27頁:家に帰れない!?
「え!?馬車が動かない!?」
ルーゼンブルク家に戻ると領主様から聞かされたのは、馬車が使えなくなったという事態だった。
「そうだ、私たちが調査に向かったときはまだ通れたんだがな……昨日の大雨で地盤が緩んで道を塞いでしまったみたいなんだ」
「なるほど……」
俺は、昨日の雨を思い出した。でも、それ以外は特に自然災害とか起こった感じはなかったから違和感はあった。
「てっきりキングシャーモンたちが起こしたものだから大滝付近だと思ってたけど、違ったのね。」
「しかも、その大雨魔力を纏っていました。」
「本当!?お姉様!」
スイさんは水魔法に適正があるからか、水の性質を魔力で認識することもできるようになったみたいだ。しかし、水に魔力をもたせることって……。
「あぁ、スイの言う通り、その大雨には魔力が宿っていた」とクロは言った。
「この雨は、おそらく魔族が作り出したものだろう。」
「……!?」
「なっ、何でミライの従魔がそんなことを言うのよ!?」
スイさんは驚いたが、事実だ。
クロは魔物を統べる元魔王。そして今は俺の従魔だ。しかしその事実を伝えるのは難しい……
「実は、クロは昔魔族側の従魔だったんだ。でも、魔王討伐されてから、魔族も弱体化してクロもその影響を食らったんだ。その時に満腹屋の目の前に倒れているのをみて、俺が助けたんだ。」と俺は言ったが、クロは「嘘つけ!お前……勝手に!」と反論した。
「うるさい!お前が元魔王だってこと知られたら俺の立場も危ういんだぞ!?帰って姉貴のねこまんま(大好物)を食いたくないのか!?(小声)」
「うっ……それは嫌だ……」
「だろ?」
「で?その元魔族側の従魔のクロが、何でこんな所にいるのよ?」とスイさんは言うので、俺は答えたのだ。
「そん時食い与えたご飯が美味しくてこっち側に来たとしか……説明がつかない……」
「おい、それだと我が食いしん坊みたいではないか?」とクロは反論するが、事実だろ?
「んで魔族はそういった事も出来るのか?」
「水を必要とする魔族なら、出来て当然だ。」
「おい、まさか……魔物の操作とか出来たり……」
「幹部クラスなら出来るだろうな」
俺はクロのその言葉で何となく察しがついた。おそらく、クロが女神様の加護で元に戻った今……そのことを感知した誰かが俺たちの直ぐ側に居るということ……
「で、話戻すけど、今探知魔法使える人は?」と俺は質問すると、スイさんとクロしか手を挙げた人はいなかった。
「なら……基本は俺がどうにかするから」と俺は言うが、「でも、その水属性の魔物を操っている魔族って誰よ?」と彼女は聞くので、俺はこう答えることにした。
「わかんないけど……でも今回はスイさんは同行しないほうが良いと思う。取り敢えず、冒険者ギルドに急ごう。クロ」
「分かった。」
「また後で!」
そう言って、俺とクロは冒険者ギルドに急いだ。
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緊急クエスト:魔族討伐依頼
内容:
最近、ルーゼンブルクに出没する魔族の出現が確認されました。この魔族は強力で、付近の住民や商人に甚大な被害をもたらしています。
パーリ市との交易路も封鎖され、ルーゼンブルクへの物資供給が滞っています。
依頼詳細:
依頼主:ルーゼンブルク市防衛協会
討伐対象:魔族(対象は女性とのこと)
報酬:金貨5000、ルーゼンブルク名誉勲章
期限:緊急を要するため、即時対応追加情報:この魔族は強力な魔法を使い、物理攻撃に対しても高い耐性を持っています。討伐に必要な情報や装備は、ギルド内で提供されます。
現在、パーリ市防衛協会が特別な討伐隊を編成中ですが、勇敢な冒険者の参加が求められています。
特記事項:
対象となる魔族は、自然災害を呼び起こす可能性があり、その力は計り知れません。討伐が困難である場合、魔族との交渉・説得も検討されております。その際にはギルドマスターにご一報ください。
注意事項:
討伐に参加する冒険者は、自己責任で行動すること。負傷者が出た場合、ギルドは応急処置の支援を行いますが、個別の治療は自己負担となります。
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ギルドでは直ぐに魔族の発見情報があり、交易路が断たれたのもその魔族がスコールを呼び寄せたという情報が得られた。
「どうやら、この依頼は俺たちに打ってつけの案件だな。」と俺が言うと、クロがこう答えたのだ。
「そうだな……だが、その魔族を討伐しに行くには少し準備が必要だな」
「と言うと?」と俺は言うので彼はこう言ったのだ。
「その魔物に覚えがある……嫌な予感がするんだ。」
その嫌な予感……それは、俺達の直ぐ身近に潜んでいた。
魔王様が討伐されてから早十数年。
魔王様の側近で従魔として仕えていた私は、海の底で自由気ままに過ごしてきた。
でも、ある日のこと。
目が覚めると魔王様の魔力が大陸の中……つまり私が居る場所に流れてきた。
魔力は次第に海の底へと届き、私はその流れている場所を探すため、久しぶりに海から顔を覗かせた……
「魔王様……私の魔王様が目覚めたのね!」
私の魔王様。
優しくて強くてカッコいい魔王様。
あの笑顔が、もう見れないのは悲しいけど……
あぁ!久しぶりにお姿が見れるなら……嬉しいわ! この事態に私は焦りを隠せなかった。
「待っててね。私の魔王様♡今迎えに行くから!」




