砂漠
***********************************
あの村から飛び出してから何日が絶つのだろう。ボロ布に身を包み、歩くこと数日。俺の体力は、底を尽いていた。
目の前に見える、骨だらけの動物のように、このまま、のたれ死ぬのだろうか。いやでも、あのまま村で朽ち果てるよりは、よっぽどましだ。井戸の水もまもなく枯れる。それなのに、あの場にしがみついて、過去の妄想に取り付かれ死を待つだけの奴らと俺は決して、運命を共にするつもりなぞない。俺の後ろでドサッと音がした。
「アルナ頑張るんだ。」
枯れ切った唇をなんとか動かし、幼馴染である、アルナに声をかけ、手を差し出す。ぐらつく彼女の手を再び強く握り締め、俺は歩み続ける。
俺は、いや俺達は必ず生き抜くんだ。
そう心に誓い、道なき砂の上を歩いた。
***********************************
今、私は白い木の前でウーンと唸っています。
朝から私はかなりハイテンションでした。前日から、お出かけに必要な物を書いてですね。紙の見出しには、「エンリトリオ観光」などと書きましてね。
リュックサック、傘、水筒、お弁当、お菓子。準備オーケー。で、今、白い木の前にいるのですよ。
改めて白い木を見ると、不思議な物体ですね。
白い幹は、白樺のようでまだ容認できます。で、薄紫の葉は、どうなのさ?
全体的には、キレイなのでしょう。こうなんていうんですか? 周りの木が青々しくって、とても元気もりもりなんですよ。その中にポツンと儚げに存在するんですよ。
マッチョのなかにやけに線の細いホソマッチョがいる感じ? いや、おかしいか・・・。ああ、何十人もいる体育体系の中にメガネをかけた細い文学系一人ポツンといる感じです。
じゃなくてですね。これ、入るんですかね?
メリンダさん、あなたなんて男気が溢れた方なのでしょうか! 白亜! いけません。お師匠様に続かなければ!
「おしっ!」
気合を入れて行きますよ!
・・・・・・・・。
まずは、手から・・・・・。
メリンダさんは、森とエンリトリオを行き来していたようです。日記にもそう書いてありました。それは理解していますが、頭が納得していません。まさかですよ、又別の場所に繋がっている可能性もあるじゃないですか? はたまた、接続が間違って、頭さん、さようならーなんてことあったら?
だめ! だめですよ!
死んじゃいますよ!
で、手からー。
木のうろの中に体を入れ、突き当りの暗闇に手を伸ばしました。すると、指先にある空間がまるで水に水滴を垂らしたような円を描き、ゆがみ、指を吸い込んでいきました。指の先には、なにも触りません。ただ、森とは違う気温差を感じました。
ひょいっと指を抜きます。
そして手を眺めて、
「一、二、三、四、五本。大丈夫。揃ってます。」
欠けることなくもどってきた手を見て、私は、深呼吸をしました。
「白亜! 女の見せ所ですよ! 」
頬をバチンと叩いて、
「おりゃーーー。」
暗闇に体ごと突っ込んでいきました。そして私は、目の前に現れた景色を見て、
「なんじゃーこりゃー!」
叫んでしまったのは、仕方ないことです。だって、メリンダさんの言っていた「美しい町、エンリトリオ」はどこにもありませんでした。そこには、ただ見渡す限りの砂漠が広がっていました。
乾いた風の音。
痛いほど照りつける太陽。
熱気。
目をこすっても、なんども目をつぶっても360度見渡しても砂漠。
「さばくー?!」
私は、朽ち果てた石を横目でみながら、ただ呆然と広大な砂漠を見つめていました。
ようやく、題名の砂漠が出てきました。
でもまだ、主人公誰とも話していない・・・・。