初めての魔法修行
「さーて、今日から魔法修行始めるか」
朝の森はまだ冷たい霧に包まれていた。
焚き火の煙がゆるやかに立ちのぼる中、エハルオーの低い声が響く。
その一言に、ユリアはぱちりと目を開けた。
昨夜は興奮してなかなか眠れず、朝ごはんのあとも半分まどろんでいたが――
その言葉だけで、眠気が一瞬で吹き飛んだ。
「やっときた!ついに魔法修行!炎とか雷とか、飛んだりするやつですか!?」
「なにを言うか、昨日の魔法を覚えておるだろう」
「え? あの芽が出たやつ?」
「うむ。あれを“意識して”再現してみろ」
「…………え、地味じゃない?」
エハルオーは肩をすくめて笑った。
「地味を極められぬ者に、派手な魔法は扱えんのだ」
「出たー、またそれ系の理屈……!」
しぶしぶ畑に出たユリアは、昨日と同じように土を見つめた。
両手をかざして、胸の奥にあの時の感覚を思い出そうとする。
(うーん、たしか……温かくて、胸のあたりがポカポカして……)
じっと集中する。
……しかし、何も起きない。
「うん、まったくダメ!」
「ほう、原因は何だと思う?」
「……魔力が足りない?」
「違う。お前は心がせっかちすぎる」
「へ?」
エハルオーはユリアを拳で小突いた。
「昨日の芽吹きは、お前が“待つ心”を持ったから起きたのだ。焦れば焦るほど、魔法は逃げていく。森の風みたいにな」
「風みたいにって言われても……!」
ユリアはむくれながらも、もう一度深呼吸をした。
目を閉じ、土の中の種の気配を想像する。
暗く、静かで、それでも生きている小さな命。
――ほんの一瞬、また胸の中が柔らかく光った。
「……!」
ユリアが目を開けると、土の表面がわずかに揺れ、
その中心から、小さな緑の芽がまた顔を出していた。
「で、できた!今度はちゃんと自分で!」
エハルオーは目を細めて頷いた。
「ふむ、上出来だ。今日はここまでにしておこう」
「え、もう!? せっかくコツつかんだと思ったのに!」
「魔力も心も、鍛えすぎると枯れるのだ。お前はまだ使い始めたばかりなんだ。焦るな」
ユリアはがっくり肩を落としたが、芽を見て少し笑った。
昨日よりも、ほんの少しだけ自信が芽吹いた気がした。
第5話は少し悩み中です
番外編とかで何故森に呼ばれたのか等書こうかなって思ってます(早いかなぁ)




