いつも通りの朝、だけど違う
朝の森は、いつもと変わらず静かだった。
そんな中ユリアは鍋をかき混ぜながら首を傾げる。
スープの中では、刻んだ野菜がゆっくりと踊っていた。
「……うーん」
火加減はいつも通り。
入れた具材も、塩の量も、いつもと変わらないはず。
それなのに、
スープから立ちのぼる匂いが、少しだけ違った気がした。
「……薄い?」
もう一度味見をする。
やっぱり、どこか落ち着かない味がする。
「エハルオーさん、今日のスープ……」
「気のせいじゃろ」
背後から、即答が返ってきた。
振り向くと、エハルオーは焚き火に薪をくべていた。
「最近風の流れが少しだけ変わっとる。森も、落ち着かん」
「森が?」
ユリアは思わず窓の外を見た。
木々は静かに立っている。
葉も、枝も、何も変わらないように見える。
けれど——
その時、足元の草が、ふわりと揺れた。
風は吹いていない。
「……今、草が揺れたような」
ユリアが言うと、
エハルオーは一瞬だけ口を閉ざした。
「……お前は、もう何もしなくていい」
「え?」
「しばらくは魔法を使わんでいい。畑も、掃除も、料理もじゃ」
「なんで?」
問い返した声は、思ったより強くなってしまった。
「私、何かしました?」
エハルオーはしばらく黙っていたが、
やがて、短く息を吐いた。
「……お前のせいではない」
その言い方が、逆に胸をざわつかせる。
昼過ぎ。
ユリアは一人で森の小道を歩いていた。
「何もするなって言われても……」
足元の土は柔らかく、
踏みしめるたびに、微かに温かい。
(……気のせい、だよね)
そう思った瞬間、
ユリアの足元で、小さな芽がひとつ顔を出した。
「……え?」
魔法は使っていない。
意識もしていない。
それなのに、
芽はまるで「当然」のように、そこにあった。
ユリアは、ゆっくりと後ずさる。
(これ、前にも……)
胸の奥が、じんわりと熱を帯びる。
「……やっぱり、何か変だ」
その夜。
焚き火の前で、ユリアは膝を抱えて座っていた。
炎の揺れが、いつもより不安定に見える。
「エハルオーさん」
「なんじゃ」
「私がこの森に来てから……
“普通”じゃなくなってきてますか?」
エハルオーは答えなかった。
ただ、火を見つめたまま、
低く呟いた。
「……それでも、お前の日常はまだ、ここにある」
「...?」
その言葉が、
なぜか「約束」ではなく
「祈り」に聞こえた。
森は、今夜も静かだった。
けれどユリアは、
その静けさが
ずっと続くものではないと、
初めてはっきりと感じていた。
投稿遅くなってすいません!!
多分色々とおかしいですがぜひ呼んでください!




