラランランラ~。


私は、気分良くうたを歌いながら森の中を歩いています。朝ごはんもバッチリ食しました。お腹が満たされると気分も豊かになるものですね。


ああ、くまさんには出会ってませんよ。



私の背中にはリュックサック。本日は、果物狩りです。楽しみですね。生ものですよ。滴りますですよ。ジュルルですよ。


メリンダさんの記述にあった方向へ足を進めます。で、歩きながら考えていたのですが、日記の中の何かが引っかかるのですよ。具体的に説明はできないのですが、違和感を感じる訳ですよ。


ああ、ハッキリしませんね。こういうときは、歌うに限ります。


私は、これでもか! といわんばかりに、歌いました。

フフッ。音階なぞ無視です。いや、一般的にオンチというのでしょうか?

エエッ?! 暗に私が音痴だと言っている訳ではないのですよ。今だけ、今だけなのですよ・・・・。


そうこうするうちに、数種の果物らしき実物がなっている木々を見つけました。

ああ、本日よりデザート追加です。

これで、パスタがなくなっても飢える心配がなさそうですね。あのドライフルーツもきっと非常食用だったのでしょう。


果物の木々の先に、広々とした草原が出現しました。そして、


チャラーラ、ランララ、ララララー。


はい、これで判った方、私が音痴ではないことが証明されましたね? ああ、そんなことよりですね。私の目の前に大木が出現しました。


それにしても、なんて大きな木なのでしょうか!


登りがいがありますね。違いますね。


幹の太さが裕に2メートルは、あるでしょうか? 枝ぶりもすごくて、横に広がり、葉をこんもりと茂らせています。見上げると、そのまま後ろに反り返ってしまいそうです。


これが望みの木で間違いないようです。望みの木ですか・・・。ニヤける顔を置いといてですね、一丁、口にしてみますか? 私は木の前に立ち、腰に手をあてて、


「家に帰りたーい!」


声を張り上げました。


「たーい。たーい。たーい・・・・・。」


私の声がやけにこだまします。


   シーーーーーン


OK OK 

望みの木とは、これまた大きく出たものじゃないですか!


「あーもう、がっかりですよ。望みの木なんかじゃないじゃないですか! それに果物のみの生活って、どうなんですかね・・・。日本人といえば、米っしょ。お米。それに梅干! 味噌汁! あーもう、から揚げに肉じゃがにオムライスに、あれもこれも食べたーいいい!」


思わず叫んでしまいました。ハア、ハア息切れです。すると、大きな木の枝から、プクーと膨らみ始める物体を目にしました。呆然と見ている私の目の前で、大きな黄色のパンプキンのような実は、ドンドン膨らみ、直径50センチほどになると、ドゴッと鈍い音を立てて落ちてきました。


思わず、実を凝視。そして、枝を拾ってツンツン。

動かない。

よし、生き物が入っていないようです。と確認をしている間に、再び、ドゴッと頭をかすめて落ちる音がしました。


曲者?


私を頭を狙う不届き者は、どこですか? 辺りを見回すと、すぐ側に同じような木の実が落ちていました。そして、三度目、ドゴッ。


怖い、怖いデスゥ。果てしなくホラーです。

黄色の木の実が私の命を狙っているのです。私は、そろり、そろりと後退しました。そして、かなり離れた場所から木を観察。しかし、あの3つが落ちた以降、木に実が生ることは、ありませんでした。


これは、一体どういうことでしょうか?


私は、恐る恐る近づき、大きな木の実をゴロリゴロリと転がして、大木から離れた場所で、中身の確認をすることにしました。簡易ナイフを取り出して、小さな穴をあけました。すると覚えのある匂いが、木の実からするではないですか?


ええっ? これは、梅干の匂いです。急いで、指を突っ込み、取り出しました。どこからどう見ても梅干でした。思わず、口に入れてしまいました。


「すっぱーーーい!」


うれしさのあまり、目一杯叫んでしまいました。でも一体どういうことでしょう。巨大な木から、あっという間に実がなり、梅干が出てくる。


・・・・・・・。


望みの木。


ああ私、腹が立って最初に口走った言葉。梅干、米、味噌。

まさか? でも、からあげは? 肉じゃがは? オムライスは出てきませんでしたよ。加工物はダメなのでしょうか?


口に出した願いが、叶うから望みの木? でも「帰りたい」と言っても叶わなかった。物限定ですかね?


じゃあ、


「どこでもドアーーー!」



「ドアードアードアーー。」



    シーーーーーン。



私、バカみたいじゃないですか。この年になって、こんなことを叫ぶなんて・・・。


これは、羞恥プレイなのですか?


まあ、いかにも不思議系は出てこないようですね。それがわかっただけ、良しとしましょう・・・。じゃあ、


「小麦粉」 「油」 「しょうゆ」


幾ら叫んでも、望みの木は反応をしてくれませんでした。一度に多くを望むのは、いけないことということでしょうか・・・・。


本日は、お米、梅干、味噌をゲットだぜ!


ハア、帰りますか。


私は、何度か往復をして家に木の実を持ち帰り、果物を食べられる分だけを取りました。そして、モチロン感謝を忘れずにしました。


「望みの木さん。ありがとうございました。今後、お世話になると思いますが、よろしくお願いします。」


ふう、これって嫁入りのようですね・・・・。それにしても、至れり尽くせりの状況じゃないですか? 消えない火、溢れる水、果物、そして望みの木。

なんとかして、この森と湖に私を留めようとしている気がするのですが・・・・。


ああ、深く追求しても非現実的なことには変わりがなく、全てのことを知ろう、知りたいと思ったり、原因の究明を望むのは、現代人ゆえなのでしょうか・・。何かに巻き込まれ感が、ビシビシするのですが・・・。


まあ、良しとしましょう。

なんにしてもお米が食べれますよ! 

お味噌汁ですよ! 梅干ですよ!


ああ、楽しみですねえ。


私は、かなりの上機嫌で一日を過ごしました。

能天気娘。

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