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異世界人2世×英雄の娘(妹)の食材探しの冒険譚  作者: みかんぼ〜@みかんが丘通信局
33/37

28頁:従者

※今回は主要キャラの1人が新たに加わるお話なのでかなり長めです。


 冒険者ギルドで話を聞いてからというものの、クロの顔色が白から一気に真っ青になってた。

 そしてずっと呟いていて、明らかに体調が悪そうだった。


「なぁ……クロ。大丈夫なのか?体調悪いなら、休んでて良いんだぞ?」

「いや、問題ない。ただ……嫌な予感がするだけだ」

「そうか、でも無理は禁物だからな?」

「分かっている。」


 そう言って彼は、俺の後をついてきた。


「しかし、彼女が……いや、あり得る。それほど気にしていなかったが、人との関わりで得た知識……いや、我が人間の世界に侵食されたと知ったら……」

 すげぇブツブツ言ってる。そして、どんどん顔が青ざめてらっしゃる。

 最後には沈黙してしまった。

 そして、俺にただひたすら「すまない……迷惑をかけて」と謝罪の言葉を繰り返した。


「お……おう?と言うかお前、こっち来い。」

 俺は、なにかヒントが欲しくて……クロの「ステータス」を開いた。

 するとそこにはこう書いてあった。


【状態異常:魔力障害、精神汚染】


「おい、クロ!大丈夫か?」

「あ……あぁ。」


 俺は、彼の肩を持ち揺らしながらそう聞くので、彼は力のない声で返事をしていたが、遂には意識を失ってしまったのだ。


「クロ!?おい、しっかりしろ!!!」

 急いで俺はクロをギルドの救護室に連れて行った。

 


「う………」

「クロ、大丈夫か!?」

「あ……あぁ。」


 俺は、意識の戻ったクロに水を渡すと、彼はそれを一気に飲み干した。

 そしてこう続けたのだ。


「……すまないな、迷惑をかけて……」

「気にするなよ。」


 そう言っても、彼はずっと暗い表情をしていたのだった。



********************


 クロには申し訳ないけど、彼は一旦ギルドで預かってもらうことにした。

 念の為、ギルド全体に魔族を寄せ付けないような結界と攻撃されないようにいろんな結界を張り巡らせておいた。

 そして、発見事例が多くあるという、カギア山脈の麓にある「カギア川」へと俺は向かった。

 冒険者ギルドの情報によると、そこにはアンデット系の魔物や幻獣系魔物がいたと言う情報が入っていたからだった。


 それに「魔力障害」と精神汚染って言ってたからな……きっとその魔族は水属性の悪魔か何かの類だろうな……と、俺は密かに考えていた。

 その魔族がいるとされる川を目指しながら、偵察を続けていると……


「ねぇねぇ、そこのお姉さん!」と、俺は呼び止められたのだ。


「……ん?何だ?」と振り返るとそこには、背の小さい女の子が立っていた。


 夜の静けさを破るかのように、俺は、その少女と向かい合っていた。緊張感が張り詰める中、少女の目が鋭く主人公を捉えた。


「ねえ、お姉さんに聞きたいことがあるの。」


 少女は一歩踏み出し、俺に迫った。


「私が探している人、もしかしてあなたも知っているんじゃない?」


 俺は驚きと戸惑いの表情を浮かべた。


「探している人……?誰のことを言ってるんだ?」


 少女は熱っぽい目で熱く語り始めた。


「クロノス様よ。彼は、私にとって全てなの。彼がいなければ、私は今頃どうなっていたか!深紅の髪色に魔族の頂点を表すその立ち振舞……etc.」


 その名前に、俺の心は大きく揺れた。クロノス……それは、今は猫の姿をした従魔、クロの本名だ。


「クロノス様は、強くて、優しくて、何よりも私を守ってくれる存在だった。彼がいない今、私は毎日が空虚で……」


 少女の声は次第に涙ぐんでいった。主人公は言葉に詰まった。クロのことを知っているのかどうか、ここで明かすべきか迷いが生じた。


「でも、この近くにクロノス様がいるって私は感じたの!あなたがそのクロノス様を知っているなら、お願い、教えて。彼は今どこにいるの?」


 少女の目は真剣で、彼女の愛情の深さがひしひしと伝わってきた。心当たりが多すぎて、俺はどう言葉を選べば良いのか分からなかった。

 しかし、彼女の熱意と切実さが伝わってくる。


「その……クロノスという方は、本当にあなたにとって大切な人なんだな。」


 俺は慎重に言葉を選びながら答えた。


「そうよ。彼は私の全てなの。どうしても、彼に会いたいの。」


 少女の声は悲痛な叫びのようだった。

 魔族の少女とは言え、彼女の真剣さ、切実さが伝わってきた。


「そうか……でも、俺は……」

「お願い、教えて!彼はどこにいるの?私はどうしても会いたいの!」


 少女は俺の胸ぐらを摑んだ。

 その目には涙を浮かべている。しかし、それは悲しみではなく、怒りと決意に溢れていた。

 その前に、一応彼女のステータスを確認してみよう……。


「なっ……!?」


【名前:ムーンオルカ】

【種族名:魔族】

【職業:元魔王軍四天王・魔王補佐】


「え!?」


 俺の目に飛び込んできたのは、高すぎるステータス。しかも、称号にはこんなことが書かれていた。


『元魔王軍四天王・魔王補佐』!?


 そんな馬鹿な……。でもこんな子が何でココに!?というかココで暴れられたらガチで大変なことになる!!!

