相反する土地
手に砂を触って、サラサラと指の隙間を流れ落ちるのを眺めます。
「これは、棒取りゲームがエンドレス状態・・・。」
棒取りゲーム・・・。懐かしいですね。
砂山の天辺に棒を差してですね、お互いに砂を交互に削っていくんですよ。棒を倒してしまったほうが負けです。
朝礼中、こっそりと友達としていたのが思い出されます。だって校長先生の長話、有名でしたから、全校集会は、いつも体操座りでした。あの、こっそりするスリルたまりませんねぇ。
ああっ?!
そんなことよりですよ。
私は、ちょいと散策にでましたが5分でギブアップをしました。ザックッと踏み込むと、ズズッとかかとから足が後ろに落ち込みます。思ったよりも進まない距離に、照りつける太陽に気が焦ります。吸い込む空気にのどがヒリヒリします。干からびて乾物になりそうです。
私は森に戻り、出直しを決めました。
湖で体を浮かばせて、しばし瞑想タイム。
もんのすごい落差。水をたたえるこの土地、白木をはさみ出現した砂漠。対極にある状態で存在する土地。
なんだろう、こうツキンツキンと胸を突くものがあります。これが、ビシビシ巻き込まれ感の意味ですか?
それにしても気になったのが、
オアシスの消失。まるで長い年月を経たかのような滅んだ遺跡。エンリトリオの町が存在していないことです。
もしかして、メリンダさんがこの森に生きていた時から随分と年月が経ているんでしょうか? もしかして、おばあちゃんになったメリンダ師匠との再会になるのですかねえ?
山越えと砂漠探検。
どちらが危険でしょう?
そりゃ、山越えのほうがまだましでしょう。なんの知識もない、まして手助けをしてくれるラクダさえいない
中で、徒歩で砂漠の旅なんて命を差し出すようなものです。
地図さえあれば・・・。
地図。
って、白亜さん気づくの遅すぎですよ! 「のぞみ君」にお願いをしてみましょう。
あとは、メリンダさんの日記を早々に読んでしまいましょう。そこに必ず解決の糸口が見つかるはずですよ!
メリンダ師匠。待っていてくださいね。お孫さんのお顔を拝見しに行きますから。
水も滴るいい女状態で、いえ、ぬれねずみ状態で「のぞみ君」の前にいます。
「のぞみくーん。エンリトリオの地図くださいな。」
のぞみくん。ごめんね。これじゃあ、商店にお買い物に来ているお姉さん状態だよね。
プクーっと身がなったので、中身拝見!
「だめだ。こりゃ・・。」
動物の皮で出来ているのか、紙としては重さとしなり感がある平べったいものに刺青のように藍色で書き入れてある地図。
遺跡
オアシスを示す椰子の木数本
家のマーク
岩、サボテン後はなし・・・・。
私の頭に描く地図とは全く別物でした。非常に簡素。小学生の地図か・・・・。いや、今どきの小学生のほうがよっぽど地図記号を駆使して書いているはず・・・。この地図を描いた人は、大真面目だったんだよね。そうだよね・・・。それでも・・・・。
「この地図書いた人。でてこいやーーーーー!」
いけません。白亜、落ち着くのですよ。もともと砂漠には、目印となるようなものが存在しないのです。距離だって、詳しく測るのは難しいはずです。地図があるだけ、ありがたいじゃないですか。
ほら、落ち着いてよく眺めてみましょう。
あ、だめ、怒りがこみ上げてくるだけです。いや、待ってください。私の頼みかたが悪かったんじゃないでしょうか? 大丈夫。あと、2回チャレンジできますよ。
「現在の遺跡周辺の地図をよろしくお願いいたします。」
のぞみ君を睨んでしまう。いや、ねえ、君が悪いんじゃないんだよ。でもね、手助けになるものが欲しいんだよ。
わかるよね。
木の向こうに広がる砂漠。人がいない、メリンダ師匠もいない。私はこのとき、元の世界に帰れないかもしれないとした不安を漠然と感じていたのかもしれません。メリンダさんとも再会できる可能性も少なくなった。だからこそ、誰でもいいから、この世界の人間に会いたいの。
一人で生きるには、寂しすぎる。
狂ってしまいそう。
膨らんだ実に近寄り、祈る気持で地図を開ける。今度は、ちゃんとした紙でした。
ビンゴ!
先ほどより、細かく書かれた地図。
遺跡を囲む砂漠に目印となる、岩、サボテン、動物の死骸、
洞窟のようなマーク、そして砂漠を囲む山。
山の遥か先には、町、海に浮かぶ船。
これです!
私の目指すものがはっきりとしました。実際に岩とサボテンに行き、距離を掴んでから、洞窟に行ってみましょう。
メリンダ、ゴー!
ようやく、人に出会えそうです。