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魔法よりも、斧の扱い方?

「はぁ……斧って、こんなに重いんだ……」


ユリアはエハルオーに手渡された斧を握りしめ、目の前の薪に向かって深呼吸した。


カツン!


「う、うわっ!? 手が滑った!」


斧は薪を外れ、地面に突き刺さった。ユリアはうなだれ、肩を落とす。


「お前なあ…。魔法使いの弟子が斧も扱えんとは情けないなぁ」


「いやいや、私魔法使いなんですよね!? なんで体力勝負からなんですか!? 魔法で薪、簡単に切れるんじゃないですか!?」


「魔法は便利だが、体を鍛えずして大魔法は使いこなせん。基礎体力じゃ!」


「魔法習いたいよ……」


森の奥にぽつんとあるログハウス。まるで自給自足の山暮らしだ。都会育ちのユリアにとって、初めての経験ばかりだった。


それでも、斧を持ち直して何度目かの挑戦。


カンッ!


「……割れた?」


ぱっかりと割れた薪を見て、ユリアは思わずガッツポーズをとった。


「おお、ようやくか! よし、次は五十本だな!」


「ご、ごじゅ……!?」



薪割りで一日が終わった夜、ユリアはくたくたになりながらも、食卓に出された温かいスープをすすった。エハルオーの作る料理は素朴だがどこか懐かしい味がした。


「明日は畑仕事やるぞ。ジャガイモの植え方を教えてやる」


「……あの、エハルオーさん。私、魔法使いとして何を学ぶんですか?」


「あー…。お前は魔法使いだったな、魔法の基本は“生活に活かすこと”じゃ」


「……冒険とか、ドラゴン退治とか、そういうのは……?」


「そんなもん、やりたきゃ村にでも行け。俺の森だ、ここにいる限りは魔法は『料理を焦がさないため』に使ってもらう!」


「そっち!?」


エハルオーはゲラゲラと笑いながら椅子を揺らす。


「焦らず行け、ユリア。魔法は日々の暮らしとともにあるんだ。魔法は戦いのためだけに存在しているわけじゃない。」


(魔法は戦いのためだけに存在しているわけじゃない)


ユリアは、少しだけその言葉を考えながら、スプーンを口に運んだ。


(ドラゴンとは戦わないし、魔法使いなのに薪割りしてるなんて)


(最初に思っていた異世界生活とは全く違うけれど...)


「こんな生活も、悪くないかもね」

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