25頁:キングシャーモン②
※今回は後書き用のスペースに飯テロ部分を掲載しています。ご了承ください。
それから、そのキングシャーモンの魔石を持って、ギルドに届け出を行ったあと、俺とスイさんはルーゼンブルク家の調理場を借りて、解体することにした。
2匹目が……かなりでかいのだ。
「これは……キングシャーモン!」
「大きい個体だな。」
俺はマイエプロンを身に着け、クロにもエプロンを着用して貰う。
騒ぎを聞きつけたセレさんと領主様も見に来たのだ。
「これは……」
「まだ特別格のキングシャーモンが見つからなくて……取り敢えず、2体討伐して、持って帰ってきたの。そのうちの1体はその場で食べちゃったんだけどね。こいつが大きいから、厨房借りて解体しようって話になったの。」
「凄い大きいですわね……」
「そうですね。これは相当な大仕事ですよ」とセレさんと領主様が言ったが、俺は言った。
「トラウト系は結構解体慣れてるんです。このサイズなら、2時間もあれば終わります」
「それは頼もしいですね!」とスイさんが言うので俺は言った。
「では、早速取り掛かりましょう」
先ほどと同じ要領(24頁参照)で神経締めを行い、内臓を取り出して三枚おろしにする。
食べれない内臓と血合いは四つ切スライムちゃんに食べてもらおう。
個体が大きいため、まずは手前側を切ったら、回転して逆側も行う。
そして、真ん中を切るとき、料理長とクロに身を持ってもらいながら、身から骨を完全に切断するのだ。
「骨は……こんな感じでぇ……!」
「すごい……綺麗に……」
そして、半身は切ることができた。しかし……2メートルくらいあるため、骨がいっぱいだ。
「さすがに、このサイズは2人で解体するのは無理があるな……」
「そうだな……。でも、後半分あるし」
「そうだな」と俺が言う。そして、クロも言ったのだ。
「我に良い考えがある」と。そして、彼はその案を出したのだ。
中骨を取り除くとき、クロが外した部分を浮遊魔法で支えるというものだ。それならどんどん骨を除去できる。
そして、浄化魔法の一種、骨だけを取り除く魔法で、どんどん骨抜きの作業をしていく。
そして、腹骨と中骨についている身は、スプーンで落としていく。
そして、1時間半後……キングシャーモンは無事に解体できたのだ。
鮮度を保つために、腐敗しないように結界を作って置いたのが良かったのか、身はオレンジ色が綺麗に輝いている。
「終わった……。取り敢えず休憩!」
「我もだ。久しぶりに魔法使って、疲れたな……」
俺は一旦、身を凍らせて、キングシャーモンの解体したやつをアイテムボックスに入れる。
「はぁ……はぁ……」
「なんか、一部のショーを見ている感じね……」
「そうですね。でも、これは現実だというのが……」
スイさんとセレさんはそう言ったが、俺は言った。
「あ〜!腕が疲れた〜〜!!!」
魚さばきもそうだが、単純に肉体労働が久しぶりで疲れたのだ。
「お疲れ様ですわ!」
「お疲れ様でした」とセレさんとスイさんが言う。
そして、俺は言った。
「ちょっと……休憩していいですか?」
「もちろんです!ゆっくり休んでくださいな」とスイさんが言ったので俺は言った。
「ありがとうございます……」と俺は言って、休憩を頂くことにした。
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「あ゙〜〜!疲れたァァ」
「お疲れ様です。」
「お疲れ様です。」
俺は再びお嬢様2人と一緒に休憩がてらのお茶会をすることになった。
スイさんは先程のキングシャーモンを使った料理を食べた感想をセレさんに話している。
「スイは食べたのですか!?お魚を生で!?」
「うん。でも、お腹痛くなかったし、ミライの言う通り、とても美味しかったよ。キングシャーモンを生で食べたのは初めてだから、少し緊張したけど……本当においしかったわ」
「あの様なお魚がこの世には存在するのですね……」とセレさんは言ったのだ。
「そうですね。それにしてもよく生食できましたね?危険視されてますよ?」とスイが言うと……
「パーリ市ではかなりポピュラーよ。ちゃんと鮮度と衛生的な厨房環境があれば生食でもいけるんだって。でも、青魚とか甲殻類は体質によるんだろうけど毒になりやすいって聞いたことはあるかも……」
「『アレルギー』っすね。タンパク質で構成されたある抗体があって、人系生物が食べたりすると、体に異常が出る病態のことですね。」
「なるほど!『アレルギー』って言うのね!」
「アレルギーは、人によっては、命に関わることもあるから気をつけないと行けなくて、その謎はまだ解明されていないのです。」と俺は言う。