 それにこの感じだと……親父が言っていた「ヤンデレ」……特定の人物に対して愛が深く、他者がその人物との間に割り込んでほしくない人のタイプだ。


「えっと、勝手に覗き込んでごめんね?あの、質問したいことが……」


 女の子、めっちゃ俺をガン見するやん。何なら、俺がクロのことを知ってることがバレそうなくらい。


「あの、本当に申し訳ないんだけど……ムーンオルカさん?が探している方についてちょっと質問していい?」


 彼女は俺が話すうちに態度を変えていった。まるで餌を取り上げられた子猫のようにシュンとした顔に変わる。


「え!クロノス様を知っているの!?どこにいるか分かる!?」と、俺に詰め寄ってきた。

「いや……その……」俺は迷った。ここで正直に言うべきか、それとも誤魔化すべきなのか……でも、この感じだと誤魔化せるような相手ではないな。

「あ……ごめんなさい。」と女の子は我に帰ったように謝罪するのだった。そしてこう続けたのだ。


「事情があって、今従魔になってる猫の獣魔がいたんだけど、最近人間になれるようになっていて……今その話した内容がその……彼にそっくりだから……一回会ってくれない?あ、でも今体調不良でギルドに預けてるんだけど……」とクロが元魔王であることを存じていない風に装った。

 俺は言葉を詰まらせた。この度し難い女性の刺激を与えたらどうなるのか?俺は頭をフル回転させながらこう言ったのだ。

 しかし、その女の子の様子が変だ。……と言うよりかなり情緒不安定だ。やばい。地雷踏んだみたい。

「えっ……あ、あの……」と彼女は驚きを隠せない表情で固まった。


「クロノス様じゃない……?でも、人間になれるとかありえない!?」


 やばい、何か地雷踏んだっぽい!と俺は悟ったがもう遅かった。


「え?え!?どういうこと?」と女の子は俺に詰め寄るように近づいてきたのだ。


 そして俺は咄嵯にこう思ったのだった。



『やばすぎる!!この展開はまずい!』と。


 すると、少女はの目つきが変わり、この場所はあっという間に静寂に包まれていた。陽の光が木々の間から差し込み、影が揺らめく中、俺と魔族の女の子……ムーンオルカが向かい合っていた。ムーンオルカの目には怒りと嫉妬が燃えていた。


「クロノス様が、あなたの従魔だと?何故、そんなことが許されるの!?」


 ムーンオルカは鋭い声で俺を問い詰めた。その声には深い愛情と狂おしい執着が混じり合っていた。

 どうやら、クロのことを完全に元魔王だと察しているようだ。


「彼は…!私のものだったはず!彼は私や魔族を守り、私だけを見ていてくれた。なのに、あなたなんかに奪われるなんて、絶対に許せない!!」


 ムーンオルカの語気はますます激しくなり、その目はまるで炎を宿しているかのようだった。

 俺は一歩後退りしながら、ムーンオルカの狂気を受け止めようとしていた。


「クロは、俺の家の前に倒れていて、介抱している時に従魔になったんだってば!アンタには関係ないだ……あ。」

「関係ない?あなたに私の何がわかるの!彼がどれほど私にとって重要な存在だったか、あなたには理解できないわ!」


 ムーンオルカは歯を食いしばり、拳を握りしめた。攻撃の構えを取ろうとするが、突然、彼女の身体が力を失い、よろけた。


ぐぅ〜〜……


「くそ……お腹が……」


 ムーンオルカは自分の腹部を押さえ、痛みを堪えるように顔を歪めた。


「こんなときに……お腹が空いて……何もできないなんて……」


 涙が彼女の目に溢れ、頬を伝った。


「クロノス様……どうして、私を置いていったの……どうして…?どうして!?うわぁ〜〜〜ん!」


 女の子はその場に崩れ落ち、叫びながら泣き続けた。

 俺はその光景を見つめ、言葉を失った。ムーンオルカの心の中で燃え盛る愛情と嫉妬、そして今の無力さが入り混じる姿に、俺は情けないことに同情してしまった……。


「俺の……親父たちがごめん……」

 俺は、その魔族の女の子にご飯を与えた。

 簡単なものでいいかと思い、俺はあるものを彼女に差し出した。


「ほら、これ食べて」


 俺はそう言って取り出したものは、おにぎりだった。


「何?これは……」と彼女は不思議そうにそれを見つめた。


「食べ物だよ。中に具が入ってるんだ。食べれるか?」と聞くと、彼女は少し戸惑いながらも恐る恐る手に取り口に運んだ。

 そして一口食べるなり目を大きく見開いた。


「……美味しい!この味……まさか……!?」

「お口に合ったならよかったよ」

「これは一体どうやって作ったの?」と彼女は俺に聞いたのだ。


「米を炊いて、具材を混ぜ込んで形を整えて焼くだけさ」と言うと「懐かしい……」と彼女は呟いた。


「この味、昔食べたことがある気がするの」

「それは良かったな。」と言うと「ありがとう……美味しかったわ!」と笑顔で答えてくれた。


 そして俺は、彼女にこう言ったのだ。


「もしよかったら、うちに来るか?」

「え!?いいの?」と彼女は驚いた顔で俺を見ていた。

 そうしないと他の方に迷惑をかける気がした……。



********************


 俺は、彼女に認識阻害魔法を掛け、服を手渡した。

 この服で街を歩くのは多分あんまり良くない気がする。

 でも、俺の家に来るならこの格好は流石に目立つからなぁ……。と俺は考えた。


 そして彼女は俺にこう言った。


「ねぇ……あとでその『オニギリ』って言うの、また作ってくれない?」

 こうしてみると可愛い普通の女の子だ。クロはこんな女の子を従者にしていたんだなぁ……って考えると、何だか変な気分になった。

 そして、俺は彼女に「いいよ」と返事をしたのだった。


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