異世界
いや、あのね。
メリンダさんに会いに行くーって啖呵きったのはいいのですが、根本問題をすっかり忘れていました。
ここどこですか?
日本じゃないって薄々気がついていましたよ。いくらお馬鹿な私でもわかりますよ。じゃあ、日本じゃないとしたら、イギリスですか? だって、メリンダさんイギリス出身だし・・・・。
だから、ここ地球ですか?
世に言う噂のトリップですか?
穴が開いて、落ちましたとかいうのですよ。地震やら水やらなんやらですよ。えっ? もしかして私、死んじゃっているとか! で神様が私の不幸を悲しんで、転生させたとか・・・・。
いけない白亜さん! とうとう、気がついちゃったんだ!
かーなーりー、避けていました。無茶苦茶、目を背けていました。そう、背中が反り返るぐらいですよ。
だって、木から他の国に行けるってどう考えてもおかしいでしょ? エンリトリオという名前だって、聞いたことないし・・・。
大体この森だって、不自然ですし・・・・。不思議ナンバーが幾つもあるし・・・。
まあ、考えてもしかたありません。これは、行くべし。行くっきゃない!
メリンダゴー!
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エンリトリオは、とても美しい町だった。
砂漠の小金色の中に、緑をちりばめたオアシスがあり、その中に灰色の遺跡がひっそりと佇んでいた。
自分が住んでいた土地、イギリスとは全く違う景色に感慨を覚えたのかもしれない。
そこで出会った人たちは、私の肌、髪の色、目の色、服装にひどく驚いていた。
それにしてもここは、アラブ? アフリカ大陸のどこかの国なのかしら?
私の目の前にいる人たちの肌は浅黒く、髪も真っ黒、服装も古代ギリシャみたいに一枚の布を器用に体に巻きつけている。森から抜けて、別の国にたどり着いてしまった。本当に不思議なことが起きるのね。
住人に話しかけても、どうも言葉が通じないみたい。それよりもいきなり遺跡から現れた私を見て、何十人という人々がひれ伏してしまった。困り果てている中、杖を持ち白い長いひげをたくわえたお年寄りの男性が進み出て話しかけてきた。
ああ、困ったわ。やはり何を話しているかわからない。
早くイギリスに帰りたいという心とは裏腹に、なぜか再び私は神殿の中に連れて行かれた。私は、神殿の奥にある一室に連れられ、湯浴みをし、絹の服に着替えさせられ、食事をとった。どうやら、この神殿で泊まれということかしら?
でも、よかった。
こんな未開拓な土地で危害を加えられるかと思っていたから・・・・。大切に扱われているように感じる。なんとか話が通じるようにしなくては・・・。
なぜかそれから数日が経ても私の生活は、神殿の奥だった。
ある日、いつもより念入りに化粧を施され、服装も整えさせられた。そして、神殿中央の階段の最上部に連れて行かれた。そこで目にしたものは、私を慄かせた。何百人いやゆうに千人は超えているかもしれない。それほどの数の人間が、遥か神殿の眼下に皆、跪いていた。
これはどういうこと?
そして私に何をさせようとゆうの?
私はただ、青ざめ立ち尽くしている中、初めて会ったときから毎日のように、私の元を尋ねてきていた老人が、その細い体から驚くほど大きく響き渡る声で何かを話した。しばらくすると、耳を覆いたくなるような大歓声が沸きあがった。老人は、私の方に向き直った後、階段の最上部にいた人間全員が私に跪いた。
お願い、誰か説明をしてちょうだい。
何が起こっているの?
私をどうしたいの?
私はどうなるの?
私は、ただ呆然とその光景を眺めるほかなかった。
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主人公。
なんなんだかなあ・・・・。