見知らぬ女性
ヌヒヒ・・・・。
お風呂場で体を洗い、裸のままお風呂掃除・・・。外から丸見えー。
いやん。
・・・・・・・・・。
この森に来たときから、不思議と思っていたことがあります。鳥のさえずりは聞こえます。でも動物の気配がしません。ふむ、野生ですし、人に姿を見せないのは当たり前なんですけれどね。それで裸オーケーの理由にならないのですが・・・。
まあ、いいじゃないですか兄弟。
着替えをしてもなんだか私は落ち着きがありませんでした。このスリスリとした肌触りに慣れません。シルクですよね。これ。
ウヒヒィ。
ちょっとスースーするし、紐だし、今までいかに、自分の体が服によって締め付けられていたことを実感します。
そう、私は今、開放された気分なのですよ。フリーダム!
ああ、そんなことより掃除の再開です!
このさい、自分の服は雑巾として役立ってもらいましょう。私は、一日をかけてログハウス内を掃除しました。
夕飯は、塩茹でしたパスタとドライフルーツに砂糖を加え、お湯で戻したものです。不思議と台所には、塩とお砂糖があったのですよ。不思議ナンバースリーと名づけましょう。でもまあ、
ありがたいです。
そしてお風呂場で、汗を流しついでに洗濯をし、天日干しをした布団に寝転がります。手には、紙の束があります。
実は、掃除の時に発見をしたのです。本棚の側の机にありました。どうやら家主さんの日記のようです。分厚い精製されていない紙を麻紐で結んだ簡易ノートです。ああ、本棚の本は全てアラビア文字のようなミミズのような字なのです。(アラビア文字をミミズと言ってすいませんです。)それもしかも皮表紙なのですよ。
で、日記の文字は全て英語なのですよ・・・・・。バイリンガル! あっ違うか・・・・。
おおっそれで納得!
あの洋服の数々。外国の方ならば体格がよろしくても、あのスリップワンピを着ても似合いそうです。
まあ、私も四分の一ほど北欧の血が入っていますが・・・。ですから見た目は、黒目、黒髪ではありません。薄い茶色の髪に白い肌に青黒い瞳をしています。先祖返りと言われます。亡くなったお母さんのお爺ちゃんが、フィンランドのお人なのですよ。
何度も生活指導の方に呼び止められます。その度に、水戸黄門さんのように生徒手帳を出して保護者&校長先生の一筆を「ひかえおろう」状態で見せると納得していただけるのですよ。
ああ、そんなことじゃなくて日記ですよ日記。理解できる単語だけをさらって読み進めていきます。それでわかったことは、
彼女の名前は、メリンダ=ギャザリンさん 女性ですね。23歳です。イギリスのロンドン在住。この森と湖に、いきなりやってきたことに驚いていました。そして、ログハウスを見つけて住み着いたそうです。釜の火、青いバケツに驚いたという記述があります。
あと、大きな木に望むもの? 果物の木?
なんですかそれは・・・・。
フウ・・・・。見た目は外人なのに、私の読解力のなさにげっそりですよ。これこそが先祖がえりの恩恵を受ける所のはずなのに・・・。うん? 英語のできと先祖がえりは関係ないと・・・。へへへっ。
私は、ため息をついて日記を読むのを止めました。日記には、彼女の生活の苦労と孤独の寂しさ、郷愁が書かれてありました。彼女が辿った道は、私と全く同じなのです。読みながら、思わず泣いてしまいました。まだ、ここには書かれてありませんが、私は一つの疑問をヒシヒシ感じていました。
ここは、本当に日本なのでしょうか?
この場所は日本であるということを否定すべき材料が幾つか揃っています。
消えない火。
絶えない水。
下水道が通っていない。
電気が通っていない。
道路が見当たらない。
そして、イギリスから来たメリンダさん。
泣けてきます。いや、もうすでに泣いています。
帰りたいです。お父さん。お兄ちゃん。まりっぺ。アコちゃん。
どうしたらいいのでしょうか?
そうです。メリンダさんに会えばいいのです。ここに住んでいたメリンダさんは、今いないということは、この森と湖に囲まれた場所から、どこかに行ったのです。希望が見えてきましたよ。こうなりゃ、ど根性でやってやりましょう。明日は、日記に書いてあった、望みの木&果物狩りでも行きましょう。
一歩一歩前に進んでいきしょう!
ようやく主人公の容姿が出てきました。ホッと一息です。
そして第三者の登場といえますかねえ?