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純白の女王 アウリサ

決着の後

あの戦いの後、セリカはいつの間にか姿を消していた。


彼女がどうなったのかを、正確に知る者は誰もいなかった。

ナズナたちもまた、戦いの終わりに多くを語ることはなく、

まるで一つの役目を静かに終えた者たちのように、

それぞれの道へと、淡々と歩み去っていった。


英雄たちの名は、誰の口にも上らなかった。

ただ、世界に訪れた平穏だけが、確かに彼らの“証”となった。


けれど、仲間たちは知っていた。


あの瞬間こそが、奇跡だったということを。

誰かの犠牲ではなく、祈りと想いのすべてが結びついて、

真に“未来”と呼べる世界を切り拓いたことを――。


   

全てを見ていた純白の王女

違う世界のどこか、“純白の宮廷”に一人の少女がいた。

名をアウリサ。純白に包まれし王女は、その一切の穢れを持たぬ真っ白な世界、すべてを統治している


彼女は笑う。「ぜーんぶ、見ていたわよ。ナズナちゃーん。」

今日も生意気にふるまう。可愛く、わがままに、ツンとした瞳で世界を睨む。

……自分の何かが変わるその瞬間を、ひそかに夢見ながら。


純白の王女・アウリサ 自己紹介

ねぇ、ちゃんと聞いてよ。私はアウリサ。あの“純白の宮廷”を統べる、世界でいちばん白くて、可愛くて、生意気な王女。

気に入らないヤツは、まとめてお仕置き。退屈なんか大っキライ。


みんなはね、私が人間界に“石柱”を立てたって話、もう知ってる?


今回はあれのせいで大変な騒動になっちゃったけど.....


あれ、別に遊びでやったんじゃないからね。太古の昔、魔も技も持たない、あの世界の者たちが、あまりに無力で不憫だったの。

だからせめて、物資や技術を届けてあげたくて、異界と繋がる柱を作らせたの。ま、当時はあの世界の子達も素直で可愛らしかったから気まぐれで手伝っただけなんだけど。

でもさ、時代が経って、人間ってやっぱり……勝手でしょ?

柱に呪術を混ぜたり、欲まみれの願いを込めたりして、わけわかんない召喚術をやり始めたの。

それで、変なヤツらが出てくるようになった。暴れて、壊して、誰も止められなくて……それを見て、ちょっとだけ……悲しかったわ。


そんな中でセリカちゃんだっけ?あの性悪女が召喚した“魔王のなれの果て”と“クルサル”ってやつ。

あれ、異世界でもヤバいやつよ? クルサルは闇の種族でもかなりの戦闘特化型ね。色んな種族が恐れていた厄介者。第二形態まで追い詰めるとか、なかなかやるじゃん、ナズナちゃん。あの世界の存在があそこまで追い詰めるの初めて見たわ


もし、あの性悪女がクルサルを取り込まずに、第四形態まで進化してたら……あの世界、終わってたかもね。不幸中の幸いだったのよ。

クルサルの一族が報復に来ないことを、祈ったほうがいいわね。あの種族、怒らせるとマジでやばいから。わたしも怒らせたことがあるからわかるわ

でも、そうなった場合、介入もあるわね、世界にもルールがあるのよ。一方的な悪がまかり通るなんてことを許さない存在はいるし、私だって許さない。そのおかげで人間は平和が続いてる事を忘れちゃってるんだけど.....


それと、あんたたち人間界もね、自分たちが生み出した技術に滅ぼされないように、気をつけなよ?

人工知能って言うんだっけ?人間学の本、最近読んでないから、わかんない。でも、もう少しで登場するやつ、あれホントやばいよ。爺やとか宮廷の学者たちも言ってるし


で、ナズナちゃんてちょっと面白いよね?可愛いし.......


違う!!私よりかは全然可愛くないっ!!


クルサルを追い詰めて、魔王の成れの果ても倒すなんて、なかなかのもんねって思っただけよっ!


私の方が可愛いし強いんだからねっ!


ちょっと私に見合う王子様っぽかっただけ!!!勘違いしないで!!!



でも......ほんのちょっとだけ、会ってみたいな......だって……ほらっ!!そういうの、ズルいじゃん!!私が退屈してる間に、世界、動いてるんだもん。


あーあ、助けに行っちゃおっかなー……べ、別に興味あるとかじゃなくて!

ほら、責任ってやつ? もともと石柱、私が作ったわけだし……ほんのちょっとだけ、様子を見に行くだけ!


……なによ?まさか、私がナズナちゃん大好きだからと思ってる? 馬鹿にしないで!!私はこの気高き白の世界と統べる王女よ?せ・き・に・んがあるの!


アウリサの暮らし

宮廷ではね、私が一番えらい。だから、なんでも揃ってるよ。


ふっかふかのベッド?それだけじゃない。羽根じゃなくて、星の光を織り込んだ雲綿うんめんで作られてるの。

天井はただの天井じゃなくて、四次元星図を投影する魔術で、夜になると、本物の銀河が回るの。


紅茶は百種類なんて可愛いものじゃない。

時間を巻き戻して最高の瞬間の香りを封じ込めた「時のティー」もあるし、夢の中でしか採れない幻草のブレンドもある。

しかも、その日の気分に合わせて、カップの色も味も勝手に変わるの。


バスタイム? 専用の幻の花のオイルはもちろん、月光を溶かした湯で、重力を少しだけゼロにして入るの。

体がふわっと浮かんで、全細胞が喜んでるみたいになるわ。


執事達は未来予知ができるし敵なんていないぐらい、皆賢くて強くて優しい、侍女は気配だけで私の全てを読み取ってくれて無上の愛を注いでくれる。

着替えも、何千種類もある美しいドレス達が空中でくるくると浮かびながら回って、私に着て欲しいとせがんでくるの。

魔導楽団は音だけでドラゴンを倒せるような気迫のある演奏で鼓舞してくれたり、心が真っ白になるような透き通った演奏を、この世で最も洗練されたディナーで奏でてくれたりするわ


でも……全部あってもね、なんでかすごくつまらなくなる時があるの......



なんでかな.......?



白の選択、そして出発

ある日、アウリサは宮廷の奥深く、石柱の間に立っていた。封印の魔符を指先でなぞりながら、ふとつぶやく。


「私が作ったんだから、自由に使ってもいいよね?」


ナズナという存在は、彼女の白い世界に一滴の色を落とした。

全てが統治され尽くして、退屈、優雅なだけの日々。迫りくる世界の崩壊への徐々な不安。そのすべてが絡み合った彼女の複雑な心境を一気に解決する鍵の様に


「……確かめに行くしかないよね?」


彼女はゆっくりと、白のドレスを翻して石柱に手を伸ばす。

封印の紋が淡く光を帯び、空間が揺れる。


「さあ、石柱よ。私を、あの世界へと導きなさい。古の呼び声の巫女の元へ........べ、別に……会いたいわけじゃないからっ!!」


その姿は、白き王女ではなく、一人の少女だった。生意気で、甘えん坊で、でも誰よりも優しくて。


──そして今、アウリサは歩き出す。初めて、本当に心から会いたいと思った誰かに、会うために。

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