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森と湖と砂漠  作者: まある
11/25

お師匠様

本日は、朝から味噌煮込みうどんなぞを作っております。鍋をまぜまぜしていると、一見魔女が、


「ヒーヒッヒッヒィー。」


訳のわからない擬音を発してですね、ぐつぐつと紫色の煙を出し、ドクロがチラリと見え隠れする鍋の中身、なんて雰囲気とぴったり一致するのですが、あえて、もう一度いえば、


「味噌煮込みうどん」なんですよ?


ああ、すいません。

今日は朝からシトシトと雨が降っています。こんな肌寒い日は、暖かいものが食べたくなりますよね。七味がないのがひどく残念でたまりません。ここは、雨の中「のぞむ君」に頼むかな?


「望みの木」って言いにくくないですか?

「のぞむ君」のほうが親しみを込めて呼べますしね。ああ、待って、もしかして女の子だったら、失礼でしたね。

ここは「のぞみさん」ですかね? うーん。のぞみさんかあ、ちょっと他人行儀かな?


「ムー君」「むーさん」「ぞっ君」「ゾウ」「ぞうりむし」

「のぞき」 ・・・・・・。


ちょっとどうでも良くなってきちゃった。後半、おかしいし・・・・。「のぞむ君」でよしとしましょう。男の子ってことで決定。


湖の周辺の地図は、ほぼ出来上がりました。

それでわかったことは、「この湖は森と山に囲まれている」です。

平原が広がっているのは、このログハウス周辺とのぞみ君の周りだけなのです。その平原も思ったより広いんですよ。野球ができそうなぐらいです。まあ、そこに果物の木もあるので、遠足に行って、「おやつの中に果物は含まれますか?」と先生に聞けない状態ですよねー。だって目の前に果物がなっているんですもの。先生ダメって言えないねーうん残念。


ごめんなさい。


そうです。これでも落ち込んでいてですね。帰るために地図を作っていたのに、調べた結果は山越えをしないと元の場所に戻れないなんです。ちょっと、いえ、かなり残念な結果になりました。ついで、雨も降ってきたので、少々気分的に鬱っぽくなってしまいました。


で、食事をゆっくりと時間をかけて作りました。暖かいものをお腹一杯食べて、のんべんだらりしましょう作戦ですよ。でもですね。このログハウスの中にいると、一人をヒシヒシと感じてしまうのです。


聞こえてくるのは、雨の音。

暖炉の火の音。

チュルチュルミチル・・・。

うどんをすする音。


うがーーーーー。静かなんですよ。

人の話し声。テレビ、音楽、車の音、町の喧騒。日々、私は色々な音に囲まれ過ごしてきたことを実感しました。

やはり私は、一人に耐えられそうもありません。


メリンダさん。

あなたも同じでしたね。

一人の寂しさを感じていらっしゃいましたね。あなたにも愛する家族、友人がいましたね。私と同じで、会いたくてしかたなかったですよね。もう、私にはメリンダさんしか頼れる人間がいないのですよ。


よぉし今日は、メリンダデイにしましょう!

メリンダさんの日記を手に持ち、火がついている暖炉で読み始めました。





森、近く、白い木、外。


やっぱりメリンダさんは、この森と湖から外に出ています!

確かに、この森には変わった木が一本あります。周りは緑と茶色の2色で形作られている雑木林に、一本だけ異彩を放っています。白い幹にうすい紫色の葉を茂らせています。その幹の中央は大きな空洞があります。まるで妖が住処にしているかのようです。


私は、肌が弱くてかぶれやすいので、その木に近づいていません。見た目怪しいのには、近づかない主義なんでして。


メリンダさんは、勇気があったんですね。

うん。これから、メリンダさんのことを心のお師匠様とお呼びしましょう! で、再会?の時に熱い抱擁をするわけですよ。


「お師匠様!」


「白亜!」


ああ、感動的ですね。

涙、涙の物語ですよ。ハンカチ必需品ですよ。だってそうしないと鼻水もたれて乙女台無しじゃないですか。あっ、そういえば、メリンダさん、私のこと知らないんだった。


・・・・・・・だめですね。



えっと、日記の続きはっと・・・。外の世界は、砂漠、オアシス、エンリトリオ。


さ、さばくーーーー。


待ってください。なぜそうなるのですか?

なに、あそこは、某ドアですか?

メリンダさん。砂漠に旅行行きたかったのですか?


いや、違います。メリンダさんは、故郷であるイギリスに帰りたかったはず。では、あの木から行けれる外の世界は、又こことは違う場所なんですね。


エンリトリオとは、村の名前なのでしょうか?

そうか、あの本棚の文字。あれは、エンリトリオで使用される文字なんだ。


って、ちょっと待ってください。


英語のほかに第三外国語の出現ですか? 私には無理ですよ。英語だって四苦八苦しているのに。 

ああ、そこに驚くのじゃなくて、人が存在するんですよ! あの白い木の向こうに、人がいるんですよ!


やっとこの隠居老女のような生活から抜け出ることができるんですね。ここでの生活は、軌道に乗っていました。

私が病気、怪我をして身動きが取れなくなったり、突発的なことが起きない限り、ここでの生活は安定しています。

食べ物がありますし、家がありますし、ブランコだってありますしね。


だから、何十年と経とうが一人で生きて行けれます。そのことを心のどこかで恐怖していました。


一人、ずっと一人。

頭の中をグルグル巡るのですよ。でも、


メリンダさん。

あなたは、そちらの世界で過ごされているのですか?

故郷であるイギリスに帰られたのですか?



心の師匠!

私は、貴方に会います。いえ、会いに行きます。


待っていてくださいね!



いいなー心のお師匠様。


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