過去の真実
主人公の言語能力の向上により、異国語「」となります。
彼らが元気になっていくと、私が予想をしていた通り、荷運びの手伝いを申し入れてきました。今のまま、私が往復し続けることは、効率があまりにも悪いです。
もし、私が怪我や病気をして、シスタニタータに来れなくなったら、彼らには再び飢えが待っています。私にすがるのは、当たり前のことなのです。それでも私が、彼らの申し出に素直に頷けられなかったのは、シスタニタータに来た最初、ジェライドが私の足に服従を示すような、足にキスをしようとした行為とメリンダ師匠の日記の内容があるからだと思います。
そう、私は彼女の二の舞になることだけは、避けたかったのです。読み取れなかった日記。それがさらに私を不安に駆り立てていました。
私は、おばあちゃんの枕元に腰を降ろしました。浮かない顔でいる私に、おばあちゃんは、
「どうした。」
いつものように私に手を差し伸べてきました。
「おばあちゃん。」
「何か悩みか?」
聞き取りやすいように、ゆっくり丁寧に話してくれます。何度、おばあちゃんに真実を伝えようかと思い悩んだことか。話してしまえば、私自身が楽になれます。でもその代償は、なんでしょうか?
「わしに、言いたいことがあるのだろ?」
「う、うん。」
私は、思い切って告白をすることにしました。
きっとおばあちゃんなら、受け止めてくれるかもしれません。それに助言をしてくれるかもしれません。真実を話したとしても、皆に内緒にしてもらえばいいのです。
「おばあちゃん。私、国、人間、違う。驚く?」
おばあちゃんは目を見開いた後、目を細めて柔らかく微笑み、私を見た。
「その肌、髪、瞳を見れば、この国の人間ではないこは一目瞭然だろうて。が、ハクアの言いたいことは、そうではないのだろう?」
「うん。私、遺跡、来た。」
おばあちゃんは、再び瞳を閉じて何か思案しているようでした。
「わかっておった。皆も知っておる。いつ、お前が言い出すのか、このまま黙ったままでおるのか、そして何に悩んでおるのか知っていた。」
「そうなんだ。」
私の一挙手一投足を見ている皆なら、ここ最近の私が何か思い悩んでいることは、丸分かりだったんだね。
ふう、恥ずかしいな。
「私、神、違う、人間、貴方達、友達。」
これが本当に伝えたかったこと。私がメリンダさんのように苦しめられることを恐れていました。
「この村は、忘れ去られた村。かつて栄えたエンリトリオの成れの果て。」
おばあちゃんは、まるで吟遊詩人のよう音を伴った言葉を紡ぎました。それにエンリトリオって言いましたよね?
「エンリトリオ。」
ようやく、メリンダさんと繋がる単語を実際に生きている人の口から聞けました。この地にいる人間から聞けたことに興奮をしたものの、おばあちゃんの悲しそうな様子を見て、メリンダさんのことを聞けませんでした。
「ハクア、お前はエンリトリオを知っているのか・・・。」
「うん。メリンダさん、日記、書いていた。それ、読んだ。」
「そうか・・・。」
痛みを滲ませた表情。
なんだろう、その先を聞きたいのに聞きたくありません。きっと、良い話ではないのでしょう。逃げ出してしまいそうになる心を必死で押さえ込みました。
「昔、我らは過ちを犯した。遺跡から現れた女性を神の使いとして崇めた。神の使いは国、王のもの。その女性は、王と婚姻を結ぶ予定であった。」
「えっ? メリンダさん、恋人、いる。王、結婚、しない。」
「男は処刑された。」
「処刑って・・・・。」
私は、紙を引き出し、おばあちゃんが話した単語を見た。
処刑。罪を犯した人間を罰する、重い刑。その人間の命を奪う。
持っていた紙が震えるのがわかります。メリンダさんと恋人である男の人に、なにが起こったの? 読み取れなかった日記の結末は、引き離された事が書かれてあったの?
でも、おばあちゃんが続けて話した内容は、私を愕然とさせるものでした。
シリアス一直線。続きますよー。