そして、スイさんが言ったのだ。
「でも……生食で食べれるお魚って本当にあるの?」
「はい。キングシャーモン以外にも『アワビ』『サザエ』『ホヤ』などがありますね」
「あと、『クラーケン』とかもいけるらしいですよ。」と俺が言うとセレさんは言った。
「え?あの触手がいっぱい生えてるやつですか?」
「はい。あれは、軟体生物でも、生で食べれる貴重な魚だと親父が……」
「食って私たちが思ったよりも、奥が深いのですね……」
セレさんとスイさんは、そう言って感心していた。
「そういえば、ミライって何歳なの?」とスイさんが思い出したかのように言った。
「14です。」
「え!?私たちと同い年!?」
「本当!?」
「あれ?言わなかったっけ?」と俺は言う。すると、セレさんは言った。
「わたくし……お若いと思ってましたが、まさか同い年とは思いもしませんでしたわ」と驚きの表情を見せる彼女。
そして、スイさんもこう言ったのだ。
「すごいね!ミライ!」って言ってくれたんだ。
少し休憩したあとは、先程倒したキングシャーモンを調理することにしたのだ。解体した身から切り身にして、ホイルの葉にバターを薄く塗って、タマネーギとキノコ系魔物をちぎったやつを敷いて、その上にキングトラウト・ひとかけらのカウカウミルクのバターを乗っけて塩コショウで味を整えて包む。
それを作ったら、ピザ&パン窯に並べて入れてしばらく熱しておく。
そして、キングシャーモンのホワイトシチューも並行して作っていく。
鮭以外の材料を炒め、その中にコンソメ・薬草で香り出しをしながら煮込む。シャーモンは程よく一口大に切って焦げめがつくくらい焼いたら、一旦トレイに載せる。
野菜がいい感じに火が通ってきたら、ホワイトソースと先ほど焼いたシャーモンを入れてグツグツと煮るまで焦げないようにかき混ぜる。
そして、キングシャーモンのホワイトシチューの出来上がりだ。
ちょうど良いときにホイル焼きも出来上がった。
料理長がその工程を見て、「味見しても?」と聞いてきたので、俺は「どうぞ」と言った。
彼は、先にホイル焼きの方を一口食べた。
「あっ」と一言言った後、俺のほうを見てこう言った。
「これは……とても美味しいです!シャーモンの味そのものを活かした料理……使っている食材はタマネーギとダケだけなのに、シャーモンの脂とバターのコクが活きている!」
「ありがとうございます。」と俺が言ったのだが、料理長はこう言ったのだ。
「これに……ポッカ(レモンのこと)とかどうでしょうか!?」
「確かに!合いそう!」
俺は、ポッカの果実を取り出し、ホイル焼きのシャーモンにかけてみる。
「う……」
「んぅ!?」
「「美味ぁい!!!」」
予想を超える反応に、俺は驚いた。
「これ……シャーモンの甘い脂身と塩味がレモンによって引き締まる……」
「それに野菜もさっぱりとした味わいでしつこくない!」
「このホイル焼きは、塩コショウの味付けがとても良いですね。」
「ありがとうございます!」と俺は言った。
ホワイトシチューも味見すると料理長はめっちゃ感動してた。
「ホワイトシチュー、甘みを控えることで、シャーモンの味そのものをより引き立たせていますね。」
「そうですね。シャーモンは上品な香り……お魚特有の香りというよりも、コクがより強いので、その味を引き立たせるために、あえて味はしつこく無いようにしたんです。」
「なるほど。では何で、煮込まなかったんですか?」
「ブリーやクラーケンに比べてトラウト系は、脂が少なめだから、身が崩れやすくなっちゃうからです。」
「なるほど!勉強になります!」と料理長は言った。そして俺は言う。
「このホワイトソースは、塩コショウで味付けをしているので、味に深みを出すのにはもってこいですよ。それに……パーリではペンネ・フリッジ・マッケローニを茹でたものに、ミルクをもう少し入れた濃いめのシチューをかけて、チーズスライムを平たく伸ばしたものを焼く……グラタンというものがありまして、アレもとても美味しいんですよ。」
「これは良いことを聞きました。早速試してみます。」
料理長さんは研究熱心で、何かに打ち込むことが出来る人は素晴らしいと俺は思う。
「ええ、ぜひ試して見て下さい!」と言ってから、俺は別のことに思いを馳せる。
俺が料理を作ったとき、親父は……親父は俺の料理を食べながらいつも感想を言っていた。
『良いな、その感じ……』と毎回毎回褒めてくれてたけど……俺はいつしか忘れてしまっていたんだ。
「それにしても、キングシャーモン……ボス格の味ってどんな感じなんだろうな……えへへ」
俺は意外に食に貪欲なのかもしれない。




