青年実業家
私は木から降りて、こり固まった体をほぐすため、日本人なら誰もが知っている例の体操をしました。
モチロン、第二までしましたよ。
それから、身だしなみを整えました。いくらセクシーでも汗まみれはいただきません。私は、チョコレートのかけらを口に入れて、一息入れました。
お腹が固形物を所望しています。
わかってます。わかってますってば・・。
本日は、食料になりそうなものを探しつつ、湖の周りを歩いてみましょう。道が見つかるかも知れません。できれば、車が通ってそうな道を所望します。タイヤの通った道をたどれば、道路にでます。ああ、できれば人が住んでいる家があれば、なお幸いです。電気が通っていて、ベッドがあって、おいしいご飯があれば・・。青年実業家なんぞが別荘として利用していてですね、
「なんてかわいそうに、よくがんばりましたね。すぐに警察に連絡をしましょう。それまでゆっくり滞在してください。」
と知り合いになってですね。愛が芽生えるわけですよ。
ウフッ。イヒヒッ。アハァー。
・・・・・・・・。
すいません。欲を言い過ぎました。
私は、明るくなるまで草の上で大の字になって寝てしまいました。やはり、木の上ではまともに寝ることはできなかったのと、体の疲れが取れなかったのでしょう。いつまで、気力、体力あと、まともに思考ができるのでしょう。
ええい。ぐずぐず考えても仕方ありません。
まずは一晩生き残ることができました。次の生きる道をさがしますよー!
気合を新たにポクポクと歩き出しました。
それにしても綺麗な湖です。朝日が湖面に当たってキラキラ揺らめいています。風が凪いで、緑の匂いを運んできます。鳥が、ピーヒョロロと鳴くのが聞こえます。
これです。これですよ!
ああ、なに和んでいるのでしょうか・・・。
自分の能天気さに一人突っ込みを入れつつ、黙々と歩きました。体力は目に見えて、磨り減ってきていました。少し歩いただけで、体が休憩をしろと脅しています。ここは素直に従ったほうが良いようです。
休憩を何度も挟み、日が暮れるまで歩き続けました。その頃、私は完全にやさぐれモードに突入していました。これは、かなり根深かったです。
髪を振り乱し、地団駄を踏んで暴れて叫びました。
涙を流し、自分をさげすみ、人をののしりました。
体力の底をついた体で暴れたものですから、息が切れ、私はその場に倒れこみました。
相も変わらず風にのってくる、木々の匂いと葉のこすれあう音。家に戻ったら、私は二度とキャンプなんか行かないでしょう。
何が森林浴ですか!
マイナスイオンですか!
現代っ子は、マンションの屋上庭園で十分です。
飽食の中を闊歩していればいいのです!
私、バカですね。
私は起き上がって、本日お世話になる木を探しました。すると彼方遥か先に、ログハウスらしき建物を見つけました。リュックから双眼鏡を取り出し確認をしました。
皆様ありがとうございます。
青年実業家です!
ああ、違う。
生き延びれそうです!
ようやく新たな展開に入りました。
それでも・・・・・。