疑問
きついっす。死にそうです。
メリンダ師匠、心が折れてしまいそうになる不肖の弟子をお許しください。
今、私は夏版サンタクロースの実演をしています。お手製のそりに、たくさんのオモチャいえ、水に硬いパンに果物、その他モロモロ。
ええい! 全部重量級じゃないですか! 水って案外、重いものなんですねー。
ああ、感心している場合じゃないです。昨日の倍かけて、洞窟へと進んでいますが、もうあかんです。
いくら私でも根を上げそうです・・・・・。
洞窟との往復も考えたのですが、私の体力と気温を考慮に入れた上、あっさり却下になりました。
じゃあ、一度に持っていく量が多くなるのは、自然の銘でしてね。
ぐぅえぅおぅー。
乙女らしからぬ声をあげつつ、この重量級のそりと戦っているのですよ。
私は洞窟につくなり、バタンキュー。
「ヒーヘーハー。」
大の字になって、地面に寝転がります。
驚いたジェライドが、ズリズリとはいずってきて、手を伸ばして私の頭を触って、心配そうな顔をしました。
私は、彼の手をとって自分の頬に当てました。
この骨と皮だけの細い手。
それでも彼らは生きている。
こうやって、私を心配してくれる。うん。大丈夫。私、がんばれるよ。
私は、紙をゴソゴソ出して、目の前に出しました。そして、昨日と同じように、単語を指差して、
<おはよう、食べ物、もった、みんな、くばる。>
<おはよう、ありがとう、からだ、だいじょうぶ。>
<ありがとう、だいじょうぶ。>
私は、ピースサインを出してニッカと笑うと、ピースサインを不思議そうに眺めて、同じように真似をして笑いました。
うん。笑うことができる。
彼は、大丈夫だ。
生き抜く力を持っている。
私は、彼に果物と固いパンと水を渡してから、他の人のところへもまわりました。
きっとこれだけの量では、お腹一杯には、ならないと思います。それでも飢えることありません。
きっと胃も小さくなっているから、一度に食べれないだろうし。自力で食べれない人には、私特製のジャムをスプーンで口に運びます。全員に配り終わり、全ての作業を終えると、もうぐったりです。休憩をはさんで、私は森と湖の世界に帰ります。
それを一週間ほど続けると、彼らは、体は細いままだけれど、自力で動けるようになっていました。
その驚異的な回復には、あの湖の水や森の果物が一役買っていそうですが、もともと生まれ育った環境のせいか、体力の差か、たくましいのか・・・。
すごいっす。
で、私といえば逆にホソマッチョに変身しつつある・・・。細くなっていくのは、うれしいけれど、ムキムキ筋肉はいかんともしがたい。
ああ、私の青年実業家、もしくは王子様が迎えにー。なんて設定がガタガタ崩れていってですねー。逆に、
「私が助けてあげるよ。」なんて、私が王子を姫抱きするんかい!
ああ、ダメです。疲れのあまり、思考があらぬほうへ転がっていきます。ジェライドが放心している私を見て、
<ハクア、大丈夫?>
<ああ、ごめん。ちょっと、ゆめ、みた。>
<?>
そうです。砂漠を往復中にですね、必死に単語を覚えて&ジェライドにもご協力をお願いしてですね、私なんとか話せるようになったのですよ。まだ、難しい言葉は無理ですけれどね。
私は、ある場所へと向かいます。
皆が動けるようになったわけでもないんですよ。中には、手遅れな人もいました。床から離れられないんです。
もう、お歳というせいかもしれませんが、
<おばあちゃん。きた。>
<ハクアか・・・。>
私は、おばあちゃんの枕元にチョコンと座ります。
<元気か?>
<うん。大丈夫。みんな、心配、すぎる。>
皺だらけの手を伸ばして、私の頭をサワサワしてくれます。
私は、ルゴナルダさんが好きです。この女性の側は、とても落ち着けます。私は、知り合った人達の中でも、ジェライドの次にこの女性と一緒にいることが多いです。
なんででしょう?
全てを優しく真綿でくるんでくれそうな気がするんです。
一人で生活してきた、2ヶ月。精神的に、甘えられる存在ができたようで、うれしいんです。
<ハクアー。どこいるのー。>
<呼ばれてるの。>
<イスナ。遊ぶ、約束。>
<そうか。いっといで・・・。>
<うん。>
この洞窟の村の名前は、シスタニタータ。
生き残った人たちは、全員で11人。昔、40人ほどの村だったそうです。村を出て行った人よりも、ここで息を引き取った人が多い。
付いて回る疑問。私が聞いても良いことなのでしょうか・・・。
岩だなの近くにある墓地には、彼らの手によって新たに作られたお墓があります。墓を悲しみに暮れることなく、淡々と作っていく様を見て、私の中でくすぶり続けている疑問を彼らに、聞くことがどうしても出来ませんでした。
たくさんの人物が出てきましたが、全員を物語に登場できるのか
怪しさ満天です。