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裏の《百物語会》 ― 隠し井戸のはなし ―  作者: ぽすしち


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14/18

鬼じゃアなさそうだ


 七、






 ダイキチは、『先生』のひらたくしろい額に、くっきりとシワが刻まれるのをめにした。


 カラスとされこうべが黒い影としてうつるふすまには、下の方からじわじわと、おおきな影がのびあがり、カラスと骨とをのみこんだ。



「 あ、あんた、あの、あの石は、」

 その大きく広がる影にむかい、すがるようにおとこがといかける。




   『 申し上げましたでしょうなア。水神スイジンだとねエ 』


 こたえた影が、こんどはきゅうに細くなって、ひとのかたちのようになる。

 だがその頭には、三本角ツノの影がある。



「 そんな、そんな、」

 おとこは力がぬけたようにまた伏せると、畳をかきむしるように泣き始めた。




「 こりゃ、鬼、 ―― じゃあ、なさそうだね」

 『先生』と目をあわせたダイキチが、懐から水晶でできた数珠をとりだしてうなずく。




 ふすまにうつる影がゆらゆらとゆれるようにして上へいったが、欄間らんまにあたってそこでとまった。



   『 ―― ・・・はて、ここからでられぬな、

           ここはなんじゃ、そこにおるはどこのなにものじゃ 』




「 なのるのはそちらがお先。ここへ連れてこられたのもわからぬようでは、ただただ、としをたタヌキかムジナでありましょうかねエ 」

 部屋のすみに座ったままの先生が、嘲るようにふすまにうつる影にこたえる。



『 わしがタヌキかムジナであるわけなかろうがよオ。 連れてこられた?いいや、この男がわしを水神のところへと連れて行ったのじゃ。きいたじゃろオよ。この男はな、村の者が守っていた水神をぬすみだし、それを見世物にして儲けたのよオ 』



「 それを苦にして村にもどっておりましょうが 」


『 二年も三年もすぎた後よなア。このおとこに水神をぬすまれた村はそこから水にめぐまれずに、田畑は荒れてひとも病にたおれ、村にはなにもなくなった。すべてこの男のしわざによって起きたことよオ 』



「 さて、それはどうでございましょう。どうにもそのお方はたぶらかされ、片棒をかつがされたようにお見受けいたします。ああ、たぶらかすといえばやはり、オオダヌキでございましょうねエ 」

 おかしそうに片手をふった『先生』が、すっと立ち上がり、畳にふして肩をふるわせる男の横に座りなおす。




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